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分離プランやユーザー還元策の影響は? 3キャリアの決算を振り返る

8/8(火) 10:29配信

ITmedia Mobile

 夏商戦で相次いで新料金プランを導入した、NTTドコモとKDDI。第1四半期の決算では、その反響が明らかになった。一方で、Y!mobileブランドが好調なソフトバンクは、分離プランに対しては静観の構えを見せる。決算自体は3社とも増収。ドコモは減益、国内通信事業に限るとソフトバンクも減益となったが、転換期にあるモバイル市場で種まきという名の先行投資をしているようだ。その詳細を見ていこう。

【ソフトバンクのユーザー還元策】

●ドコモ、auともに分離プランはスタートダッシュに成功

 端末を「Galaxy Feel」と「arrows Be」の2機種に絞って、料金が1500円引きになる分離プランの「docomo with」を導入したドコモ。対するKDDIは、「auピタットプラン」「auフラットプラン」の2つを始め、Androidの全機種を対象にした。キャンペーン適用外になり、機種変更時に加入できないなど条件はあるものの、iPhoneユーザーもプラン変更で利用することは可能だ。

 docomo withとauの新料金プランは、どちらも端末購入に伴う割り引きがつかない、いわゆる“分離プラン”。端末価格はそのぶん上がってしまう一方で、割り引き(または安価な料金)は永続化する。ドコモはもともとが安価なミッドレンジ端末2機種に対象を絞ることで、auは4年割賦と下取りでの残債無料化を組み合わせた「アップグレードプログラムEX」で、それぞれ端末価格の負担感を軽減している。

 くしくも、時を同じくして分離プランを導入したドコモとauだが、スタートダッシュは順調なようだ。ドコモの吉澤和弘社長は、「実数は申し上げられないが」と前置きしつつ、「今の時点(7月27日)で30万弱」と語り、「ずっと1500円割り引きになるところが受けているのではないか」と好調の要因を分析した。7月11日時点で吉澤氏はdocomo withの契約数について、「20万弱で19万ぐらい」と語っていたが、2週間と2日で10万程度契約を伸ばした格好になる。

 docomo withについては、今後も継続していく方針。ミッドレンジモデルに機種を限定した形で、「docomo with対象端末として、1ないしは2機種を追加していきたい」(吉澤氏)と語っている。2016年の冬春モデルとして導入した「MONO」の後継機も「採用するかどうか、最終検討している段階」(同)。2016年は端末購入サポートを適用した状態ながら、一括648円(税込)という破格の端末価格を打ち出し話題を集めたMONOだが、冬春モデルとして導入される際には、docomo withの対象になる可能性は高そうだ。

 対するauは、新料金プランが大幅な伸びを示した。ドコモと違い、端末を限定していないこともあって「半月で45万を突破した」(田中孝司社長)。対象となるAndroid端末の売れ行きを伸ばす効果もあったようで、「Androidは新規、機種変更が対象だが、端末とともにご契約されるお客さまは約5割増。MNPも2倍増になっている」(同)という。

 田中氏が「どちらかというとMVNOへの流出抑止、リテンションを考えて望ましいプランとして作った」と述べていたように、auの新料金プランは、他社への流出を防ぐ効果が期待されていたが、現状では、それ以上の効果を発揮しているようだ。「割賦契約の84%に、アップグレードプログラムEXに加入していただいた」(同)と、端末購入の負担を軽くする施策が功を奏していることもうかがえる。

●収益に対してはマイナス影響、非通信領域の拡大を狙う

 一方で、ユーザーへの還元策はキャリアの収益にとって、もろ刃の剣でもある。KDDIはauピタットプラン、auフラットプランの導入にあたり、「今期で200億円ぐらいの還元額になると見積もっている」(田中氏)という。「だいぶ前から検討していたので、財務的には織り込み済み」(同)だが、影響は小さくないようだ。かつてドコモがカケホーダイ&パケあえるを導入したときのように、料金的にプラスになるユーザーが先行して申し込むと、そのぶん収益が予想を上回るスピードで落ちていく恐れもある。

