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Windows 10にアップグレードする前の“事前評価”が重要

8/7(月) 8:10配信

@IT

●Windows 7 SP1/8.1からのアップグレードも簡単に

 Windows 10の導入後は「サービスとしてのWindows(Windows as a Service:WaaS)」に基づいて、「品質更新プログラム(セキュリティ更新やバグ修正など)」と「機能更新プログラム(Windows 10の新しいバージョン、ビルド)」が継続的に提供されます。

アップグレード先のWindows 10のバージョンを選択するところ

 Windows 10の新しいバージョンへのアップグレードは、機能更新プログラムとして「Windows Update」やWindows Serverの「Windows Server Update Services(WSUS)」を通じて、通常の更新プログラムと同じように簡素化されたプロセスで行われます。

 従来は、クライアントPCのリプレースと同時に新しいバージョンのOSに移行する、あるいはアップグレードのためのプロジェクトを立ち上げ、アップグレード方法や移行スケジュールなどを検討し、計画的、段階的に実施するといった対応が必要でした。ビジネスの継続性を維持するにはWindows 10導入後も計画は必要ですが、要件によってはMicrosoftが用意した方法だけでコストをかけず、シンプルに行えるようになります。

 課題は、旧バージョンのWindowsを、どのようにしてWindows 10に移行し、WaaSの流れに乗せればよいのかということです。Windows 10は、Windows 7 Service Pack(SP)1およびWindows 8.1からのアップグレードインストールをサポートしています。少なくとも、最新バージョンであるWindows 10 Creators Update(バージョン1703、ビルド15063)までは、アップグレードのためのシステム要件は変更されていません。つまり、Windows 7 SP1やWindows 8.1から、これまでリリースされたWindows 10のバージョンをスキップして、最新のWindows 10 Creators Updateに移行することも可能です。

 なお、本稿執筆時点(2017年7月末)におけるCurrent Branch for Business(CBB)向けの最新バージョンは、Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607、ビルド14393)であり、2017年7月でWindows 10にアップグレードするのであれば、このバージョンで互換性や機能を評価した上でアップグレードするのが安心かもしれません。いずれにしろ、スムーズにWaaSに合流し、その後のアップグレードをしっかりと制御することが重要です。

 企業のクライアントPCのWindows 10へのアップグレードは、従来と同じように、Microsoftが提供する「Microsoft Deployment Toolkit」や「System Center Configuration Manager」、あるいはクライアントOSの展開に対応したサードベンダーのソフトウェア配布システムを使用して効率化することができます。

 Windows 10のアップグレードは簡素化されましたが、これにはWindows 7 SP1およびWindows 8.1からのアップグレードも含まれます。Windows Server 2012以降のWSUSを運用中であれば、WSUSクライアントとして稼働中のWindows 7 SP1/8.1コンピュータに、Windows 10へのアップグレードをWSUSで配布し、実行させることが可能です。

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●最新情報

 2017年7月27日(米国時間)、Windows 10 バージョン1703のCBB向けリリースが発表されました。リリース情報としては、今回のリリースから「Semi-Annual Channel」という表記と概念に変更になっています。

 新しい概念ではCBが「Semi-Annual Channel(Target)」(以前の発表時には(Pilot)でしたが変更されました)、CBBが「Semi-Annual Channel」(以前の発表時にあった(Broad)という表記は削除されました)。

 なお、Windows 10のUIやグループポリシー設定は以前のCB/CBB表記のままです。また、Windows 10 バージョン1703のSemi-Annual Channel向けリリースの発表と同時に、Windows 10 バージョン1511のサポートが「2017年10月10日」に終了することが発表されています。
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●旧バージョンからの移行の場合は、事前評価が重要

 Windows 10のアップグレードプロセスは簡素化されましたが、ハードウェアやアプリケーションの互換性問題など、アップグレードによる影響については事前に評価することが重要です。

