ここから本文です

辻発彦監督の著書『プロ野球 勝ち続ける意識改革』から「西武の強さ」を読み解く

8/7(月) 12:00配信

ベースボールキング

後半戦は14勝4敗、あの黄金時代を彷彿とさせる強さ

 辻西武が強い。

「黄金時代の91年以来26年ぶりの12連勝」「西鉄時代以来59年ぶりの13連勝」

 そんな派手な見出しがスポーツ新聞を飾る2017年の夏だ。西鉄時代はあの伝説の鉄腕・稲尾和久が絶対的エースとして君臨、打線は豊田泰光や中西太といった野武士たちが猛威を振るった。

 日本シリーズ連覇の91年は秋山幸二・清原和博・デストラーデの“AKD砲”で計97本塁打(デストラーデは本塁打と打点の二冠)、さらに工藤公康は16勝3敗で最優秀勝率、郭泰源が15勝6敗でMVPに輝き、渡辺智男は防御率2.35で最優秀防御率のタイトルを獲得した。当時の小学生の間では『ファミスタ』でライオネルズ使用禁止のローカルルールができるほどの圧倒的な強さである。

 ちなみに『週刊プロ野球セ・パ誕生60年 1991年』(ベースボール・マガジン社)を確認すると、この91年オールスター第1戦の始球式は当時人気絶頂の若花田と貴花田の“若貴兄弟”が務め、リーグ優勝を飾った広島カープの4番打者西田真二は空席の目立つ本拠地でファンに向けて「広島市民球場にいらしてください」と現在の満員御礼が続くマツダスタジアムの風景からは想像できないようなコメントを残している。

 26年前、黄金時代真っ只中の西武ライオンズで「1番セカンド」を務め、名将・森祇晶監督がリーグ優勝決定直後に「MVPを僕が選ぶとしたら辻」と称賛の言葉を送ったのが現監督の辻発彦である。

 昨季は64勝76敗3分けだったチームが、辻体制の1年目は97試合で57勝38敗2分けの快進撃が続いている。西武を蘇らせた辻新監督はいかなる監督哲学を持っているのか? 今回はそのヒントが隠されている2012年8月に発売された『プロ野球 勝ち続ける意識改革』(辻発彦/青春出版社)という一冊の本を読み解いてみよう。

辻発彦が名将から学んだ「理想の監督像」の数々

 「もしも、自分が監督だったら、絶好のチャンスでヒットが出れば、身を乗り出して声をあげ、絶体絶命のピンチで投手が相手打者をピシャリと抑えれば、ついガッツポーズが出てしまうだろう。もちろん監督となれば、感情を押し殺して冷静に対処する必要があることは分かっているが、私は選手と一緒になって一喜一憂し、選手と一緒になって戦うタイプになるだろうと思っている」と自身の未来を予言するかのような記述も見られるこの本は、時期的に中日コーチを契約満了で一時退団した直後に書かれたものだ。

 辻は冷静沈着な落合博満監督のもとで二軍監督を務めていたときに選手との距離感を学んだという。「一歩引いて、ちょっと一呼吸置いて、ものをいうコツ」である。昔とは違い繊細な若い選手たちに「カ~ッときてもいきなり感情をぶつけるのではなく、一呼吸おき、アタマの中を整理してからものをいうように意識した」と中間管理職の鏡のような考えに辿り着く。

 有望な若手選手がいると、時に手柄が欲しいコーチの間で取り合いになることもある。当然、それぞれ言っていることが違えば経験の少ない若者はパニック状態になってしまう。辻はまず選手本人の意向を確かめ、その上で各コーチ陣の話をまとめて指導の方向性を決定。結果が出なければ次は違う方法を試すやり方を徹底させた。「選手は自分で努力して、勝手に成長する。コーチはその手伝いでしかない。ヒントを与えて、あくまで成長の手助けをするだけ」というスタイルである。

1/2ページ

スポーツナビ 野球情報

MLB 日本人選手出場試合9/24(日) 21:50