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AI企業へ舵切るヤフー、深層学習スパコン「kukai」の驚くべき“コスパ“[直撃インタビュー]

8/6(日) 20:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

Yahoo! JAPAN(以下、ヤフー)は6月19日、独自のスーパーコンピューター「kukai(空海)」でスーパーコンピュータの省エネ性能を競う世界的ベンチマークの1つ「Green500」で世界2位になったことを発表した。

【画像】ヤフーのスパコン「kukai」。スーパーコンピューターのシステムを丸ごと非導電性の特殊な冷却液(フロリナート)に浸して冷却する液浸冷却を採用している。

このkukai、あまり詳細に語られていない部分も多く、謎が多いスパコンだ。たとえば、日本の産業界ではまだ実用化の例が少ない、スパコンを丸ごと特殊な冷却液(フロリナート)に浸す技術“液浸冷却“を使っており、さらに技術実装には研究機関向けのスパコン開発で知る人ぞ知るスパコンベンチャー・PEZY Computing(東京都千代田区神田)の関連企業ExaScaler(エクサスケーラー)社が関わっている。

省エネ性能重視のスパコンをなぜヤフーが開発するのか? 予算規模は? そしてなにより、AI発展の起爆剤である深層学習に使うと公表している、その具体的な用途は何なのか? AIプログラマーの清水亮氏と、Business Insider Japanがヤフーのスパコン担当者を直撃した。

世界2位の“プライベート“スーパーコンピューター「kukai」、驚くべきその価格

ー今回のGreen500で世界2位、というニュースは、耳の早いIT業界の中でも「え? ヤフーがスパコン?」という反応だったと思います。

清水 ヤフーさんが「液浸冷却」という特殊なスーパーコンピューターに挑戦すること、それから社内に超高速の計算資源を持つ、ということが今回のニュースの重要なポイントだと思ってます。この「kukai」ですが、そもそも導入の検討はいつごろから始まったんでしょうか。

角田 検討は数年前から調査レベルですが、小さく行なっていました。本格的にプロジェクトがスタートしたのは、2015年の年末くらいです。

ーでは、まず「社内にスーパーコンピューターを設置しよう」というスパコンありきで検討が始まったんですか。

角田 当初はディープラーニングに向けた最適な環境を作ろうというところから、企画がスタートしていました。ディープラーニングに最適なプロセッサーというとGPUですから、GPUベースの環境を作ろうと。

その後具体的なシステム設計の検討に入っていくと、結果的にスパコンに近い構成になることが見えてきた。それで、「ヤフーらしい、良いスパコンを作ろう」というプロジェクトがスタートしたのが2015年末です。

ただ、当初は規模としてはかなり大きなものを想定していました。

ー その当初の大きなシステムっていうのは、どういった水準の性能をイメージしていたんでしょう?

角田 当初、想定していたのはですね、例えば東京工業大学さんの「TSUBAME2.5」のような規模のスパコンですね。

清水 え! あの規模のスパコンを民間企業が持とうとしていたということですか。

角田 そうですね。ですが、TSUBAME級のものをイチから作るとなると構築に非常に時間がかかってしまいます。世間の深層学習(ディープラーニング)や、AIの進展が加速度的に上昇してきている中で、何年後かに実働を始めるのでは遅すぎる。

我々はビジネス用途として使うという目的がありますから、どうしても費用対効果を考えた時に、スモールスタートで始める方がいいという結論になりました。そこで2016年8月ごろに、ダウンサイジングの方向転換を決め、そこから半年かけて、2017年の3月末に完成しました。

省電力性を競うGreen500へのチャレンジは、“ヤフーのスパコンの性能を客観的に示す指標になる“という意味でのチャレンジでした。

[TSUBAME2.5解説]

TSUBAMEシリーズは、2006年から東京工業大学が東工大のシンボルとしてバージョンアップを続けているスーパーコンピューター。2013年に登場したTSUBAME2.5は、当時、スパコンの処理速度ランキングTOP500で世界11位、省エネランキングであるGreen500で世界6位の性能。単精度演算の性能としては日本最速(当時)のスパコン。

清水 壮絶な話ですね。当初目標のTSUBAME2.5って、ウン十億規模なんじゃないですか? せっかくなのでぜひお聞きしたいんですけど、そこからダウンサイジングした「kukai」、一体どれくらいの予算だったんですか。

角田 ざっくり言って、4億円くらいです。

清水 4億円。それって、「スパコンの社内導入」ってことで考えると意外とリーズナブルじゃないですか。

角田 はい。この金額には、設備投資やExaScalerさんの液浸冷却システムを設置するにあたって必要な、データセンター側の工事や、保守費用も丸っと含めた金額です。

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