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原発巣の種類により違う治療方法 転移性肺がん

8/7(月) 10:51配信

山陽新聞デジタル

 転移性肺がんの治療について、岡山済生会総合病院(岡山市)の片岡正文診療部長・呼吸器病センター長に寄稿してもらった。

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 転移性肺がん(肺転移)は、大腸がんや乳がんのように他の部位に発生したがん細胞が、血管やリンパ管を通って肺に到達し増殖した病巣のことを言います。全身の臓器からの血液は、静脈を介し肺の微小血管を通るため、他の臓器にできたがんが肺に転移をおこしやすくなります。

 肺に転移がおきた場合、流れてきたがん細胞は通常1個だけではなく複数の細胞だと考えられます。したがって肺に転移が多発したり、脳や骨など全身の臓器に転移をおこしたりする可能性が高くなるため、治療はまず全身化学療法が中心となります。最近、がん細胞の遺伝子や免疫に関連する新しい抗がん剤が続々と開発、承認され、以前より化学療法の選択肢が広がり、より良い効果が期待でき、副作用も少なくなってきています。

 一方、転移性肺がんでも病巣を切除することでより良い結果が得られる場合もあります。転移性肺がんの手術適応を決めるうえでThomfordの基準がよく用いられます=表。このうち3の「肺以外に再発・転移がないこと」に関してですが、最近ではPET/CT、腫瘍MRIなど全身転移のスクリーニング検査が発達し、CTやMRIなどの精度も上がり、小さな転移の発見が可能となってきました。これらの検査は逆に他には転移はないであろうという診断にも役立ち、転移性肺がんの手術を決める上で重要な検査となっています。

 肺への転移様式は原発巣のがんの種類によっても違いがあります。例えば胃がんや乳がんなどは肺転移が多発し、肺炎様に広がる特徴があるので切除の適応にならないことが多いのに対し、大腸がんでは肺転移の個数が少なく切除の適応を満たすことが多くなりますが、肝転移を伴う患者さんも多く、そのコントロールも重要な因子となります。当院で2002年から15年に行った転移性肺がん手術は196例で、そのうち大腸がんの患者さんが122人と62%を占めていました=グラフ。

 肺転移病巣の切除で原発性肺がんと異なるところは、切除範囲をできるだけ少なくすることです。これは肺転移が他の場所にも出てくる可能性があるため、切除範囲を少なくすることにより、再発時も再切除が行える可能性が高くなるからです。当院の経験では、大腸がん肺転移の手術を複数回(2回以上)行えた患者さんの5年生存率が80%と高く、再々発があっても再切除ができればよい結果に結びついています。

 また基準には当てはまりませんが、当院で大腸がんの両側の肺転移を切除した患者さんの60%以上の方が5年以上生存されており、両側でも転移の個数が少なければ切除の適応となると考えています。

 肺転移巣の切除の適応は患者さんごとに、全体の治療経過の中で有効かどうか、技術的、体力的に可能かどうかをそれぞれの臓器の専門家である主治医のチームと私たち呼吸器外科チームが十分相談し、患者さんや家族の希望を踏まえて方針を決めていきます。これには専門臓器や領域をこえた速やかで細やかな連携と、病院全体のがん診療に対する総合力や応用力が必要となります。私たちも常に進歩する他分野の治療を考えながら、転移性肺がんに対する手術の適応や方法を今後も継続的に進歩させていきたいと思います。

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 岡山済生会総合病院(086―252―2211)