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北海道初の農業水路で小水力発電、売電収益で農業を守る

8/8(火) 7:10配信

スマートジャパン

 北海道旭川市および上川郡当麻町に位置する「当麻永山用水地区」に、農業用水路を活用した小水力発電所「当永発電所」が完成した。北海道開発局の旭川開発建設部が国営かんがい排水事業のもとで建設した発電所で、旭川市内と土地改良区が北海道電力に売電を行い、その収益を用水路の維持管理費に充てる計画だ。農業用水路を活用した小水力発電所は、道内で初の事例になるという。

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 当麻永山用水地区は国営かんがい排水事業に基づく改良区だ。水稲、大豆、そば、野菜、トマト、スイカなどの生産が定着している。一方で農業水利施設の多くは、建設以来30年以上を経過しているものが多く、さらに凍害などによって老化が進行。漏水や分水位の低下などで安定した用水供給が困難になることを防ぐための改修費が増大していた。

 さらに、電気料金の上昇などもあり、同地区における施設の適正な管理は難しい状況にあった。そこで既存の農業用水路を活用した小水力発電所を建設し、売電収益を活用して維持管理費の低減を図ろうという狙いだ。

 旭川建設部によると、2016年5月時点までに全国65地区で農業用水路を利用した小水力発電が行われている。一方、北海道内には多くの農業水利施設があるものの、小水力発電の導入が進んでいない。冬期はほとんど農業用水を使用しないため、施設の稼働期間が限定されているためだ。稼働期間が短いと年間発電量が見込めないため、事業採算が採りにくい。

 そこで今回は、かんがい期間の前後に新たに発電用水利権を確保することにした。通常の5~8月の水田かんがい期間に加え、4月及び9~11月の非かんがい期間の発電用水利権を取得した結果、年間を通じて十分な発電量を得られるめどが立った。1年のうち約8カ月間稼働する計画だ。

水路に改良を加えて発電量アップ

 「当永発電所」は石狩川に設置してある大雪頭首工から取水した後、導水幹線用水路を流下する過程で発電を行う。流水はかんがい期間は農業用水として利用し、非かんがい期間は石狩川に放流する。

 発電所の最大出力は139kWで、最大使用水量は6.25m3/s、年間発電量は70万8000kWh(キロワット時)を見込んでいる。FITを利用して売電することで、年間2000万円以上の収益が得られる見込みだ。

 当初の水路の落差は1.5m程度だったが、落差工の統廃合や水路敷高を上げることにより、総落差を3.5mにかさ上げし、発電量の増強を図った。損失落差を差し引いた有効落差は3.15mである。

 水車にはS型チューブラ水車を採用した。上流から取水した水で主軸とつながるランナベーンという装置を回転させる。これにより主軸が回転することで発電機が稼働し、電力を生む仕組みだ。

 既設の農業インフラを利用した小水力発電を活用が、維持管理コストの低減につながるメリットは大きい。さらに、それによって土地改良区の賦課金が軽減されることで、農家経営の安定に寄与することも期待できる。