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Appleの次なるイノベーションの舞台はARか

8/4(金) 7:45配信

ITmedia NEWS

[AP通信] 米Appleのスマートフォン「iPhone」には、拡張現実(AR)への跳躍板という次なる大きな役割が待ち受けているようだ。ARは、現実の風景にデジタル要素を重ね合わせ、画面を通じて現実世界を拡張する技術だ。

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 ARについて聞いたことがあるとすれば、恐らく「Pokemon GO」を通してではないだろうか。Pokemon GOは、現実のさまざまな場所を歩き回りながら、スマートフォンの画面に表示される架空のキャラクターを捕まえて楽しむゲームだ。さらにARは教育現場の他、製品組み立てや倉庫の在庫管理といった分野にも活用されつつある。

 目下Appleが目指してるのは、ARを単なるニッチな技術から大衆市場向けの技術へと転換することだ。Appleは今秋iPhoneにAR機能を追加する予定であり、そうなれば、創意に富んだ新しい方法で現実世界とデジタル情報を融合する新たなアプリが大量に登場するための土台が整うことになる。

 Appleのティム・クックCEOは8月1日、業績発表後の電話会見でARについて「極めて重要な技術であり、いずれ私たちはその始まりを振り返り驚嘆することになるだろう」と語った。多くのアナリストもクック氏と同じ意見だ。IT調査会社Jackdaw Researchのジャン・ドーソン氏はAppleのARプラットフォームについて、「2008年にApp Storeが開設されて以来、Appleが開発した中で最も重要なプラットフォームだ」と述べている。

 ただし難点もある。それは、ARのキラーアプリがどのようなものになるかをまだ誰も具体的に提示できずにいることだ。少なくとも、1年前に登場し既に人気が下火のPokemon GOを超えるようなものは出ていない。アナリストらはもっと一般的な話として、ARにはゲームやホームリモデリング(今の部屋に新しい家具を配置した様子を視覚化するなど)、教育、ヘルスケアなど、さまざまな分野で活用の可能性があると指摘する。

 しかし今のところ私たちに提示されているのは、「スターウォーズ」風のドロイドが街中に出現したり、NASAの宇宙探査機を目の前に映し出したり、画家ゴッホの寝室をバーチャルに体験できたりなど、基本的には開発者が作成したデモレベルのものばかりだ。

●iPhoneとAR技術が連携

 AppleのAR戦略はまず9月にリリース予定の「iOS 11」でスタートする。iOS 11は世界中の何億台ものiPhoneやiPadに搭載されているOSの最新版だ。

 iOS 11には、ソフトウェア開発者によるARアプリの開発を支援するARツールキットが搭載される。

 ただしそうしたARアプリは、どのAppleデバイスでも動作するわけではない。対応するのは、Appleが今秋リリース予定の待望の次世代iPhoneも含め、「iPhone 6s」以降のモデルだ。2017年モデルのiPadとiPad ProもARアプリを実行できる。

 AR分野に力を入れているのはAppleだけでなはい。Facebookの創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏は今年4月のプレゼンテーションでARに言及し、「スマートフォンの使い方を変える非常に重要な技術だ」と指摘。GoogleやMicrosoftなど、Appleのライバル各社もAR技術の導入を進めている。

●Appleの次なるイノベーションとなるか

 Appleのイノベーションの原動力であった共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏が2011年に亡くなって以降、同社はiPhoneへの依存から脱却するための「何か」を探し続けている。

 2015年にはAppleはスマートウォッチ「Apple Watch」を発売。当時、クック氏は革新的な製品を開発できたと考えていた。だがApple Watchはいまだニッチな製品に留まっている。

 今のところはiPhoneがまだAppleの主力製品であり、2017年4〜6月期には売上高454億ドルのうち55%をiPhoneが占めた。2017年4〜6月期の売上高は前年同期比で7%増、純利益は同12%増の87億ドルとなっている。

●市場は急成長の見通し

 ITコンサルティング会社Digi-Capitalのマネージングディレクターであるティム・メレル氏は、Appleの参入はAR市場にとって起爆剤になると指摘する。Digi-Capitalは、AR市場の規模は2016年の12億ドルから、2021年には830億ドルに急拡大すると予想している。

 この予想は、Appleや競合各社が高性能スマートメガネやMicrosoftのヘッドセット「HoloLens」など各種デバイスにAR機能を拡張するという想定に基づくものだ。

 ただし当面はスマートフォンがARとの連携に最も適したデバイスとなりそうだ。GoogleはARソフトウェア「Google Tango」を開発し、2016年にLenovoのスマートフォンに搭載。さらに今月には、ASUSがGoogle Tangoを搭載する高性能スマートフォンの発売を予定している。

 もっとも、Google Tango搭載スマートフォンがiPhoneやiPadほど広く使われるようになるのは恐らく何年も先のことだ。9月にはiOS 11の無償アップデートが公開され、iPhoneやiPadの大半がAR対応になることが予想されるからだ。

 通常、iOSを搭載するAppleデバイスの90%近くは、新しいアップデートがリリースされた時点で最新版をインストールする。今秋も同じパターンになるとすれば、人々が現在使用中の約3億台のAppleデバイスがAR機能を搭載することになる。

●いずれはiPhoneも不要に

 アナリストによれば、Appleの希望通りに最新iOSでより多くのARファンを取り込むことができれば、AppleはAR専用デバイスの開発に着手する可能性もあるという。

 1つ可能性が高いのは、iPhoneと連携するARメガネのようなものを使って、スマートフォンの画面を介さずにデジタルな拡張現実の世界を楽しめるようになることだ。さらに技術が成熟すれば、少なくとも多くのアプリはヘッドセットだけで十分に機能し、iPhoneは不要となる可能性もある。

 最終的にはそうしたデバイスがiPhoneに取って代わることになるかもしれない。ただしそれが現実になるのは恐らく、最も甘く見積もったとしてもまだ5〜10年は先のことだ。
(日本語翻訳 ITmedia NEWS)
(C) AP通信

最終更新:8/4(金) 7:45
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