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「東京五輪への推薦状」第45回:湘南ユースFW和田響稀、「背中」で引っ張る新世代の暴れん坊

8/6(日) 8:28配信

ゲキサカ

 2020年東京五輪まであと3年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

「背中でチームを引っ張れる選手になってほしい」

 話は2年前のJユースカップにさかのぼる。湘南ベルマーレユースを率いる時崎悠監督は期待の1年生だった和田響稀について、そんな言葉を残していた。奔放に仕掛けていくプレーが魅力のアタッカーの才能は認めつつ、メンタル面での課題を指摘。その上でチームの思いを背負って戦い、ひたむきなプレーで周りの選手を支えられるような選手になっていければと期待を込めていた。

 逆に言うと、その時点ではまだ背中から思いが伝わってくるような選手ではなかったということでもある。そもそもリーダータイプにも見えなかった。

 だが、「男子三日会わざれば刮目して見よ」と言う。要するに「男の子は三日も会わなければビックリするくらい成長してしまうぞ」という話なのだが、ユース年代のサッカーを追い掛けていると、似たような現象に遭遇することがしばしばある。「見違えた」というやつだ。

 8月4日から福島県内で行われている「第6回福島復旧・復興祈念ユースサッカー大会」を取材していて久々に観た和田響稀に、まさにそんな思いを新たにすることとなった。湘南ユースと京都橘高の一戦。湘南の最前線にいる彼の姿を観ながら、「あれは和田響稀だよな……?」という戸惑いすら覚えてしまったほどだ。非公式戦なのでメンバー表の用意もないのだが、思わず望遠レンズを顔に向けて「あ、やっぱりそうだ」と確認してしまったくらいである。今年に入って彼のプレーを観るのは初めてだったので、余計にそう感じたのかもしれない。

 裏への鋭い飛び出しや切れ味のあるドリブル、怖さのあるシュートの感覚などはの強みはそのまま残っているのだが、雰囲気が明らかに違う。話す内容も、チームについての配慮や考えをにじませたものが先行していて、ちょっと変わったのは明らかだった。

 時崎監督もそうした「変化」を認める。「変わったと思います。3年生になって自覚が出てきた部分もあるんでしょうね。成長は僕らも感じています。行動にもプレーにも責任感が出てきた。後輩を導くというか、そういうことも自然と出るようになってきた」と言う。

 肉体的にもスケールアップした。1年生のころと比べると「体重も5kgくらいは増えた」そうで、当時の写真と見比べてみたところ、物理的にも「背中」の様子が変わっていた。相手に少々当たられても動じることなくプレーし、「背中」でチームを鼓舞して戦う力がある。1年生DFオグヴァーグ翔星は「(和田は)収めてくれるし、決めてくれるし、チームを安心させてくれる選手です。すごく頼もしい先輩」と、その背中を追って懸命にプレーしたことを明かしてくれた。

 和田もまた変化の理由について先輩たちの存在を明かす。「齊藤未月くんとか、石原広教くんとか意識の高い先輩方を観ながら、自分の行動が変わったのはある。広教くんからは『いまちゃんとやっておけば、絶対に将来に繋がるから』と直接言われたことがあって、それはすごく響きました」。

 トップチームで活躍する先輩たちから受けた刺激を糧にして成長し、次に目指すのは当然同じ舞台での活躍だ。トップに上がって活躍することに加え、「一緒に年代別の日本代表にも入っていきたい」。まず目指すのは2年後のU-20ワールドカップ。少しずつ成長してきた湘南の暴れん坊が、今度は日の丸を目指して走り出す。

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。

最終更新:8/6(日) 8:28
ゲキサカ

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