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寒い地域には産熱効率の高い痩せ型遺伝子が多いことを初めて実証

8/7(月) 15:10配信

MONOist

 九州大学は2017年7月19日、現代人において、遺伝子による体の産熱反応の違いを初めて実証したと発表した。同大学大学院 芸術工学研究院 研究員の西村貴孝氏、教授の綿貫茂喜氏、北里大学医学部 研究員の勝村啓史氏、准教授の太田博樹氏らの共同研究グループによるものだ(西村氏と勝村氏は研究当時の所属)。成果は同年7月17日、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。

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 筋肉の収縮を伴わずに熱を産生する生理反応を非震え産熱という。今回の研究では、男子大学生47人に、非震え産熱が起こる16℃の部屋に90分間滞在してもらい、産熱反応の指標となる酸素摂取量を測定した。

 次に、北里大学で被験者のDNAから各人のUCP1(uncoupling protein 1)遺伝子のタイプを分析し、酸素摂取量との関連を調べた。その結果、UCP1タイプと酸素摂取量が関連していることが明らかになった。特定のUCP1タイプが他のタイプより高い産熱能力を示すことも発見した。さらに、国際ゲノム情報データベースを調査したところ、このタイプの割合は、年平均気温が低い地域に住む人類集団ほど高いことが分かった。

 これまでUCP1は肥満との関連で知られていたが、今回の研究で、体に蓄えた脂肪を熱エネルギーに変化させやすい痩せ型のUCP1タイプである人の割合が、寒冷地域で高いことも分かった。

 同研究により、生理学的な産熱反応とUCP1遺伝子タイプとの明確な関連を世界で初めて示し、「産熱能力が高い遺伝子を持つことが寒冷地で生き残るのに有利だった」との推論を導いた。これは、UCP1の進化が人類の寒冷地進出を可能にした1つの要因であったとする仮説を支持する結果となっている。

 非震え産熱には、肥満の程度や褐色脂肪細胞でエネルギー代謝に関連するUCP1が関与することや、UCP1上の特定のバリエーションが高緯度/寒冷地域の人類集団に多く存在していることが先行研究で報告されている。これらはUCP1と人類の寒冷適応との関連を想像させるが、一部の人が持つUCP1のタイプが体の産熱反応に違いを生むかを実際に調べた研究はこれまでなかった。

最終更新:8/7(月) 15:10
MONOist