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「日本版NCAAは儲け主義」という誤解。小林至×池田純(中編)

8/6(日) 11:51配信

VICTORY

「大学スポーツの振興に関する検討会議タスクフォース」の座長を務めた江戸川大学教授の小林至氏と、明治大学学長特任補佐スポーツ・アドミニストレーターの池田純氏が語る「日本版NCAA」の現在地と課題とは? アメリカNCAAをはじめ世界のスポーツビジネスに造詣の深いお二人の話はさらにヒートアップ。

日本の大学スポーツは、全体最適ができていない

――政府がスポーツの成長産業化を目指し、創設に動いている日本版NCAAは、全国の大学スポーツを競技横断的・大学横断的に取り仕切る、従来はなかった統括組織です。小林さんは江戸川大学教授を務めるかたわら、文部科学省とスポーツ庁の審議会「大学スポーツの振興に関する検討会議」の指名で、日本版NCAAの実現可能性を検討するタスクフォースの座長を務められました。日本版NCAA本体がおカネを稼ぐ取り組みとしては、全国の大学の各運動部や学生アスリートをデータベース化し、そのプラットフォームにスポンサーを募る会員ビジネスを想定している。その先の興行は、大学側が主体になる想定だというお話でしたが?

小林至 興行の支援はします。是非支援してほしいという考えの競技連盟が少なくないですから。野球の場合、東京六大学は支援不要かもしれません。その一方で「ウェブサイトの構築や、せめて告知や案内だけでも手伝ってもらえると助かる」と言う野球の学連(学生競技連盟)もあるんです。池田さんが指摘する隔たりのひとつは、大きな大学と小さな大学など大学同士の隔たりでしたが、競技連盟によっても日本版NCAAに対する姿勢は違います。アメリカンフットボールの競技連盟は、いの一番に手を挙げたいと意思表示するくらい日本版NCAAとの連携に前向きです。とはいえ、明治大学のアメリカンフットボール部の考えはまた違っているかもしれません。今はまだ、そんな段階だと思います。

――政府の方針では、日本版NCAAを平成30年度中(2019年3月まで)に創設する意向です。日本版NCAAがすぐに提供できるメリットとしては、プラットフォーム化による会員ビジネス以外に何があるのでしょうか?

小林 複数の競技連盟を括る、事務局機能の強化があります。現状でどんな問題があるかと言うと、例えばパラリンピックのスポーツは、個人の自宅が競技連盟の事務局だったりするわけです。健常者の大学スポーツでも、マイナー競技は少なからず似たような状態です。有力大学の熱心なOBの自宅が競技連盟の事務所を兼ねていて、本職は別に持ちながら、ボランティアで大会の案内や名簿の管理をしているわけです。こうした複数の事務局を日本版NCAAが一か所にまとめます。それだけで喜ぶ団体はありますし、様々な大会の数も増やせます。日本のスポーツ振興へ、事務局機能を強化するだけでも、だいぶ違ってくるでしょう。さらには法人化のお手伝いもしてあげる。現状の大学運動部はほとんどが任意団体ですから、法務、財務、安全管理などで責任の所在がはっきりしていません。

――法人格を持たないままだと、例えば団体名で銀行口座が開けません。金銭管理を個人の口座でやらないといけないわけですね。

小林 大学の運動部に必要なそうしたガバナンスの強化も、日本版NCAAが支援していきます。

――法人化支援の具体的な内容は?

小林 例えば、一般社団法人化に必要な登記手続きの代行です。日本版NCAAで弁護士や行政書士を雇えば、各団体のコストは格安で済むでしょう。

――日本版NCAAの組織には、そうしたスペシャリストが含まれてくるのでしょうか?

小林 そうです。アメリカのNCAAは全体で500人の職員を雇っていて、内部で様々なリーガル部隊を編成しています。日本版NCAAが提供できるもうひとつのメリットが、保険代理業務です。現状では、休日や祝日の活動で怪我や事故があった際、どの病院に行くか決まっている運動部は全体の4分の1程度しかありません。

池田純 この話でも、マンモス大学と小規模な大学では考え方が違うのだと思います。双方ともに制度のメリットを享受できるようにしていくには、十分なすり合わせが必要です。似ているのがプロ野球の放映権料で、とくにセ・リーグは話がまとまらない。最終的な、リーグで放映権をまとめたところの絵が共有されず、理解がバラバラなため、みんなで盛り上げて、回るおカネを大きくするのではなく、自分の持ち分が減らされてしまうのを避けるところから最初の話が進まない。放映権料30億円の球団が、なんで10億円の球団と一緒になって、平均化されなきゃならんのだという一つの事象にフォーカスされると、全体や最終目標、ファンにとっての最適な姿など、大きな議論よりも個別の事象に目がいき、それが障壁となってしまうからです。日本の大学スポーツは、個々の大学の全体最適ができていないし、学連は学連で様々です。学生が運営しているところや、手弁当のところも多いわけですから。

――現状ではバラバラな大学スポーツをまとめる、最大公約数的な制度を整えていくのが日本版NCAAの役割になるのでしょうか?

小林 最終的には、そうでしょうね。手弁当の話をすると、日本の大学の野球部員は、部費や寮費などで年間ウン十万円を個々が負担しているわけです。スポーツの普及のためにも、これをせめて半分にできないか。マイナースポーツの懐事情はもっと厳しい。大学のメジャースポーツと言っても、日本の場合はごく一握りじゃないですか。せいぜい野球、駅伝、アメリカンフットボール、ラグビーくらいで、この4競技だって、ほとんどの学生アスリートはおカネを払って続けてますよ。大学生のスポーツはそういうものだと片付けるのではなく、振興していけば、眠っている宝の山を掘り起こせるんじゃないか。おカネを作るだけが、大学スポーツ振興の目的ではありませんから。

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最終更新:8/6(日) 11:51
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