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住吉市民病院、今年度末に閉鎖 難病の5歳児、転院先なく… 重症・長期「受け入れ困難」

8/8(火) 15:07配信

産経新聞

 平成30年3月末で別の病院と機能統合し、閉鎖される大阪市立住吉市民病院(住之江区)の入院患者のうち、閉鎖後の受け入れ先が決まらない難病の男児がいる。先天性の代謝異常疾患の一種「ゴーシェ病」を患う堺市の男児(5)。24時間体制の医療ケアが必要で長期入院している。同病院はこうしたケアが必要な重症児の病状が安定し、在宅や施設に移行できるまで預かってきた。しかし閉鎖に伴い、この役割が失われるとともに、他の病院も難色を示しているため受け入れ先が見つかっていないのだという。(南昇平)

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 今年3月の誕生日、男児は初めて堺市内の自宅に戻った。ベッドに寝たままで主治医らが同行。わずか3~4時間の滞在だったが、兄(8)は誕生祝いのケーキを食べさせるまねをするなど、弟とふれ合った。母親は「入院中は長男(兄)は弟とほとんど会えないので、うれしそうだった」と振り返った。

 ◆24時間医療ケア

 男児は生後5カ月ごろに呼吸が苦しくなる症状が始まり、その約1カ月後、唾液が気道に入って高熱を出し肺炎になりかけた。

 住吉市民病院に入院し、その後、肝臓と脾臓(ひぞう)が腫れる肝脾腫の症状が出たため、検査のため大阪市立総合医療センター(都島区)へ転院。国内では患者数が150人に満たない難病で、肝臓・脾臓の腫れや血小板の減少、骨病変などを引き起こす「ゴーシェ病」と診断された。

 男児は特に症状が重いII型で、進行が速く、体の震えやけいれんなどの中枢神経症状を併発。主治医の川又攻医師は「かなり重症で、24時間体制で医療的ケアが必要だった」と話す。

 1歳になる前にのどの気管を切開して呼吸器をつけ、胃瘻(いろう)で栄養をとっている。しかし進行を止める薬はない。強いけいれんで何度も骨折を繰り返し、痛みと闘ってきた。

 「起きているとしんどいようで、薬が効いて眠っている(男児の)顔を見て、いつも『がんばったね。ゆっくり眠ってね』と話しかけている」と母親。飲み込むことが困難なため、持続吸引で唾液の気管への流れ込みも抑えている。

 ◆他院にない特徴

 実は、住吉市民病院はこうした長期入院を必要とする重症児の病状が安定し、在宅や施設に移行できるまで預かっている。他院にはない特徴だ。

 ただ、30年3月に府立大阪急性期・総合医療センター(大阪市住吉区)と機能統合し閉鎖。府が国の同意を得た病床再編計画では、市民病院が担っている役割は、同センターと市民病院跡地へ誘致する民間病院が分担して対応することとされたものの、民間病院誘致の行方は不透明で、その役割の継承も見通しが立っていない。

 住吉市民病院関係者が男児の行き先を探しているが、大阪市立総合医療センターは急性期医療が主な役割であるため、長期入院は不可能。堺市の民間病院も最近になって「検討したが困難」と回答してきた。府立大阪急性期・総合医療センターも検討にとどまっている。

 ◆市長に訴え

 7月中旬、住吉市民病院を視察した吉村洋文市長に対し、母親は「この病院がなくなったら、この子は行くところがありません」と訴えたという。

 乳児のころ、医師から「短命だ」と言われた男児は、胃瘻を始めてから体が大きく成長した。幼い命は懸命に生きようとしている。

 両親や住吉市民病院関係者は「病院それぞれの役割は国が決めたことなので仕方ないとは思うが、市民病院は行政の都合でなくなるのだから、何とか受け入れ先が見つかってほしい」と訴える。

最終更新:8/9(水) 10:08
産経新聞