 Windows 10のあるバージョンから次のバージョンにアップグレードする場合とは異なり、Windows 7 SP1やWindows 8.1からのアップグレードでは、特定のハードウェアの存在がアップグレードを阻害したり、アップグレードによって特定のアプリケーションが利用できなくなったりする可能性があります。

 さらに、Windows 10で削除されるOSの機能についても考慮する必要があります。業務が特定のOSの機能に依存している場合、Windows 10へのアップグレードでその機能がサポートされなくなると、業務に直ちに影響してしまいます。事前評価は、Windows 10にアップグレードしないと判断するためにも重要です。

 Microsoftは企業におけるWindows 7 SP1およびWindows 8.1からWindows 10へのアップグレードを支援するため、「Windows Analytics」というクラウドベースのサービスを無償提供しています。このサービスは、Windows 10 Anniversary Updateに合わせ、プレビュー提供が開始されたものです(当時の名称は「Windows Upgrade Analytics」でした)。

 Windows Analyticsは「Upgrade Readiness」と「Update Compliance」の2つのサービスで構成され、Upgrade Readinessは2017年3月から正式版となりました。Upgrade Complianceは現在、パブリックプレビューとして提供中です。

 Upgrade Readinessは、アップグレード対象のWindowsから収集したテレメトリーデータを分析し、アップグレードの準備状態に関するレポートと問題の報告、推奨情報を提供します。Windows 10にアップグレード後は、Upgrade Complianceを使用して、Windows 10の品質更新や機能更新の状況を追跡することができます。

 なお、Upgrade Readinessを利用するには、「Microsoft Operations Management Suite(OMS)」にサインアップする必要があります。OMSは、Windows ServerやLinuxにエージェントを展開してログを収集し、可用性やパフォーマンスを監視、分析する「Log Analytics」を中心に、プロセスの自動化やバックアップ、災害復旧対策、セキュリティ監視などの機能を備えており、単一のOMSワークスペースを用いたオンプレミスとクラウドの集中的な管理を可能にするクラウドサービスです。OMSには無料(Free)プランが用意されており、Windows Analyticsは無料プランで利用することができます。

 Upgrade Readinessを利用するには、アップグレード対象とするWindows 10のバージョンを指定し、ダウンロードしたUpgrade ReadinessスクリプトをクライアントPC上で実行するだけです。

 テレメトリーデータはクラウドにアップロードされ、その分析結果は24時間以内にOMSワークスペースにレポートされます。Upgrade Readinessスクリプトを少数のクライアントPCに手動で実行し、問題がなければグループポリシーなどを利用して、社内のクライアントPC全体に展開します。

●オンプレミスの管理サーバが不要になる、システム管理のクラウド化

 これまで、Microsoftはシステム管理ツールとして「System Center」製品群を提供してきました。企業におけるクラウド利用が進むのに合わせて、System Center製品にはパブリッククラウドサービスの「Microsoft Azure」を中心に、オンプレミスだけでなく、クラウド上のインスタンスやアプリケーションを管理する機能が追加されました。

 一方、Microsoftはオンプレミスのシステム管理基盤を必要としない、クラウドベースの管理サービスの提供も始めています。OMS(無料と有料プランあり)や「Microsoft Intune」(有料)」といったサービスです。Windows Analyticsのように、Microsoft Operating Management Suiteには新しい管理機能が次々に追加されます。

 企業のクラウド利用は進んでいますが、クラウドに向かないもの(例えば、専用ハードウェアが必要、クラウドの方がコスト高、法規制の関係など)は確かに存在します。システム管理系については、クラウドをうまく活用することで、オンプレミスの基盤を身軽にできるでしょう。オンプレミスの既存のSystem Center基盤がある場合は、OMSやMicrosoft Intuneで機能を拡張することもできます。

●筆者紹介
○山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門-完全版』(日経BP社)。

最終更新:8/7(月) 8:10
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