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【ミャンマー】サルウィン川ダムの再交渉を 軍政が中タイに安売、内需優先へ

8/4(金) 11:30配信

NNA

 ミャンマー東部を南北に流れるサルウィン川(怒江)の水力発電ダム建設計画を見直すべきとの声が強まっている。ミャンマーの旧軍事政権は外貨獲得を狙い、タイや中国の企業が開発費用を賄う見返りに長期的に安価な電力を供給する内容で基本合意したが、民政移管して国内発展が急速に進む中、電力需要も拡大。国内供給を優先すべきとの意見が強まる。環境への影響を懸念する声もある。
 週刊誌フロンティア・ミャンマーの論説によると、ミャンマーとタイの両政府首脳が1997年7月、サルウィン川の7カ所に水力発電ダムを建設することで覚書を交わしてから20年が経過した。総発電容量はミャンマーの現在の総発電容量の約5倍に相当する2,200万キロワット(kW)で、7カ所のうちタイに近い下流の4カ所で発電した電力はタイへ、中国に近い上流2カ所からは中国へ輸出する内容だった。
 外貨収入に乏しかった当時の軍事政権にとって、電力輸出は魅力的だったが、足元を見られ、サルウィン川の水力発電所の電力販売条件はミャンマーにとって不利な内容になった。米ハーバード大ケネディスクールの研究によると、モントン水力発電所で発電した電力の9割を輸出して得られる外貨収入は年間2億700万米ドル(約229億円)。ただネパールやラオスの実績と比較すれば、電力輸出相場の4分の1の低水準だという。
 ダム計画が実現しないまま、ミャンマーは2011年の民政移管を経て、国内情勢が激変した。対外開放で経済成長が加速し、電力需要が高まる一方、電化率は約3割にとどまる。国内産業発展の礎になる電力供給体制の整備は焦眉の課題。国内の電力供給が不安定な中、国民の多くは、電力を安く大量に海外に輸出するよりも、国内に優先的に回すべきと考える。
 ミャンマーでは近年、水力資源が経済成長に大きな役割を果たす可能性があるとの認識も広まった。サルウィン川のダム建設に関する軍政時代の「不平等」合意の実態が明らかになり「再交渉すべき」との機運が高まる。
 環境に悪影響を与えるとの懸念も強い。今年初めには世界銀行グループの国際金融公社(IFC)が水力発電所の建設推進を目的として国内複数の都市で開催したワークショックに対し、環境保護団体のビルマ・リバーズ・ネットワーク(BRN)やサルウィン・コンサベーション・ネットワーク(SCN)が「主要河川での大規模ダム開発は時期尚早」と反対運動を展開した。
 ただ軍政時代の契約見直しは容易ではない。中国電力投資集団(CPI)が北部カチン州のイラワジ川上流で計画したミッソンダムは、テイン・セイン前大統領が民意を受けて中断したが、現政権を率いるアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相は、賠償金もちらつかせる中国の前に白紙化を決断できず、宙ぶらりんのままだ。
 フロンティアの論説は、タイなどとの再交渉に当たって、軍政時代に確保されていなかったプロセスの透明性を高め、民意を反映させることが重要と主張。輸出契約に、国内供給優先の項目を盛り込み、国際基準の環境・社会影響評価を実施し、結果によっては計画を白紙に戻すことも検討すべきと指摘する。

最終更新:8/4(金) 11:30
NNA