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インフラ老朽化の点検作業時間をAIで10分の1に短縮、無料公開で評価へ

8/4(金) 8:10配信

MONOist

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2017年8月3日、東京都内で会見を開き、表面に汚れや傷がある状態でも幅0.2mm以上のコンクリートのひび割れを80%以上の高精度で検出するシステムをAI(人工知能)を活用して開発したと発表した。同日から2019年3月末まで、Webサービスとして同システムを無料公開し、検出精度や作業効率などの有効性を検証する。同システムの実用化により、橋梁やトンネルなどの点検に関わる作業時間を現在の約300分から10分の1の30分に短縮できるという。

【現在のコンクリートのひび割れの記録方法などその他の画像】

 今回の発表は、2014~2018年度の5カ年で進めている「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」の研究成果の1つとなる。2014~2016年度の3年で研究開発を終え、2017~2018年度の2年間で実証を進めることになる。NEDOからの委託により、首都高技術、産業技術総合研究所(AIST)、東北大学が共同で研究開発を進めてきた。

●進むインフラの老朽化と人材不足、しかし点検はほぼ手作業

 国内の高速道路や橋梁、トンネルといったインフラの多くは、老朽化のめどとなる建設後50年を経過しようとしている。老朽化の結果として使えなくなる前に、修繕できれば寿命を延ばすことも可能だが、これらのインフラの維持や検査に従事する技術者や作業者の数は大幅な減少が見込まれている。

 NEDOのインフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクトでは、老朽化が加速するとともに人手不足も進む中でもインフラの維持管理や更新が可能になる新たな技術の開発を進めている。開発テーマは「インフラ状態モニタリング用センサシステム開発」「イメージング技術を用いたインフラ状態モニタリングシステム開発」「インフラ維持管理用ロボット技術・非破壊検査装置開発」の3つで、今回開発したシステムは「イメージング技術を用いたインフラ状態モニタリングシステム開発」に対応するものだ。

 首都高技術 技術部長の森清氏は「道路構造物の点検では2014年から、5年に1回の近接目視点検義務の徹底が始まっている。その一方で、インフラの老朽化と人材不足は進んでおり、点検を支援する技術が求められている」と語る。

 現在、インフラ老朽化の目安とされるコンクリートのひび割れの記録方法は、ほぼ全ての作業を手作業で担っている。コンクリートのひび割れのある部分をデジタルカメラで撮影した上で、作業員がひび割れと判断した箇所を手作業で野帳に記録する。そして、この記録を事務所内でCADデータ化する作業も全て手作業で行っている。「点検に関わる作業時間」とは、これらを全て含めたものとなる。

●熟練作業員による教師ありデータのディープラーニングで検出精度を向上

 今回開発したシステムは、デジタルカメラによる撮影までは同じだが、後は撮影画像をシステムに読み込ませるだけでひび割れの箇所を検出してくれる。CADデータ化についても、従来の手作業が不要になるので、10分の1という劇的な時間短縮が可能になる。

,開発したシステムを使えば作業時間を10分の1に短縮できる 出典:NEDO

 従来のひび割れ検出技術は、撮影画像を白黒処理してその濃淡から検出するものだった。この場合、ひび割れ以外(チョーク跡、気泡、漏水などによってぬれた部分との境界など)を検出する上、検出精度も12%と低かった。

 今回開発したひび割れを検出技術は、熟練作業員による教師ありデータとなるひび割れ画像約600枚を用いたディープラーニングによって検出精度を高め、81%という精度を実現した。「ひび割れの特徴点を検出するプロセスについては、人間の知見を入れ込んでいる。これは、教師ありデータだけでのディープラーニングでは精度を62%までしか出せなかったためだ。これら全てを含めて『AIを活用した高精度システム』としている」(AIST 情報・人間工学領域 知能システム研究部門 コンピュータビジョン研究グループ 主任研究員 永見武司氏)という。

 今回無料公開するシステムは、現時点でひび割れ自動検出機能を利用可能だ。今後は検出データをCADデータ化する機能も追加する予定。永見氏は「今回の無料公開はWebブラウザで利用できるようにしているので、画質次第という前提はあるがスマートフォンのカメラで撮影した画像にも適用できる。既にスマートフォンアプリも試作しているので、無料かどうかは議論することになるが公開したいと考えている」と説明する。

 NEDO ロボット・AI部で今回のプロジェクトのプロジェクトマネージャーと務める安川裕介氏は「首都高速道路をはじめとするコンクリート構造物で実証実験を進めるとともに、無料公開による評価結果を反映し、2019年3月末のプロジェクト終了までにシステムの実用を開始したい。最終的には、ドローンやロボットによる撮影との連動、検出した道路構造物のひび割れの帳票化などが点検作業の効率化には必要になるだろう」と今後の展望を述べている。

最終更新:8/4(金) 8:10
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