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「稼げない」大学スポーツをどう変える? 小林至×池田純(前編)

8/5(土) 11:50配信

VICTORY

成長産業として大きな潜在能力を持つ大学スポーツ。その秘められた可能性を一気に現実のものとする試みとして注目されているのが、2018年度中の創設を目指す「日本版NCAA」だ。事前審議会である「大学スポーツの振興に関する検討会議タスクフォース」の座長を務めた江戸川大学教授の小林至氏と、明治大学学長特任補佐スポーツ・アドミニストレーターの池田純氏。「日本版NCAA」を推進する上で欠かせないキーマン2人にお話を伺った。

「課外活動には関知しない」これまで日本版NCAAがなかった理由

――小林さんが日本版NCAAに精通しておられるのは、文部科学省とスポーツ庁の審議会に関わっていたからです。政府がスポーツの成長産業化を目指し、創設に動いている日本版NCAAは、全国の大学スポーツを競技横断的・大学横断的に取り仕切る、従来はなかった統括組織となります。

池田純 小林さんが座長でいらしたんですよね?

小林至 なぜか突然、指名されまして(笑)。僕が呼ばれたのは日本版NCAAに議題を絞ったタスクフォースで、論点整理とフィジビリスタディ(実現可能性の事前検討)を受け持ち、親会議である「大学スポーツの振興に関する検討会議」(文科省とスポーツ庁の審議会)に提出したわけです。

池田 タスクフォースでは、どんな結論に?

小林 日本版NCAAはあってしかるべき。それが結論です。今までなかったのが不思議なくらい、という声も上がりました。なぜ、今までなかったのか――。その経緯は、タスクフォースの過程で明らかになっています。簡単に言うと、日本の大学というのは自主・自治の色合いがとても濃い存在でした。政府の干渉から、自主・自治を守る戦いを続けてきた。しかも、大学の部活動は課外活動という位置付けですから、統括団体や監督省庁などありえないという考え方です。

しかし、大学でもコンプライアンスが厳しくなっているこのご時世に、いかに自主的とはいえそうした活動を放っておくわけにはいかない。一昔前なら、大学は関係ない、これは課外活動だから、と言えたのかもしれません。今はもうそんな主張は通りませんよ。大学が部活動をきちっとコントロールしないといけない。そのための統括組織が必要なんです。それに大学生の学業支援という点でも、日本版NCAAには必要性があります。

日本の場合、学生アスリートの文武両道がなかなか出てきませんよね。本来であれば、日本という国を引っ張る各界のリーダーが、大学スポーツの世界からどんどん出てきておかしくない。ところが日本の大学の運動部には、スポーツだけをやっていればそれでいいという風潮が割と強いんです。大学生なんですから、学問にもしっかり取り組む。その支援、サポートを充実させるためにも、大学横断型の統括組織はあったほうがいいという話です。

池田 大学スポーツの産業化、ビジネス化についての議論は、どうなりましたか?

小林 必要なおカネは稼がなければいけない。そういう話になっています。

池田 日本版NCAA自体が稼いでいく、というお話に?

小林 稼いでいかなければならない、という話です。そもそも日本版NCAAがモデルとしているアメリカのNCAAも、ビジネスありきのスタートではなかったわけです。人気スポーツのアメリカンフットボールで怪我人が続出し、死者まで出した。ところが責任の所在が曖昧なので、誰も補償金を支払えない。そのため「大学さん、しっかりやってよ」といった声が、政府から上がりました。もうひとつの背景に、大学間の過当競争もありました。スポーツでの競争が激しくなりすぎて、学業の面で大学のブランドが毀損されてきた。そこで、当時のセオドア・ルーズベルト大統領が介入したわけです。

「政府にコントロールされたくなければ、自分たちできちんとしたルールを設けよ」と。そんな経緯で誕生したアメリカのNCAAですが、いろいろ仕事が増えていったのは、大学のいわば御用聞きをやっているうちにです。その結果として、あれだけ大きくなった。日本版NCAAも同じ順序になるでしょう。100年以上の歴史を持つアメリカのNCAAから様々なノウハウを輸入しながら、日本の大学が抱えている問題解決の御用聞きをしていく中で、徐々にビジネスが大きくなっていく。そんな順序です。

池田 小林さんが座長を務めたタスクフォースは、もう?

小林 解散しています。

池田 今後の議論は、親会議の審議会(「大学スポーツの振興に関する検討会議」)が引き継ぐんですか?

小林 新たに「産学官連携協議会」を立ち上げます。スポーツ庁が主幹です。

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最終更新:8/5(土) 11:50
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