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日本人は、なぜウェイトトレーニングを毛嫌いするのか?

8/4(金) 11:30配信

VICTORY

サッカー界のウェイトトレーニング

「柔よく剛を制す」という言葉は、多くの分野に浸透しています。日本人は、小兵が大柄な選手を倒す姿に美しさを感じることが多いようです。例えば、それは「平成の牛若丸」と呼ばれた元・舞の海関(現・舞の海 秀平氏)の現役時代の人気ぶりにも現れているでしょう。しかし、「柔よく剛を制す」とは万能なのでしょうか? ウェイトトレーニングで身につけた筋肉は、役に立たないのでしょうか? トレーナーであるFR氏にお話を伺いました(文:FR[ブロガー])。

「体幹トレーニングも重要だが、ウェイトトレーニングも重要だ」ということは、前回のコラムでもお伝えした通りだ。

サッカー用の体幹トレーニングに関する資料・情報であれば、メディア・書店など多方面でまとまった形のものを目にする。一方で、サッカー用のウェイトトレーニングについての資料や情報は、断片的に散らばりがちな傾向がある。

その理由は、国内サッカー界において体系的かつ組織的なウェイトトレーニングの指導体制が整っていないこと、そして事実とは異なる誤ったトレーニング情報(都市伝説)が多く広がってしまっていることが挙げられるだろう。

その結果、学生はもとよりプロ選手でも、ウェイトトレーニングの基礎ノウハウを驚くほど欠いてしまっているケースが多いように感じる。そこで今回は、その散らばりがちなサッカー分野のウェイトトレーニングについて考察していきたい。

欧州サッカーでは、10代後半頃から本格的なウェイトトレーニングを開始し、選手の基礎筋力の向上を図るのが一般的だ。なお、ここで言う「本格的なウェイトトレーニング」とは、ビッグ3と呼ばれるベンチプレス、デッドリフト、バーベルスクワットおよび、瞬発力を爆発的に高めるハイクリーン等のクイックリフト種目を中心に据えたトレーニング計画を指す。
 
一方、日本サッカーでは、この年代の選手は様々な理由で「無駄な筋肉をつけてはいけない」と周りの人間に助言され始める。ジムや栄養サポートなどハード面でのトレーニング環境も十分には整っていないため、同年代の欧州選手のように鍛える機会は乏しく、多くの選手がその空気に流されてしまい、全体レベルとして彼らの基礎筋力は底上げされない傾向にある。
 
この点に関して「日本人は、筋肉が増えにくい体質だから仕方ない」と、まことしやかに語る者も少なくない。しかし例えば日本の高校・大学ラグビー選手らが、欧州プロサッカー選手を超えるほどの基礎筋力を身につけている現実を踏まえれば、「日本人は筋肉が増えにくい」という主張が事実に基づかない偏見であることは、もはや明白。人種の違い云々の話ではなく、ただ単に「本気でやってるかやってないか」の差でしかないのだ。
 
ところで、運動生理学のトレーニング五大原則の1つに「漸進性の原則」というものがある。これは、一定期間トレーニングを続けて体力・筋力が一定水準に達すると、同じ負荷のトレーニングでは効果を得られなくなるため、継続的に負荷を上げていく必要があるというものだ。つまり筋力・筋肉を増やすには、この原則に則って段階的にトレーニング強度を上げていくしか方法はないのである。
 
しかし日本サッカー界では、負荷をそのように段階的に上げていく意識は、概ね低い傾向にある。たとえば先日の天皇杯において、フィジカル強化した筑波大学の選手が現役Jリーガーを相手にコンタクトプレーで圧倒し、ジャイアントキリングを果たした試合等は、まさにその象徴的な事象と思われる。端的に表現すれば、それは「フィジカル強化に対する意識と努力の差が結果に表れた」とも考えられるのではないか。

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最終更新:8/4(金) 11:30
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