 料金プランでは一歩踏み込んだように見えるKDDIだが、その背景にはドコモ系のMVNOや、Y!mobileの挟み撃ちにあい、ユーザーの流出が続いていたという事情がありそうだ。実際、KDDIが指標として公開している、傘下のMVNOを含むモバイルID数は、1年前の2574万から2603万に拡大している一方で、auそのもののID数は2558万から2496万人へと減少している。この状況を田中氏は「特に第1四半期は学割シーズンで、2月、3月、4月、5月と家族まとめて流出される方がいたため、よりインパクトが出た」と語っている。新料金プランには、ここに歯止めをかけたいという狙いがある。

 対するドコモは、「ドコモとしてのブランド純増で見ると、ほぼ横ばい」(吉澤氏)。MVNOについては、同社の回線を使うケースが多いこともあり、「MVNOが占める割合は高いことは事実で、一部では競争になるが、ソリューションにも使っていただける。IoTや監視制御の回線にも使っていただけるので、何ら危機ではなく、逆にビジネスチャンス」(同)と見ているようだ。純増数は約23万で、回線数自体は増えており、ドコモブランドとしても流出は大きくない。2016年からユーザー還元を積極的に打ち出したことが、効いているようだ。

 結果として、auの新料金プランに対しては、「ドコモのお客さまが動いていることは、今のところ考えられない。すぐにauピタットプランに追随することは考えていない」という。auピタットプランの段階制についても、「もう少し状況を見たうえで」(吉澤氏)と、すぐに対抗策を打ち出す必要性はないことを語った。第1四半期は同社の解約率が0.67%で、「引き続き低水準」(同)。対サブブランドという点では、「シンプルプランでドコモに残っていただく効果は出ていると思っている」(同)という。

●2社に対して静観の構えを見せるソフトバンクも「先行投資」は増加

 2社それぞれにY!mobileへの対抗策を打ち出される形になったソフトバンクだが、サブブランドのY!mobileを含めると、収益面だけでなく、純増数も好調だ。docomo withやauの新料金プランに追随するような料金プランは、「まったく考えていない」(ソフトバンク宮内謙社長)という。ソフトバンクグループの孫正義社長も「(docomo withやauの新料金プランは)分離プランということで、特段大きな値下げには実態としてなっていない。ユーザーが流れ込んでいるも認識していないので、必要ないのではないかと考えている状況」だと語った。

 宮内氏は、この理由を「従来やっている、Y!mobileとソフトバンクの2ブランド作戦でうまく差別化が演出でき、ユーザーにもフィットしているのではないか」と分析。実際、スマートフォンに限って見ると、第1四半期の純増数は45万で、前年同期比で61%の成長を示している。孫氏によると、解約率(ハンドセットに限る)も過去最低の0.79%に低下。指標の出し方は3社で異なる点は注意が必要だが、「初めて競合他社であるKDDIを下回った。これは快挙だ」(同)と自信をのぞかせた。

 解約率低下の理由は、市場環境だけでなく、SoftBank光に注力していることの効果も大きいという。一方で、そのソフトバンクも、国内通信事業だけを見ると、9%の減益になっている。これは、「いくつかの販売促進策を行っている」(孫氏)ため。まず、SoftBank光とモバイルのセット割である「おうち割光セット」は、「最初の2年はスマホの料金を値引く(額が大きい)」(同)。そのため、セット割が「増えれば増えるほど、特に最初の2年間の割引が先行して(収益にマイナスとして)出てくる」(同)という。

 ギガモンスターやSUPER FRIDAYといった、既存ユーザーへの還元施策も、収益率の低下につながったようだ。また、Yahoo!JAPANとのポイント連携や、ソフトバンク、Y!mobileの両ブランドで行っているYahoo!プレミアムの無料化も、「先行投資として、一時的に収益を圧迫している」(孫氏)。

 孫氏は「国内通信事業は5年、10年、20年という単位で見て、十分健全に成長させていくことができる。目先の利益を最大限にするより、少しでも顧客基盤を増やし、健全な先行投資ができる部分があるならしようと考えている」と語っていたが、ソフトバンクも3社やMVNOとの競争によって、ユーザー還元策の強化を余儀なくされている状況だ。総務省が2016年施行したガイドラインは、MVNOの振興を通じて、間接的に大手3社の料金値下げを促すのが狙いだ。3社が打ち出した分離プランやユーザー還元策、そして第1四半期の決算からは、その効果が徐々に出ていることがうかがえる。

最終更新:8/8(火) 10:29
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