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地方創生のカギはデジタル産業革命にあり NEC執行役員の石橋氏

8/4(金) 12:43配信

ITmedia エンタープライズ

 デジタル産業革命がビジネスを変える――。これは、7月7日に大阪で開催されたNECの年次カンファレンス、「iEXPO KANSAI 2017」のテーマだ。

【画像】人の視線を推定する技術。10メートルくらい離れていてもどの方向を見ているかが分かるという

 過疎化や高齢化への対応、雇用創出、地方創生など、さまざまな取り組みが急務の西日本の地方都市は、ITの力で再生できるのだろうか。また、西日本の大都市圏はITの力を借りて、どのような形でさらなる成長を遂げられるのか――。NEC 社会公共ビジネスユニット 西日本担当執行役員の石橋研二氏に聞いた。

●都市型、地方型の課題をどう解決するか

――経営課題をITで解決しようという動きが活性化する中、石橋さんの目から見た西日本のIT活用の概況を教えてください

石橋氏: 西日本では、東日本大震災をきっかけに、「東京への一極集中をなくしていこう」という動きが活性化しています。さまざまな立場の方々がいろいろと試行錯誤していますが、結果的には人口減が続いていることからも分かる通り、まだ東京一極集中という現状は変わっていません。

 特に地方都市では、高齢化や過疎化で自分たちの住む都市が破綻を来すのではないかという不安を抱えている方々も少なくありません。しかしそうした中で、各県の知事の方々が「どうしたら若い人たちをひきつけられるのか、産業を誘致できるのか」といったことを懸命に考え、形にしようとしています。

 そうした流れもあって、地域を盛り上げるイベントの誘致や、地域オリジナル製品のブランド価値を向上させようというDMO(Destination Management/Marketing Organization)などの動きが盛んなところは、東日本との違いかもしれません。

 一方で、西日本の大都市圏では、これからさまざまなイベントが予定されています。2019年にはラグビーワールドカップが開催されますし、大阪に万国博覧会を招致しようという構想もあります。2016年末に成立したカジノ法案(IR整備推進法案)には、大阪が候補地として手を上げるなど、関西の大都市圏は元気ですね。

――こうした西日本各地の活性化の取り組みに、ITはどのような形で貢献できるのでしょうか

石橋氏: 関西の大都市圏で開催されるイベントでは、どのような準備をすればいいかという課題をしっかりと定義した上で、ITを使った解決策を見つけていく必要があるでしょう。

 さまざまな国からたくさんの人が訪れるビッグイベントでは、犯罪を未然に防いだり、何かが起こったときにすぐ検知する仕組みが必要とされています。ここでは私たちが得意とする顔認証技術が役に立つのではないでしょうか。

 今回のiEXPO KANSAI 2017では、進化した顔認証ソリューションを展示しています。

 1つは、群衆の映像から監視リストに載っている人物を判別する技術です。これまで数十秒かかっていたものが、技術の進化で瞬時にできるようになりました。スタジアムに不審者が紛れ込んでいたときにも、すぐ分かるでしょう。

 もう1つは、“人がどこを見ているか”が分かる「視線検知」の技術です。万引き防止などの防犯用途で使えるほか、例えば、「ショップでどの棚を見ているか」といったことまで分かるので、マーケティングなどのビジネス用途でも活用できると思っています。

 顔認証のほかにも、今回は「事件や事故に関わる音を検知する技術」も展示しています。雑踏の中で悲鳴や爆発音だけを検知するというもので、20メートル先のガラスが割れた音もキャッチできるんです。

●7県のチームワークで地方創生

――地方都市を活性化させるために、各地でどんな取り組みが進んでいるのでしょうか

石橋氏: 私の担当エリアは24府県なのですが、新幹線が開通した地域はやはり元気ですね。ほかの地域は知事さんや市長さん、自治体の方々や金融機関、国の出先機関が連携して元気になるための方法をいろいろと模索しています。

 そのなかでも瀬戸内海を囲む7県が集まって、一緒に商品やサービス、観光スポットの価値を高めていこうと取り組んでいる「せとうちDMO」は興味深いですね。自分たちでは当たり前すぎてなかなか気付かない“地元の観光資源の価値”を他の県の人たちに見いだしてもらうなど、新たな発見につながる施策を次々と打ちだしています。NECもITによる下支えやアイデア出しなどでご一緒しているんです。

 DMOに参加して分かったのは、課題解決のプロセスや方法が変わってきていることですね。これまでは、お客さまの課題に対して解決策を提示する形のやりとりをしてきましたが、最近では、“お客さま自身も答えが分からない”課題が増えています。

 そうした時には、私たちがお客さまの業務を学んだ上で、互いの視点からアイデアを出し、一緒に議論しながら解決策を考えていくような手法をとることも増えています。

 こうした背景から、私たちのDMOへの関わり方もさまざまなパターンがあるんです。国からの補助金誘致の支援で人を出すこともあれば、サービスの価値を上げるためにITで何ができるかを提案することもある、といった具合です。

 こうした知見を得て共創の取り組みも進んでおり、品川と関西に新技術を展示する場と共創ルームを開設して、お客さまと一緒に課題解決をしようというチャレンジを始めています。

 いくつかプロジェクトもスタートしており、ダイキン工業とは、AIやIoTを使ってエアコンの風を受ける人の感情を研究したり、それによってどんな形で生産性を高められるのか、といったことを一緒に考えているんです。

――最近は自治体や商工会議所が持っているデータを使った地域活性化にも注目が集まっています

 これから私たちが提案しようとしているのが、自治体のIoTの基盤です。欧州でIoTを使ったごみ収集の実証実験を行ったのですが、日本でも既に実証実験を希望する自治体が出てきています。

 実証実験はスペインのサンタンデールで行ったもので、人手が不足する中、センサーを使っていかにごみの収集を効率化できるかを検証しました。ごみ箱にセンサーをつけ、どれくらいたまったかというデータを収集すれば、効率的な収集の仕方をプランニングできるようになるでしょう。

 IoTのツールで現場を可視化し、分析や検討にAIを使い、最後に分析結果をどのような形で現実世界に反映したらいいかを、データを元に検討できるようなプラットフォームを構築していきます。

――これからの西日本はITの力でどう変わりますか

 地域や企業の皆さまが元気になるよう、課題解決のお手伝いをしたいと思っています。仕事柄、知事の方々にお目にかかる機会が多いのですが、皆さん、ものすごく努力をしていらっしゃいます。私たちは世界一の顔認証技術をはじめとする先端技術を磨き上げ、地域にフィードバックしていきたいですね。