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インナーマッスル信仰を捨てよ。日本人が身につけるべき筋トレ知識(前編)

8/3(木) 7:00配信

VICTORY

スポーツに興味を持たない人でも、「インナーマッスル」という言葉を知っている人は多いだろう。2008年まで明大サッカー部員だった長友佑都選手が、日本代表入りし、FCインテル入団まで駆け上ったサクセスストーリーを支えたのが「体幹トレーニング」であり、そのキモがインナーマッスルである、というのがおよその一般認識ではなかろうか。(文=FR[ブロガー])

流行語大賞にノミネートもされた「体幹」ブームに乗って、一部のスポーツトレーナーらは「筋肉隆々のアウターマッスル(表層筋)ではなく、しなやかなインナーマッスル(深層筋)を鍛えるべし」という“柔と剛の対立構造“を意気揚々と掲げながら、スポーツ選手のフィジカル強化だけでなく、一般人のダイエットにおいても体幹トレーニングを積極的に推奨するようになった。

エクササイズの手軽さと真新しさもあいまって、メディアは「体幹」というキーワードにこぞって飛びつき、そのやり方を解説・指南する「体幹トレーニング・ビジネス」も隆盛を極めた。この十年ほどで、“インナーマッスルを鍛える重要性“が世間一般に広く浸透したように思われる。

しかし体幹トレーニングのイメージや話題性ばかりが先走ってしまい、そのトレーニング効果が実態以上に過大評価されたり、他のトレーニング法への安易な批判も目立つようになった。十分な検証・実証もなく巻き起こった体幹ブームの結果、形だけの体幹エクササイズを導入するチーム・選手が増え、一部では「フィジカル強化は体幹さえ鍛えれていれば、何とかなる」的な風潮すら感じられるようになった

体幹ブームのあと

2014年、サッカーW杯ブラジル大会。国民の大きな期待を背負いながらも、日本代表が予選リーグで惨敗を喫したことは、国内サッカー界において深い失望感をもたらした。しかし、その失望ムードの中での2015年ラグビーW杯、エディ・ジョーンズ監督が率いたラグビー日本代表の快挙は、日本サッカー界にとって一種の黒船的ショックだったように思える。

エディ監督及びスタッフは、国内スポーツ界全体として敬遠されがちな「ウェイトトレーニング」を特に重視し、従来以上に選手の基礎的フィジカルの強化に努めた。栄養・休養面でも科学的アプローチを積極的に取り入れ、選手の綿密なコンディショニング管理を徹底した。大会後、チーム中心メンバーの五郎丸歩選手が、日本サッカー界に対して「フィジカル強化から逃げると戦えない」と公の場で提言したことも話題となった。

その直後のタイミングにサッカー代表監督に就任したハリルホジッチ監督も、世界基準のデュエルやインテンシティに対応すべくフィジカル強化を重視し、代表選手に対してJリーグの標準レベルを超えた基礎筋力アップやウェイトトレーニングを要求するチーム作りを行い、事実として一定の結果を出している。

しかしマスメディアの論調やサッカー指導の現場において、積極的にウェイトトレーニングを行ない基礎筋力を高める取り組みに対して、強い抵抗感を示す関係者が少なくない。日本選手のフィジカル面での弱さは、日本サッカーが長年抱えるテーマの1つでもあったが、ハリル監督がいざそこにメスを入れようとすれば、メディアや現場関係者、サポーターからは必然的に「日本代表がマッチョ化して大丈夫なのか?」「日本の強みが失われる」などとネガティブな意見が集まりやすい。

2014年ブラジル大会の惨敗を踏まえれば、チームの方向性に大きな変化が求められて然るべきだ。だが、筋肉を増やし筋力を高めるフィジカル強化が、日本国内ではある種の「禁じ手」のように忌み嫌われるサッカー文化、スポーツ文化があるのかもしれない。そう考えれば、ウェイトトレーニングとは対立軸に置かれた「インナーマッスル論」が注目されやすいのも頷ける。

いずれにせよ、今後の日本サッカーが向かうべき方向性をしっかりと見極めるためにも、今ここで「インナーマッスル」という概念の意義を、再考・再検証したいと思う。

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最終更新:8/3(木) 7:00
VICTORY

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