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任意にCO2の分離・回収を実現、光で制御する多孔性材料

8/4(金) 7:10配信

スマートジャパン

 京都大学と東京大学の研究グループは2017年7月27日、二酸化炭素(CO2)の吸着を光で制御できる多孔性材料の開発に成功したと発表した。これまでより簡単に、任意のタイミングでのCO2の分離・回収と再利用が可能になるという。

 多孔性材料とは、小さな穴が無数に空いた構造を持つ材料のこと。特に多孔性金属錯体(PCP)というジャングルジムのような構造を持つ多孔性材料の穴に、ガス分子を吸着させる技術は、CO2などの分離・貯蔵に有用として研究開発が進んでいる。しかし、多孔性材料の結晶は柔軟性がなく、ガス吸着量を変化させることが難しいという課題があった。

 研究グループは、光刺激によってPCPの穴の大きさを調整し、CO2吸着量を調整できる多孔性材料を新たに開発した。「ジアリールエテン」という有機分子は、紫外光の照射によって、閉じてリングを構成するような動きを、可視光の照射でリングを開くような動きを示すことで知られている。このジアリールエテンをPCPのナノ細孔の表面に導入することで、照射する光の種類によって穴の形と大きさが可逆的に変化する構造を作ることに取り組んだ。

 しかし、分子が密に詰まったPCPの固い結晶中では、ジアリールエテンが反応を示すために必要な空間的ゆとりが無い。実際、従来の可動性のないPCPでは、ジアリールエテンの光反応は固体の表面で進行するのみで、細孔の構造を効率よく変化させることができなかった。そこで研究チームは、ジアリールエテン誘導体(DAE)を導入したPCPを、“知恵の輪”の要領で組み合わせることで、フレームワーク同士の相対的な位置が変化できるようにした。

 このことにより、PCPに構造的な柔らかさが生まれ、DAEが光反応を示すための構造的余裕ができた。このPCP結晶では、数分間の紫外光照射で95%のDAE部位が閉環反応を示した。構造的な柔らかさのないPCPでは、何時間光照射を続けても光反応率が10~20%であったことを考えると、「劇的な効率の向上」としている。このことにより、細孔容量が変化し、CO2の取り込み量も30%以上減少。さらに可視光の照射により、紫外光照射前と同じ構造に戻り、CO2を取り込む能力も回復した。このような高効率な光反応に基づく吸着現象の可逆的制御は、過去に例がないという。

 従来の多孔性材料では、温度や圧力を変えることで吸着現象を制御していたが、今回開発した多孔性材料は光で可逆的に吸着現象の制御が行えるため、従来より簡単に、任意のタイミングでCO2の分離・回収と再利用が行える。このメリットを生かし、多孔性材料として実用化することで、混合ガスからの効率的なCO2分離回収を実現する資源化技術につながる期待がある。さらに、光エネルギーを効率良く化学反応へと変換するための結晶性プラットフォームとしての可能性も示すとしている。