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JR九州がフリーゲージトレイン導入断念、どうなる九州新幹線長崎ルート

8/4(金) 5:50配信

ZUU online

JR九州 <9142> は与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチームの検討委員会で、九州新幹線長崎ルートへのフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)導入について、断念する意向を正式に表明した。安全面の懸念が残るうえ、採算が合わないためで、全線フル規格での整備を求めている。

在来線特急と新幹線を乗り換えるリレー方式で2022年に暫定開通し、その後FGTを導入する計画が事実上白紙に戻ったわけだが、フル規格での全線整備を求める長崎県と負担増に難色を示す佐賀県の意見が分かれているだけに、今後の議論は難航しそうだ。

■JR九州は全線フル規格での整備を希望

JR九州は与党検討委員会で、FGTの導入を断念し、全線フル規格での整備が望ましいとの意向を伝えた。リレー方式での暫定開通が固定化、長期化すると、経営上の問題になることも訴えている。

JR九州は、FGTの車両費が一般の新幹線に比べて2倍前後かかり、導入すれば年間50億円程度の負担増になると試算している。国土交通省の技術評価委員会が7月、不具合発生で約2年半にわたって中断しているFGT耐久走行試験の再開を見送ったこともあり、安全面の課題が解決していないとも判断した。

フル規格を選ぶ理由となったのは、地元の念願である関西乗り入れを実現するのに望ましく、時間短縮効果が最も大きいことだ。フル規格新幹線での運行なら、高速バスなどとの競争に一定の対抗力を持つとみている。

JR九州の青柳俊彦社長は記者会見でFGTについて「(開発状況が)事業者として安心して採用を決める段階に至っていない」として導入困難との考えをあらためて示した。FGTに代わる方式については、検討委員会での議論を見守る方針だ。

■長崎県や九州経済界からフル規格整備に賛同の声

FGTは線路幅の異なる新幹線(1435ミリ)と在来線(1067ミリ)の両方を走行できる車両で、スペインで実用化されている。九州新幹線長崎ルートは当初、2022年度の開業時からFGTを走らせる構想だった。

福岡県の博多駅から佐賀県の新鳥栖駅まで26キロは九州新幹線鹿児島ルートを共用、新鳥栖駅から佐賀県の武雄温泉駅まで51キロは在来線を利用する計画。残る武雄温泉駅から長崎県の長崎駅まで66キロをフル規格で整備してきた。

しかし、鉄道建設・運輸施設整備支援機構のFGT開発は不具合の発生が相次ぎ、実用化が遅れている。このため、博多駅から武雄温泉駅まで在来線特急が運行し、武雄温泉駅でフル規格の新幹線に乗り換えるリレー方式で暫定開業、2025年度にFGTによる全面開業に移ることが決まっていた。

JR九州がFGTの導入断念を明らかにしたことにより、フル規格での全線整備を求める声が高まっている。長崎県の中村法道知事はこれまで財源の問題などから、フル規格に慎重な言い回しを続けてきたが、与党検討委員会に対してフル規格での全線整備を求める考えを初めて明らかにした。

長崎県新幹線事業対策室は「最も効果が期待でき、安定的な運行ができる方式を県として要望した」と述べた。FGTの開発をいつまでも待てないという思いが背景にある。

九州商工会議所連合会の礒山誠二会長(福岡商議所会頭)、佐賀県武雄市の小松政市長、嬉野市の谷口太一郎市長、長崎商議所の宮脇雅俊会頭も相次いでフル規格導入を求める考えを示した。

■佐賀県は負担増を嫌い「議論できる環境にない」と反対

これに対し、佐賀県は地元負担の増加を理由にフル規格での整備が困難との見方を崩していない。山口祥義知事は与党検討委員会に対し、あらためて反対の意向を伝えている。

全線フル規格での整備となれば、建設費が大幅にはね上がり、現在の5000億円がほぼ倍増する見通し。佐賀県の実質負担は現状の225億円から800億円に膨らむと試算されている。時間短縮効果も長崎県に比べて小さいだけに、佐賀県新幹線地域交通課は「議論できる環境にない」としている。

フル規格に代わる選択肢としては、リレー方式、スーパー特急、ミニ新幹線が考えられる。だが、リレー方式は運営コストが高くつくため、JR九州が固定化に難色を示している。時間短縮効果はそれほど大きくなく、関西乗り入れも難しい。

スーパー特急は路盤やトンネル、高架をフル規格仕様で整備するが、レールの幅や電圧は在来線仕様。こちらも時間短縮効果が期待できず、新幹線区間への乗り入れは困難だ。

ミニ新幹線は在来線区間にフル規格のレールを敷設することで、新幹線区間との直通運転を可能にするもので、秋田、山形新幹線に導入されている。しかし、工事中は在来線の運行ができず、片側通行で対応せざるを得ない。運行本数の多い長崎本線ではJR九州の負担が大きくなる。

財政負担の枠組みが変わらない限り、佐賀県がフル規格に同意すると思えないことから、佐賀県の負担の一部を国や長崎県などが補てんし、フル規格での建設を求める声も出ている。与党検討委員会は8月中にも結論を出したい考えだが、負担額が大きいだけに、話が進む気配はまだ見えない。


高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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最終更新:8/4(金) 5:50
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