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Microsoftは“UI音痴”なのか?

8/4(金) 12:19配信

ITmedia エンタープライズ

この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。

【画像】Windows 10のCreators Updateでコントロールパネルが見つからないときに便利なコマンド「Win+X」を押したところ

 ちょっと怒っています。Microsoftの“UI/UX音痴”に、です。4月に「Windows 10」の大型アップデート(Creators Update)が公開されたのですが、そのときMicrosoftが、また“やらかしてくれた”のです。

 メニューの構成が変わり、「コントロールパネル」が見つからなくなったのです。それまでは、スタートボタンを右クリックして表示されるメニューの中にコントロールパネルがあったはずなのですが、「ないな……」と思って調べたところ、この記事を発見して分かったのです。なくなってはいませんでしたが、とても見つけづらいところに移動していました。

 どうやらコントロールパネルの機能は「Windows設定」に引き継がれているようで、そちらの方がデザインも最新ですから、それを使えということなのでしょう。しかし、目指す機能がどこにグルーピングされているかが分かりにくいので、どうしても古いコントロールパネルの方が便利なのです。

●「変わらないUI」の価値を分かっていないMicrosoft

 今回の件に限らず、Microsoftはアップデートの度にちまちまとメニュー構造や並びを変えています。アクセサリーや設定ツールなどの変更が多いのですが、本当に謎です。いったい何のためにやっているのでしょうか?

 コントロールパネルは毎日使うものではないですが、たまに使わなければならなくなるものです。そういうときはたいてい、急いで設定を変更する必要だったり、何かトラブルがあったりしたときです。そんなときに「あれ? 前はここにあったのに?」といって探し回るのがどれだけストレスか、全く分かっていないのではないでしょうか? 新規ユーザーには問題ないでしょうか、既存ユーザーのほとんどは、「こんなところの変更なんか望んでいない!」と思うはずです。

 そして、変更されているところは他にもありました。個人的に影響が大きかったのは、便利に使っていたランチャー(Quick Launch)がアップデート後に突如、消え失せたこと。これも探し出してどうにか表示を復活させましたが、挙動が前と微妙に違うんです。“探せばある”のはありがたいですが、「それなら元のまま置いておけよ」と思うわけです。互換性の問題などがあるのかもしれませんが、「ブリーフケース」なんていうのもなくなっちゃいましたね。これは使っていなかったので、個人的には困らなかったですが、使っていた人は困ったでしょうね。

●既存ユーザーを激怒させたOfficeのリボン

 細かい変更は、本当に毎回のようにあり、大きい変更も何回かありました。古くは、Officeのメニューがリボンに変わったときも大変でしたね。「Office 2007」でメニューが一新され、それまでのユーザーはどこに何があるのか、全く(大げさではなく、本当に全く)分からなくなりました。最悪だったのは、「印刷」がどこにあるのか、皆目分からなかったこと。結局、リボンの左端の丸いメニューの中に見つけるわけですが、「この丸いのもメニューかよ!」と言って怒っていた人を何人も知っています。

 当時は、Office 2007以降のメニューを「Office 2003」風にするソフトもありました。今も使われているようですね。こういうツールを開発する気持ちは分かります。Officeのリボンの場合は、私はなんだかんだいいながら慣れてしまいましたが。

 ユーザーに負担を強いるアップデートって何なのでしょうか? 変更がある度に、毎回そう思います。

●革新的過ぎた? Windows 8の責任者はリリース直後に退社

 記憶に新しいのが、「Windows 8」の登場です。タッチパネルに最適化したMetroインタフェース(Metro UI)を全面的に採用し、旧メニューも残したものの、「スタート」メニューがなくなったために大騒ぎになりました。これも、残しとておけばいいのに、なぜわざわざなくしたのか? 本当に理解不能です。結局、後で「しぶしぶ」という感じで復活させ、Windows 10では完全に元に戻りましたが。

 実は、OfficeのリボンとWindows 8の開発責任者は同じ人なのです。スティーブン・シノフスキー氏で、「末はMicrosoftのCEOか」といわれていた人なのですが、Windows 8リリースの直後に退社したのです。

 退社の本当の理由は分かりませんが、私としては、スタートメニューについてはプレビュー版の時点から大騒ぎになっていたにもかかわらず、そのままリリースを敢行したことも要因の1つなのではないかと、勘繰っています。

 彼はかなり変わり者だったことは確かなようです。故スティーブ・ジョブズ氏に例えられたりすることもあったくらいですから(今ならジェフ・ベゾス氏に例えられるのでしょうね)。こういう人は、やはり信念があるんでしょうから、「最初は多少不評かもしれないが、未来の使い勝手を考えると、今この変更を行っておくべきだ」くらいの思いでいたのかもしれません。Officeのリボンも、大多数の人は結局は受け入れざるを得なかったわけですから(私は、いまだに使いやすいとは思えませんが)。

 しかし、シノフスキー氏がいなくなっても(いるときも、Microsoftに来る前も)、Microsoftはちょこちょことした変更を繰り返しているわけですから、これはもう「MicrosoftのDNA」として、UI/UXに対する考え方が全く違うのだと考えざるを得ません。そのあたりの感度の悪さやセンスのなさが、スマートフォンでWindowsがいまだに受け入れられない要因なのではないか、とさえ思います。企業ユーザーは多少の不便さは我慢しますが、個人が自腹を切る場合には大事なところですから。

●「変わらないUI」の哲学を守るApple

 対称的なのが、Appleです。「Mac OS」のメニューは、「OS X」になった2001年以降、変わっていません。そもそも、「Appleマーク」の隣に「Finder」があって、「ファイル」「編集」と続くメニューの並びや構成は、以前のMac OSから変わっていないのではないでしょうか。うろ覚えのところもあるので、絶対とはいえませんが。多少違うとしても、それに気付かないということは、上手に変えているのでしょう。

 アイコンが立体的になったり、ランチャーが追加されたりして、見た目はけっこう変わっていますが、使い方で迷うことはありませんし、UI/UX的には本当に同じです。絶対に変えないし、変えるとしても慎重過ぎるくらい慎重に変えています。これは、哲学といっていいし、信念なのでしょう。私は、この姿勢を高く評価します。「iPhone」にしても、初代と今とで、UIはほとんど同じです。アイコンがフラットになりましたが、使う分には「そうだっけ?」くらいの違いでしかありません。

 ただ、公平を期していうと、MacはUIは変えませんが、付属ソフトやツールはけっこうなくなったり変わったりしています(代替ソフトがある場合が多いですが)。

 Microsoftは、UIから見えなくなるけど、探すとちゃんと残っていることが多いように思います。ソフトそのものにはこだわりがあるのでしょうか。最近は「Paint」がなくなると騒がれましたが、結局なくなりはしないようです。「Mac Paint」なんかもう、跡形もないですけどね。

 「テレビのリモコンの数字の配列が、メーカーごとに、あるいは発売のタイミングごとに違ってたら、怒るでしょ?」――。これは、私がよく使う、UIについての例え話です。新しい機能が追加されたりすると、リモコンのボタンが増えたりして、それをどう収めるかが腕の見せどころなわけですが、Microsoftがやっているのは、変えなくてもよい(変えてはいけない)数字の配列をちびちび変えているようなものだと思うのです。皆さんはどう思いますか?

●著者プロフィール:大越章司

外資系ソフトウェア/ハードウェアベンダーでマーケティングを経験。現在はIT企業向けのマーケティングコンサルタント。詳しいプロフィールはこちら。