ここから本文です

「LaTeX」のメニューはどこにある?――“Office 2016”の新機能が見当たらない、再び

8/5(土) 9:55配信

@IT

●「LaTeX」メニューが見当たらないんだけど……

 最近、Word、PowerPoint、OneNoteが「LaTeX」の数式入力に対応したというニュースが幾つかのIT系メディアで報じられました。LaTeX(TeX)はテキストベースの組版や数式を得意とするとても古い組版処理システムです。

現状、LaTeX構文のリボンメニューを利用できるのは、Current Channel(最新機能提供チャネル)のバージョン1707(ビルド8326.2058)以降に更新されたOffice 365サブスクリプション製品のWordだけ

 これらのニュース記事は、まず間違いなくMicrosoftの公式ブログでの以下のアカウンスがニュースソースでしょう。

 公式ブログ(英語)のアナウンスを日本語化してニュース記事にするというのは、最近よく見掛ける手法ですが、確認に基づいていない記事はさまざまな臆測や誤解を生む危険があります。

 Officeアプリケーションの新機能の場合、Officeの新機能の提供形態や更新チャネルを正しく理解していないと、アナウンスの内容を正しく伝えることができず、ユーザーにあらぬ期待や誤解を与えてしまうことになりかねません。

 今回のLaTeXの数式入力の件もそうです。「いつ利用可能になるの?」「日本語版には提供されないの?」「最新バージョンに更新されているはずなのにメニューが見当たらないんだけど……」という疑問を持つユーザーが必ず出てくるはずです。

 先に言っておくと、この機能は少なくとも筆者のデスクトップ上のWordでは、2017年7月末の時点で利用可能になっていました(画面1)。2017年7月末(日本では7月28日)にOutlookの脆弱(ぜいじゃく)性に対策するための定例外のパッチがリリースされましたが、そのパッチを含むクイック実行(Click-To-Run:C2R)版Officeの更新バージョンで、LaTeXの数式入力の機能がWordで利用可能になりました。利用できないのだとしたら、次のいずれかのOfficeを実行しているのでしょう。

――
・Office 365版のOffice 2016ではない
・Office 365版のOffice 2016だが、Current Channel(最新機能提供チャネル)ではない
・Office 365版のOffice 2016のCurrent Channel(最新機能提供チャネル)だが、最新バージョンにまだ更新されていない
――

●新機能はまず、Current ChannelのOffice 365アプリに提供

 Windows版Office 2016アプリケーションの新機能は、「Office 365サブスクリプション製品のOffice 2016」に対して提供されます。永続ライセンスであるパッケージ製品の「Office Professional 2016」「Office Home & Business 2016」「Office Personal 2016」や、「Office Professional Plus 2016」のようなボリュームライセンス製品、MSDN(Microsoft developer Network)サブスクリプション版には、最新バージョンに更新されていたとしても新機能が継続的に提供されることはありません。

 新機能はまず、更新チャネル「Current Channel」(日本語では「最新機能提供チャネル」)に対して提供され、段階的に「Deferred Channel」(日本語では「段階的提供チャネル」)に提供されます。

 また、Current Channel向けの機能が数カ月後に、そのままDeferred Channelに対して提供されるのではなく、Deferred Channelに提供予定の新機能は「First Release for Deferred Channel」(日本語では「段階的提供チャネルの初回リリース」)に対して提供され、おおむね、その4カ月後にDeferred Channel向けにリリースされます。注意点は、最新のCurrent Channelの機能と最新のFirst Release for Deferred Channelは同じバージョンではない(同じ新機能を含むわけではない)という点です。

 LaTeXの数式入力機能は、Office 365のCurrent Channelに対して、2017年7月27日付リリースの「バージョン1707(ビルド8326.2058)」から利用可能になりました。このことは、以下のリリース情報の「Current > 2017 > July > Version 1707 > Word: Feature updates > LaTeX syntax(LaTeX構文):Create and edit math equations using LaTeX syntax」を参照で確認することができます。

 自分が利用しているWordでLaTeX構文を利用できるかどうかは、Wordの「ファイル」→「アカウント」メニューを開き、サブスクリプション製品で、かつバージョン1707(ビルド8326.2058)以降に更新されているかどうかで確認できます。最近追加された新機能については、「新機能」をクリックして確認することもできます。なお、新機能が提供されることのないOffice 2016を利用している場合は、「Wordのバージョン情報」の下に「新機能」の項目は表示されません。

 アイコンの挿入とSVG画像(SVG images)の新機能は2016年12月にCurrent Channelで利用可能になり、それ以外の更新チャネルには提供されていないと説明しました。これらの機能は、2017年6月リリースのFirst Release for Deferred Channelのバージョン1705(ビルド8201.2102)でも利用可能になりました。その4カ月後の2017年10月頃にはDeferred Channelでも利用可能になるはずです。

●PowerPointとOneNoteも対応しているけど、その使い方はかなりトリッキー

 Office 365のリリース情報では、LaTeX構文を使用できるのは、バージョン1707(ビルド8326.2058)以降のWord 2016だけですが、公式ブログのアナウンスによると、トリッキーな方法ですが、PowerPoint 2016とOneNote 2016(ストアアプリのOneNoteではなく、デスクトップアプリのOneNote 2016)でも使えるようです。

 これらのアプリケーションには、Wordのような「LaTeX」リボンメニュー(「数式ツール」→「デザイン」)は現状、用意されておらず、複雑なキーボード操作で行う必要があります。

 実際にやってみました。OneNoteでは何とかそれらしくできましたが、PowerPointの方はうまくいきませんでした。LaTeXを常用している人であれば、別の使い慣れたLaTeX(またはTeXなど)環境があると思うので、ここまで苦労してLaTeX構文で数式を入力したいと思う人はいないでしょう(PowerPointやOneNoteには、LaTeX以外にもさまざまな数式入力方法があります)。

●Office 365のSemi-Annual Channelが2017年9月から始まります

 Office 365のサービスモデルの名称やサポートポリシーが、これまで何度か変更されてきており、2017年9月からはWindows 10とそろえられた新しいモデルに移行します。

 更新チャネル(更新ブランチ)の名称変更に加えて、日本だけの日本語名称もあり、何がどうなっているのか理解するのが困難なことは、本稿を見てもお分かりかと思います

 Windows 10 Creators Update(バージョン1703)のCBB向けリリースが、CBBとしてではなく、新名称の「Semi-Annual Channel」として2017年7月に提供されました。また、Office 365における新しいサービスモデルの開始が、2017年9月に「Semi-Annual Channel(Targeted)」から始まり、別のチャネルを含め、当面の予定が公表されました。

 なお、Windows 10のUI(ユーザーインタフェース)やポリシー設定、管理ツール(System Center Configuration ManagerやMicrosoft Intune)の表記は、CB/CBBのままです。今後、UIの表記が変更になる予定があるのかどうかは分かりません。Office 365については、これまでの変更がUIやポリシー設定、管理ツール(Office 365ポータル)に段階的に反映されてきた実績があるので、Semi-Annual Channel表記に変わっていくと予想しています。

●筆者紹介
○山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門-完全版』(日経BP社)。

最終更新:8/5(土) 9:55
@IT