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なぜ銀行は債務超過の借り手を支えるのか?

8/5(土) 20:15配信

投信1

債務超過というのは、「資産を全て売却しても負債を全部返済することができない」状態を言います。通常、そうした会社に対する貸し手は「他の貸し手が返済を受けてしまうと、自分が返済を受けることができなくなってしまう」と考えるので、「他の貸し手が回収する前に急いで貸出を回収しよう」とします。こうして全部の貸し手から返済要請が来ると、全部は返せませんから、倒産することになるわけです。

しかし、場合によっては、銀行が回収を急がず、したがって借り手が直ちには倒産しないことがあります。今回は、銀行が回収を急がない事情について考えてみましょう。

景気の回復などが見込まれる場合

第一に、借り手の業況回復が見込まれる場合です。一時的な不況で債務超過になったとしても、景気が回復すれば黒字となり、債務超過が解消されると期待される場合には、急いで回収するよりも回復を待った方が得になるのです。「バブル期の投機に失敗して債務超過に陥っているが、本業が好調なので債務超過の解消は時間の問題である」、といった場合なども同様です。

第二に、銀行が評判を気にする場合です。「あの銀行は冷たい」と思われると、他の借り手が逃げて行き、他行から借りるようになってしまう可能性があるのです。当該借り手との関係だけを考えれば、回収した方が得でも、銀行全体を考えれば回収しないで借り手が少しでも長生きできるように見守ることが必要なのです。

急いで回収するより待った方が回収額が多そうな場合

第三は、「貸出の回収を待とう。その方が結果として回収できる金額が増えるだろうから」と考える場合です。そう考える背景には減価償却による利益とキャッシュの乖離があります。

銀行から100万円借りて機械(減価償却は10万円ずつ10年間)を買った会社が、「債務超過になりました。今後も毎年1万円の赤字の見込みで、回復の可能性はありません」と連絡してきたとします。銀行としては、「すぐに返せ」と言うと、借り手が機械をスクラップ業者に二束三文で売却することになり、銀行の回収額は非常に少なくなってしまうでしょう。

しかし、回収を待てば、毎年1万円の赤字を出し続けても、銀行は毎年9万円(10年間で90万円)回収できるのです。決算は赤字でも、キャッシュフローは黒字だからです。それなら、返済を待つインセンティブがありますね。

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最終更新:8/5(土) 20:15
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