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OJTと徒弟制度の類似点 「学ばせ方」の費用対効果とは

8/5(土) 8:10配信

ZUU online

約87%の企業が「人材育成はOJTが中心」としているにもかかわらず、うまく機能していると答えた企業は約12%にとどまっている。

これは産業能率大学総合研究所が行った調査(2010年)で分かったもの。人に学ばせるというのは、思いのほか難しいのかもしれない。

■OJTがうまくいかないと感じる理由

同調査で企業が感じている理由としては、「指導者の時間の確保が難しい」に次いで「指導する能力が不足している」が挙がっている。

また2014年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表した「人材マネジメントのあり方に関する調査」では、入社3年目までの若年層の人材育成上の課題として、次の点が上位に挙がっている。

・業務が多忙で、育成の時間的余裕がない
・上長等の育成能力や指導意識が不足している
・人材育成が計画的・体系的に行われていない

いずれにせよ、人材育成にかける時間や育成力・システムに課題がありそうだ。

■「学ばせ方」の歴史的背景

人間の長い歴史の中で、学校ができてから現在までの時間はまだわずかだ。学びの中心である学校ができる以前は、世間では徒弟制度が取られていた。師匠の仕事を日常的に観察し、仕事の内容を知る。いわゆる「見よう見真似」の学びかただ。

この仕組みを、教育学では「正統的周辺参加(ligitimate peripheral participation:LPP)」と呼ぶ。弟子が行うのは、ボタン付けなど、たとえ責任の軽い作業でもれっきとした業務。小さな業務からやがて大きな業務へと、弟子の成長に従って進んでいく。周辺から正統的に参加しながら伸びていくのだ。

ここには、教え手・学び手の概念はほぼ存在しない。ある部族の子どもたちにこの素晴らしいカヌーは誰に教えてもらって作ったのかと聞くと、「教える」という言葉の意味が通じなかったらしい。まさに「技は見て盗め」を象徴したようなエピソードだ。

産業化が進むと、人的資源を増やすために、師匠が意図的にスモールステップを踏ませ、習得を援助するようになる。徐々に、教える・学ぶの関係性が見えてきた。師匠は弟子に足がかりを与えて、成長させる努力をする。

こういった一連の徒弟制度の仕組みは、現代でいうところのOJTに似ている。

教育史上では、もっと多くの人数に知識・技能を伝達する必要が出てくると、教える側は前に立って一斉指導するようになる。これが学校の芽生えだ。今日でいえば、新入社員研修や管理職研修など、大勢を集めて行うのが例として挙げられよう。テーマ別の研修や世代別のキャリア研修もこの部類に入る。要するに、何か特定の知識を大勢に知ってほしい時に、学校の方式は活躍する。

■見て学ばせる徒弟制度の特徴

見て学ばせる徒弟方式は、実践的な技能の他にも思わぬ産物がある。それは、師匠の人格や仕事に対する姿勢も伝達できるところだ。また正統的周辺参加は弟子の役割理解にも役立つ。新参者は孤立しやすいが、何か仕事を受け持つことで、まだ慣れない場所での承認欲求も満たされる。

現代のOJTとして考えれば、OFF-JTのように外部に経費をかけずに済む分、費用対効果の高い仕組みだともいわれている。実際、厚生労働省の「能力開発基本調査(平成28年度)」によると、正社員に対してOJTを重視する又はそれに近いとする企業は74.6%と非常に高い。

■徒弟方式と学校方式の違い

徒弟方式と学校方式は明らかに性格が違う。徒弟方式では、自分で見て学んでいかなければならない。だが学校方式では、一応席にさえ座っていれば教え手の話は聞こえてくるし、ぼっとしていても評価に悪影響も少ない。一斉に教えられ学校方式は効率性が魅力だが、リターンは不確かなところもある。

その点、徒弟方式は費用対効果も得られやすく魅力的だが、もし答えを教えられることに慣れた子どもたちが急に徒弟制度の時代にタイムスリップしたとしたらどうだろうか。教えてくれる人はおらず、教えられることを前提にしていると、せっかくの費用対効果は激減してしまう。

幼児期、我々は何でも見て聞いて学んでいた。言語は誰かに教えられずとも習得できたし、自転車も何度も転びながらできるようになった。本来、自分で学びとる力は持っているはずだ。ただ、教えてもらうことに慣れすぎると、そのアンテナは鈍くなってしまうのかもしれない。

■従来のOJTと若年層の学習姿勢のズレ

「上長等の育成能力や指導意識が不足している」「人材育成が計画的・体系的に行われていない」ことが問題として考えられているが、実は学び手と教え手の感覚のミスマッチも考えられるという。

従来からのOJTは徒弟制度に見られる「見て学べ」精神が色濃く出ていた。見て学んで、やってみて、トライ&エラーの中から自分の中で理論化していく。これを、博報堂 <2433> で人材開発に取り組むマネジメントプランニングディレクターの白井剛司氏は、「演繹的経験学習姿勢」と呼ぶ。

反対に最近の若者は「帰納的経験学習姿勢」をとる傾向にあるという。誰かに教わってからやってみて、経験を通して理論を確認し力にする。これはまさに学校方式だ。

もしかすると、教え手と学び手のズレや「学ばせ方」に対する考え方の差は、徒弟方式と学校方式の違いにヒントがあるのかもしれない。(ZUU online編集部)

最終更新:8/5(土) 15:40
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