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「玄関に水」→「浸水で孤立」→「妹夫婦流された」 九州豪雨の迫る恐怖刻一刻 市民から寄せられた287件の「SOS」

8/3(木) 12:02配信

西日本新聞

 「濁流に囲まれ、逃げられない」。北部九州を豪雨が襲った7月5日、福岡県朝倉市の災害対策本部に市民から287件の「SOS」が寄せられた。その記録をたどると、事態が刻一刻と悪化し、市全域に被害が拡大していく様子が、市民の不安や恐怖とともに浮かび上がる。

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 「朝倉市付近で1時間雨量約110ミリ」。5日午後1時28分、福岡管区気象台は記録的短時間大雨情報を発表。市役所の電話が鳴り始めたのは、その2分後だった。

 通報は当初、山間部周辺が目立ち「玄関周辺に水がたまりだしている」(午後1時31分、杷木星丸)などだった。午後2時には甚大な被害が出た杷木松末(ますえ)地区から「乙石川が氾濫しそう」。その23分後には同地区から「川が流木であふれている」と、今回の災害で特徴的だった流木被害を伝えていた。

 山の豪雨が下流域に達したとみられる午後3時ごろからは、市役所本庁がある市西部の住宅地に被害が広がっていく。「川の水があと少しで堤防を越えそう」「道路から水が噴き出している」「早く来てくれ」などの通報が相次いだ。午後3時50分には、佐田川上流の寺内ダムが放流するサイレンが鳴っているとして「どうしたらいいか」との通報が複数寄せられた。

 このころ、山間部では雨脚が若干弱まり、避難活動が一段落して被害状況の確認が進んだとみられる。黒川地区は集落が孤立し、午後4時20分には「県道が分断され、上にも下にも行けない」など救助を求める通報が続いた。

 再び雨が強まった日暮れから夜にかけては、市内全域から通報があり、被害状況もひどくなった。「女性が軽トラの荷台の上にいる」(午後6時57分、大福地区)▽「床上浸水で孤立」(同7時18分、蜷城(ひなしろ)地区)▽「流されてきた家が自宅に直撃した」(同30分、杷木志波地区)▽「1階は浸水。2階で身動きが取れない」(同35分、杷木松末地区)

 その後、通報は悲鳴に変わる。「家が動いている。近所の電柱に登っている」(午後9時6分、大福地区)▽「人が乗った車が流されている」(同10分、杷木地区)▽「妹夫婦が流されて安否が分からない」(午後10時20分、黒川地区)

 濁流のために道路は各地で寸断され、現場確認は困難を極めた。市災害対策本部は「未確認情報」としながらも警察や消防、自衛隊と情報を共有し、できる範囲での救助活動につなげた。市担当者は「通報があっても現場に行けなかった。携帯電話の充電が切れたり、水没したりして連絡できない人もいるだろう」と悔しそうに話した。

=2017/08/03付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:8/3(木) 12:02
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