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改革精神持ち信念貫く 「横浜大戦争」著者 蜂須賀敬明

8/3(木) 10:08配信

カナロコ by 神奈川新聞

 横浜18区それぞれの地を守る土地神が、横浜一の称号をかけて争う物語「横浜大戦争」(文芸春秋)が話題だ。構想5年。奇想天外な物語を手掛けたのは横浜市保土ケ谷区出身の作家、蜂須賀(はちすか)敬明(たかあき)(29)。昨年松本清張賞を受賞した「待ってよ」(文芸春秋)でデビューし、今作が2作目になる。

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 「地元愛が強い横浜の人の、市民性を刺激するような物語ができないか」

 まずは横浜を探検しようと、自転車を購入。ペダルをこぎ、街を見つめていくと、第2次世界大戦中に捕虜となった英国民を悼む「英連邦戦争墓地」や、関東大震災の痕跡などの歴史に目が留まった。黄金町を往来し、赤線ができた背景などに思いをはせた。

 一枚岩ではないと感じた横浜の特色は、18人の神様の職業や神器に盛り込んだ。分区した経緯がある中区と西区は姉と弟。つつましやかに見えるシスターの姉が修道服の下に忍ばせる神器は命中率の高い銃。そこには球場や公園、中華街などの名所と、風俗街などがある黄金町と、両極の顔を持つ区の神として「酸いも甘いも知っている」強さを潜ませた。

 大学で文学を専攻したのをきっかけに、「小説を書こう」と思い立った。2年の夏休みには、ドイツへの語学留学を体験。寮暮らしをしながら週末にはスイスやフランスなどへ小旅行した。なじみのない床で寝て、初対面の外国人から渡されたパンを食べる。経験を重ねる中で、少しずつ心の軸が強くなっていくことを感じた。宿が取れていないトラブルに出くわしたとき、「オレは何があっても、生きていける」と確信した。4年生までの間に仕上げた小説は、原稿用紙3600枚の超大作。書籍にするのが難しいなら…と、自分で1年をかけてプログラミングをし、電子書籍を販売した経験もある。

 「何でもできる人になりたい」。好きだというロックバンド「X JAPAN」や「LUNA SEA」らが、メンバーの死や活動休止などの苦境を乗り越え、いまなお精力的に活動する強い姿に、心を揺さぶられた。信念はそこに根差している。

 大学を卒業した2011年3月、東日本大震災が起き、社会が大きく変わるのを体感した。

 企業が望む人材であることが求められる就職活動は、「集団催眠のよう」と感じ企業に属することを選ばなかった。一方で、父方の実家の墓が福島県相馬市にあり、また仙台市には親戚もいた。被災で苦労する親族もいる中で、自らを顧みた。「就職をして、真人間になった方がいいのかな」。迷いが生まれたが、自分の生き方を信じると決めた。

 「優秀な人間がノーミスでいくのではなく、やり直しを受け入れられるのが成熟した社会。リスクを回避せず、嗅覚を信じ改革精神を持って生きたい」

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