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日本マイクロソフトがクラウド売上比率にこだわる理由

8/7(月) 14:53配信

ITmedia エンタープライズ

 「クラウド事業の売上比率が直近の四半期で47%になった。2年前に掲げた50%の目標をほぼ達成することができた」―― 日本マイクロソフトの平野拓也社長は、同社が先頃開いた2018年度(2017年7月~2018年6月)の経営方針説明会でこう語った。ちなみに、「直近の四半期」とは同社の2017年度第4四半期(2017年4~6月)、そして「2年前」とは平野氏の社長就任時のことである。

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 平野氏は2年前、「目指す企業像」とともに、ビジネス目標として当時の四半期で7%にとどまっていたクラウド売上比率を、2017年度内に50%にすることを掲げて社長に就任した。

 ただ、この「クラウド売上比率50%」というのは、日本マイクロソフトにとって経営上の予算ではなく、平野氏いわく「アスピレーション(強い願望)」だ。従って、今回47%と3%足りなかったものの、当時の7%から40%も引き上げたことで、アスピレーションとしては「ほぼ達成」との評価となったようだ。また、3%足りなかったのは、相対比率としてPCの売り上げが好調だったことが要因のため、平野氏の表情にも未達感は全くなかった。

 では、なぜ平野氏はクラウド売上比率50%にこだわってきたのか。理由は2つある。

 まず1つは、クラウド売上比率50%というフラグを掲げることで、日本マイクロソフトのクラウド事業を強力に推進するためだ。平野氏は、「米国本社がクラウド事業を推進している中で、2年前の日本のクラウド売上比率はグローバルで下位にとどまっていた。そこで目標を掲げて注力したところ、ほぼそれを達成できたとともに、グローバルでも先進的な立場になった」と話す。

 クラウド売上比率が2年間で40%も伸びた要因については、「働き方改革に取り組む多くの企業に、Office 365をはじめとしたクラウドサービスが受け入れられた。また、この2年間でパートナー企業との連携がスムーズにいくようになり、パートナー企業のクラウド事業に向けたアクティビティーが相当活発になってきた」ことを挙げた。

 こうしたことから、平野氏は日本マイクロソフトにおける2018年度以降の注力分野として、「“働き方改革”へのさらなる支援」「業種別展開の強化による“インダストリーイノベーション”」「デバイスの進化による“デバイスモダナイゼーション”」の3点を挙げ、これらを推進することによって「2020年にはパブリッククラウド市場でリーディングシェアを獲得したい」と宣言した。

●もう1つの理由は「変革」

 そして、平野氏がクラウド売上比率50%にこだわってきたもう1つの理由は、50%達成に向けた活動によって「日本マイクロソフトを変革する」ためだ。実は、同氏はこの点について今回の会見で自ら触れていない。そこで、まずはこの話の背景を説明しよう。

 さかのぼって、2017年1月に同社が開いた2017年度中間期にあたっての事業説明会。その場で平野氏は次のように述べた。

 「クラウド売上比率を50%にすることが大切なのではない。肝心なのは、50%になると当社自身がどうなるかだ。クラウド事業が全売上高の半分を占めるようになれば、導入されたお客さまに継続して使っていただくための努力がなお一層不可欠になる。継続して使っていただくために、お客さまとどう対話していけばよいのか。パートナー企業とどう協業していけばよいのか。そうした取り組みをメインストリームの事業としてさらに磨き上げていく必要がある。50%という数字は目標だが、私としてはそうした取り組みを、メインストリームの事業としてしっかり行っていけることをアスピレーションとして持っている」

 つまりは、クラウド売上比率が50%になれば、日本マイクロソフトをクラウドサービスプロバイダーとして強靱な体質の企業に変革できる、というのが平野氏の狙いである。

 今回の会見ではこの話への言及がなかったので、質疑応答で「クラウド売上比率がおよそ5割になって、日本マイクロソフトは変わったか」と聞いてみた。すると同氏は、「だいぶ変わってきたと思うが、まだまだ私自身思うところがあるので満足していない」と答えた。「思うところ」とはいったい何か。そう食い下がったところ、同氏は次のように答えた。

 「われわれのビジネス市場規模は、かつての「Windows 95」によるデスクトップからモバイルとクラウド、さらにはインテリジェントクラウドとインテリジェントエッジによるIoT(Internet of Things)へと、100~190倍に拡大している。その中でお客さまに最適な提案を行っていくために、やらなければならないことはまだまだたくさんある」

 そして、こう続けた。

 「IT業界はこれまでにも増して変革し続ける企業だけしか生き残れなくなってきている。われわれもそれを肝に銘じて、拡大するビジネス機会にどんどんアプローチしていきたい」

 もはや、クラウド売上比率50%を巡る話は、平野氏にとって経営変革への1つの通過点なのかもしれない。ならば、次はどんなフラグを掲げるのか、注目しておきたい。