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ロッテ「チョコパイ」が急成長を始めた理由

8/4(金) 10:29配信

ITmedia ビジネスオンライン

 スナック菓子「カール」にアイス商品「ダブルソーダ」……。このところロングセラー商品が相次いで販売終了あるいは生産減少を余儀なくされている。そうした中、ロッテが34年前に発売した「チョコパイ」はここ数年で急激に売り上げを伸ばしているのだ。

【チョコレートおよびビスケットの生産金額推移】

 2016年6月に出した「チョコパイ<PABLO監修チーズケーキ>」(個売りタイプ)は発売から1カ月で300万個以上を出荷、17年4月の「チョコパイ<PABLO監修プレミアムチーズケーキ>」(同)は500万個以上を出荷した。16年の売り上げはチョコパイの長い歴史の中で過去最高を記録し、この10年間で売上高は1.75倍に伸長した。

 実はチョコパイは日本の菓子ジャンルの中でビスケット市場に含まれる。チョコレート市場の成長が著しい一方で、ビスケット市場は一進一退を繰り返しているのだ(下図参照)。そうした状況下で、なぜチョコパイは好調なのだろうか。

●ケーキの食感を出すのに一苦労

 チョコパイは1983年9月に発売。当時高級品だったケーキのような菓子を手軽にいつでも食べられるようにしたいという思いから生まれた。日本では70年代後半から欧米の有名菓子店がデパ地下に進出するなど、人々の間でケーキはぜいたく品の1つになっていたのである。

 チョコレートケーキの味わいを――。これを合言葉にロッテは商品開発を進めたが、ケーキ生地のようなしっとり感を追求すると日持ちせず、逆に日持ちさせようと原料の水分量を抑えるとパサパサになってしまうという苦労があった。試行錯誤の末、しっとり感と日持ちの良さを両立させることで商品化にこぎつけたのである。

 なお、形状が似たものに森永製菓の「エンゼルパイ」があるが、これはクラッカーにマシュマロをはさんでチョコレートでコーティングした米国のムーンパイを参考に作られた商品で、チョコパイとは中身が違う(チョコパイはバニラクリーム)。

 6個入りの箱タイプで販売開始したチョコパイは、順調に売り上げを伸ばし、87年には大袋タイプを発売して、当初からメインターゲットだったファミリー層の需要を狙い打ち。これで一気に攻勢をかけて93年にピークを迎える。

 ただし、そこから10年以上、売り上げはほぼ横ばい、あるいは減らすこととなった。バブルが崩壊し、国内消費が冷え込み出した時期とも重なるわけだが、ロッテの商品マーケティング担当者によると、チョコパイのブランドを定着、育てるために、あえて新商品を出さずに既存の2商品の販売に注力していたことも大いに関係するという。

 とはいえ、ブランド浸透のためと言えども、何も手を打たないわけにもいかない。そうした中で2006年に小型タイプの「プチチョコパイ」を発売する。既存のチョコパイについて、サイズが大きすぎるという声があり、少量を食べたいという消費者のニーズをくみ取った。特にターゲットとして意識したのは、これまでのファミリー層だけではなく、働く女性や40~50代の小容量を好む顧客だった。この施策によって再び売り上げは右肩上がりの上昇カーブを描き始めたのである。

●個食への対応、フレーバーの拡充

 ロングセラー商品が難しいのは、ブランド認知が広まっているからと言って、何もせずに安定して売れ続けるわけではないという点だ。ロングセラーだからこそ、常に消費者に刺激を与え続けなければならない。

 実際、チョコパイもマンネリ化していて、以前は食べていたのに、ここ数年まったく食べていないという消費者が増えていた。そこで12年、発売以来初めての大がかりな商品リニューアルを行った。より生ケーキの食感に近づけるように品質を改良、おいしさを追求して消費者にアピールした。

 リニューアルした商品をより多くの人に体験してもらうため、1個30円というお試し価格パックを発売したほか、単身世帯の増加など社会の環境変化に合わせるため、2個入りの新商品「チョコパイ パーソナルパック」をコンビニ中心に販売した。14年には正式に1個入りタイプのチョコパイを商品化し、スーパーマーケットを中心に販売することで、個食のニーズに対応していった。現在は1個入りおよび2個入り商品が売り上げ全体の約10%を占めている。

 また、13年以降はこれまでほとんど実施してこなかったフレーバーの種類を拡充。「世界のチョコパイ紀行シリーズ」と題して、ニューヨークチーズケーキ味やイタリアのカプチーノ味、オーストリアのザッハトルテ味などを開発したほか、焼きたてチーズタルト専門店「PABLO」とコラボレーションした商品、「不思議の国のアリス」(ロイヤルミルクティー味)や「美女と野獣」(ティラミス味、2人の真実のLOVEベリー味)といった童話の世界観を打ち出した商品を矢継ぎ早に投入した。PABLOとのコラボ商品は10~20代の若年層を獲得、童話シリーズは商品の箱がぬり絵になったり、工作できたりする仕掛けを設けて小さな子どもがいるファミリー層が楽しめるようにした。

 このように商品のバリエーションを増やし、店頭での商品露出機会を高める営業戦略をとったことで、リニューアル後は毎年2桁成長に近い数字で売り上げが推移した。

 チョコパイは今後、ハロウィンをはじめ季節性のある商品の開発にも注力していくという。

 ちまたには菓子メーカー各社の新商品があふれ返り、市場競争が激しくなる一方で、ロングセラー商品がこれから先も生き残っていくためのヒントがチョコパイの取り組みの中に散りばめられているのだ。

(伏見学)