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<キャプテン翼>東外大シリア人留学生、アラビア語に翻訳 

8/7(月) 10:31配信

毎日新聞

 東京外国語大(東京都府中市)のシリア人留学生、カッスーマー・ウバーダさん(26)がアラビア語に翻訳した少年サッカー漫画「キャプテン翼」が、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで販売されている。出版元の集英社は翻訳版を非政府組織(NGO)などを通じて、欧州のシリア難民の子どもに贈った。

 ウバーダさんは2012年にシリアのダマスカス大の交換留学生として来日した。その後、シリアは内戦が激しくなり帰国が難しくなったため、東京外大の正規学生として入学し直した。現在、日本の教育制度などを学ぶ国際社会学部の4年生だ。

 キャプテン翼は1981年に集英社の週刊少年ジャンプで連載が始まった。イタリアやメキシコなど約20の国と地域で翻訳版が流通している。テレビアニメも各国で吹き替え放映され、サッカーファンの多い中東では人気が高い。ウバーダさんも幼いころからテレビを見て、主人公・大空翼をまねてヘディングの練習をしたという。

 翻訳はドバイに出店している紀伊国屋書店(東京都)が企画した。昨年6月に東京外大教授を通じて翻訳を打診されたウバーダさんは「光栄なこと」と快諾した。内戦や難民など「シリア人はかわいそう」というイメージを変え、自分が社会の一員として活躍できることも示したかったという。

 翻訳は「オリジナルを尊重」という条件が付いた。このため、中東地域では削除されることが多い酔っ払いが登場するシーンも残し「変わり者」という設定にしたり、3種類の字体を使って登場人物の感情を表現したりと工夫した。

 翻訳版は今年1月の発売開始から7月上旬までにドバイで3巻を発売し、計約1250冊を売り上げた。今後はエジプト、チュニジアなど中東・北アフリカのアラビア語圏で発売する予定という。

 一方、集英社は計3000冊を買い取り、一部をドイツやトルコのNGOなどを通じて欧州のシリア難民に贈った。ダマスカス大への留学経験がある中東研究者で、集英社に寄贈を頼んだ同志社大大学院の内藤正典教授は「言葉に尽くせない苦難を生きている難民の子どもの希望になってほしい」と話す。

 ウバーダさんも「母国の子どもが読んでいる間だけでも苦しみを忘れられたら」と願う。卒業後は日本で働きながら全巻を翻訳し、将来は翻訳の仕事を通じてシリアの復興や日本とアラブ諸国の懸け橋になりたいという。【賀川智子】

最終更新:8/7(月) 14:23
毎日新聞