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<宮笠作り>記者が挑戦 見た目より難しい伝統の技 岐阜

8/6(日) 16:34配信

毎日新聞

 岐阜県高山市の観光スポット「古い町並み」を散策していると、外国人観光客が帽子代わりに笠(かさ)をかぶっているのが目につく。同市一之宮町に江戸時代から伝わる宮笠というもので、日本文化に触れることができる土産物として外国人に人気らしい。それならばと、宮笠作りに挑戦してみた。【大竹禎之】

 私が訪ねたのは、高山市一之宮町の問坂義一さん(81)。まずは、簡単な宮笠の歴史を学ぶ。宮笠は江戸時代、主に農作業の時に日よけや雨よけなどのために使われてきたといい、農民が農閑期の冬場に副業として製作したのが始まりとされる。涼しくて雨にも強く、手入れ次第では10年ほど使用できる。この地域では一之宮町問坂地区を中心に昭和20年代は約100軒の農家が作っていたという。

 宮笠の材料は、赤茶色のイチイと白いヒノキだ。ダイコンのかつらむきの要領で厚さ約1ミリに薄く切り、幅約5ミリ、長さ60センチの短冊状に裁断したものを編み込んでいく。短冊状の薄い板は「ヒデ」と呼ばれ、水に浸して柔らかくする。

 問坂さんに実際に作ってもらう。ヒデが乾かないように時折水をかけながら、一心不乱に編んでいくと、徐々に美しい模様が浮かび上がり、笠が出来上がっていく。私もやってみよう。「3本残して次の3本を持ち上げて……」。ヒデを編み込む手順を教えてもらうが、うまくできない。こんなはずじゃない、と頭が混乱してすぐに手が止まる。初めは「基本は井桁状に交差させていくだけでしょ」と高をくくっていたが、そんな甘い考えは5分で打ち砕かれた。「ある程度自分で編めれば修正と仕上げをお願いしよう」と考えていた自分が恥ずかしい。結局、30分もたたないうちに白旗をあげた。

 問坂さんは6歳の時に父から宮笠作りを教わったという。父の作った宮笠が飾られた部屋で作業する問坂さんは「いまだに父を超える笠はできない」と話す。木の選定から伐採、ヒデに加工して笠の編み込みまでの一連の工程ができるのは、町で問坂さんただ一人になってしまった。2年ほど前から長男和彦さん(53)が編み方を、次男英樹さん(51)が材料作りを修業中だ。問坂さんは「あとは、兄弟でそれぞれ教え合いながら技術を伝えてくれれば」と期待を寄せる。

 町では、宮笠を残そうと、2010年に技術伝承者養成のための愛好会が結成され、現在23人が材料の製造工程や編み方の技術を学んでいる。江戸時代から脈々と受け継がれてきた伝統産業の火を消してはならない。

最終更新:8/6(日) 16:50
毎日新聞