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ICBM、高まる脅威=国際社会打つ手なし・北朝鮮〔深層探訪〕

8/5(土) 8:24配信

時事通信

 北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)を28日深夜に発射し、「奇襲発射能力」(金正恩朝鮮労働党委員長)を誇示した。高度や飛行時間など性能の向上も見せつけ、「米本土全域が射程圏内にある」(同)と主張。ICBMの脅威をさらに高めた形だ。日米は独自制裁で対抗するが、北朝鮮のミサイル開発は止まらず、国際社会は打つ手がない状況に陥っている。

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 ◇米主要都市が射程
 「ロサンゼルスやデンバー、シカゴなどの主要都市を優に射程圏内に収める」。米軍事専門家デービッド・ライト氏は、科学者組織「憂慮する科学者同盟」のウェブサイトでこう警告した。

 ライト氏は「通常軌道で撃った場合、射程は1万400キロ程度になる」と分析。東方向に発射すれば、地球の自転の影響でさらに飛距離が伸びるという。「弾頭部に搭載する爆弾の重量がより重ければ飛距離は落ちる」としつつも、今回のICBMが東海岸の大都市ニューヨークにもぎりぎり届く性能を持つと説明する。

 朝鮮中央通信は29日、今回のミサイルは通常の発射より厳しい条件下で弾頭を大気圏に再突入させたと説明。弾頭の誘導を正確に行い、「数千度の高温でも安定を維持し、核弾頭の爆発装置が正常に作動したことが確認された」と強調した。

 核弾頭を運ぶICBMは、核を大気圏内に再突入させ、爆発させることが必要だ。ただ、高橋杉雄・防衛省防衛研究所政策シミュレーション室長は「5%でも(米国の都市上空で)核爆発すると考えられれば、北朝鮮の核は既に(対米)抑止力になっている」と説明する。

 ◇関係国の隙につけ込む
 「無謀で危険な行為だ」。トランプ米大統領は28日、声明で発射を非難した。トランプ氏は就任前の1月2日、自身のツイッターで北朝鮮のICBM完成をめぐり、「そんなことは起こらない!」と書き込んでいた。だが、開発が中止されることはなく、米政府は北朝鮮のミサイルがICBMであると認めざるを得ない状況に追い込まれた。

 日米は独自制裁を強化し、中国の銀行や企業を資産凍結の対象に追加した。対話姿勢を見せていた韓国も文在寅大統領が独自制裁検討を指示。いずれも中国政府に北朝鮮への影響力を行使させる狙いだ。

 だが、ロイター通信によると、中国税関総署は6月の中国から北朝鮮向けガソリン輸出が前年同月比30%減だったものの、前月比では58%増えたとするデータを公表。韓国紙・朝鮮日報は、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の分析として、ロシアから北朝鮮への石油輸出が大幅に増加していると伝えた。

 中ロ首脳は今月4日、モスクワで会談し、北朝鮮に核・ミサイル開発の停止を求めると同時に米韓が軍事演習を中止する必要があるとの認識で一致した。北朝鮮との友好関係を強めるロシアは、4日のICBM発射に対する安保理制裁決議にすら難色を示している。国際社会の隙につけ込み、北朝鮮はミサイル開発を着々と進め、脅威を高めている。(ワシントン、ソウル、北京時事)

最終更新:8/5(土) 9:13
時事通信