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死亡「遠隔」診断 遠く離れていても心は届くのか?

8/4(金) 6:03配信

BuzzFeed Japan

医師の社会的役割

医師は人の生死の場に立ち会い、その上で診断書を書くことが医師法によって定められています。

自宅療養中の患者の臨終に際し、医師が遠方にいてすぐに立ち会えないのであれば、看護師が死亡を確認し、スマートフォン、タブレットなどを通じて、医師が死亡「遠隔」診断できるようにしようと、現在、厚生労働省で具体的な要件が議論されています。

今年度中には始まるというこの死亡「遠隔」診断を、現場の医師として自分のキャリアを振り返りながら考えてみようと思います。【寄稿 新城拓也・しんじょう医院院長 / BuzzFeed Japan】

ホスピスで働く医師の過労

私は現在、開業医として在宅医療の現場で働いており、ほぼ毎週患者の死に立ち会っています。医師になってから20年が過ぎ、ホスピスで働いていたときから数えれば、もう2000人以上の死に関わってきました。

人は死に至るまでに様々な病苦を体験します。私が関わる多くはがんの患者です。今、日本ではがんは死因の第1位となっています。私は、がん患者の苦痛を緩和する緩和ケアを専門としており、強い痛みを始めとするあらゆる苦痛と、心の悩みを緩和することに専念しています。

私がホスピスで働き始めたのは、今から15年前のことです。関西のホスピスに職を求めていたとき、ある病院で働く医師から誘いを受けました。その医師は私よりずっと年上で、たった一人でホスピスに入院する22人の患者、そして他の病棟に入院している緩和ケアの必要な患者の治療にあたっていました。

その医師は強い正義感と責任感で仕事は一切手を抜きませんでした。仕事量は多く、いつも仕事は深夜に及んでいたため、いつしか体調を壊し、ついに倒れてしまいました。医師を一人増員することが病院の上層部に認められ、私が就職することになったのです。

ホスピスでは一晩に3人も亡くなる時がありました。上司も最初は一人一人の患者、家族への礼儀を重んじ、その都度自宅から病院に行き、頭を垂れ、患者と付き添う家族にねぎらいの言葉をかけ、患者の体に聴診器をあて死亡診断をし、死亡診断書を発行していました。

そして、看護師による手厚い遺体の処置(エンゼルケア)が終わるのを待ち、さらに葬儀社の迎えを待ち、病院の外まで見送り、故人や家族と最後の別れをしていました。

私もこの一連の仕事が、当たり前の流れだと考えていましたし、治療を通じて苦楽をともにした、患者、家族に対する当然の礼儀だと信じていました。

しかし、この一連の仕事を医師の日常生活の目線から考え直しましょう。ホスピスで働き始めた頃、朝8時から夜の8時近くまで働くのが常でした。この時点で既に週60時間です。

夜中の呼び出しに応じたときは、もう家に帰るのを諦めてソファーに体を横たえ、わずかな時間仮眠を取り、そのまま次の日の朝を迎えて仕事を始めることもありました。

休日であれば、まだ幼かった子供を連れて一緒に遊びに行っているときでも、呼び出しに応じていました。

「パパ、病院大丈夫?」といつでも子供は気遣ってくれました。時には、まだ遊びたがる子供たちを病院まで連れて行き、一連の仕事が終わるまで1時間程度、病棟で待たせることもありました。こうして私生活をなげうって家族も巻き込んで、患者の臨終に立ち会っていました。

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最終更新:8/4(金) 6:03
BuzzFeed Japan