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とくダネ!がSNSの台風動画「返答なくても使用」、弁護士「違法とまではいえない」

8/8(火) 18:01配信

弁護士ドットコム

フジテレビの情報番組「とくダネ!」スタッフのツイッター公式アカウントが8月8日、台風5号による増水の動画投稿者に対して、返答がない場合でも動画を使用する旨のリプライしたことが話題になっている。

投稿者の男性は「滋賀の姉川氾濫してます!みなさん気をつけてください!!」と道路に大量の水が流れ込む動画を投稿。これに対し「とくダネ!」スタッフが8日午前5時に、

「周辺住民の方々への注意喚起および台風の被害を伝えるニュースの重要性に鑑みて、非常に公共性の高い映像であると認識しております」「午前7時30分までにご連絡を取らせていただけないでしょうか?また、午前8時の放送までにご返答がない場合、上記の理由により使用させていただきたく存じます」

と動画使用をお願いしている。ネットでは「頼み込んどいて自分で期限決めて返事なかったら勝手に使うって相当厚かましい」「承諾なしに他人の所有物を使用したら、それは無断使用だ」などと批判が集まっている。

最近、放送局が災害などのニュース発生時に、ツイッターのリプライで動画や画像の使用許諾を取ろうとする場面を見ることが多いが、許諾なしで使った場合、法的問題が生じるのか。最所義一弁護士に聞いた。

●風景などを撮影した動画も、著作権の対象の著作物

「今回の対象となった動画は、ツイッターに投稿されたものです。著作権法は、10条1項7号で、著作物の例示として「映画の著作物」を挙げています」

最所弁護士はそう切り出した。「映画」というと、映画館で上映されるようなものだろうか。

「『映画』というと、すごく範囲が限定されているようにも思えますが、実際には、2条3項に、『映画の著作物』に含まれるものとして、『映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする』とされています。

そのため、一般的には、いわゆる動画については、著作権法上の『映画』に含まれると考えて問題ないでしょう。これは、動画の場合、風景等を撮影したものであっても、その撮影アングルであるとか、フォーカスの当て方であるといった点に、創作性が肯定されるのが一般的だからです」

●動画は原則として無断使用はできない

では動画も著作物である以上、勝手に使ってはいけないのだろうか。

「はい。著作物としての保護の対象となる以上、著作権法上の例外に該当しない限り、著作権者に無断で使用することはできません。

例えば、今回のケースのように『ご返答がない場合、上記の理由により使用させていただきたく存じます』と書かれていたとしても、それ自体には何らの法的効果もありません。単に、返答がなければ勝手に使うと一方的に宣言しているだけのことです。

よく『返答がなければ、承諾したものとみなします』といったようなことをいう人もいますが、そもそも回答義務がないものについて、回答しなかったからといって、不利益を受けなければならない理由はありません。そのような一方的な主張は、法令上特別の規定がない限り、何らの意味もありません」

●ツイッターの規約はどうなっている?

今回の動画は、鍵のついていないツイッターアカウントに投稿された。公開で誰でも見られる状態だ。

「ツイッターの規約では、コンテンツの所有権がユーザーにあることを前提に、ツイッター社に対して、非独占的かつ無償使用することを許諾する内容が記載されています。その意味では、ツイッター社が提供するサービス上において、通常想定される利用については、ツイッターを利用する以上、許諾したとみなされるでしょう。

しかしながら、仮に許諾したとみなされたとしても、その範囲は、ツイッター社が提供するサービス上に限定されます。そのため、ツイッターのサービスとは直接の関係のない、テレビメディアでの利用についてまで、当然に許諾したということにはなりません。

したがって、著作権者の許諾がない以上、原則として、他人の著作物を無断で使用することはできないことになります」

●報道のための利用であれば、許諾を取らなくても認められる

今回は「とくダネ!」で台風の被害を伝えるニュースで、動画を使用したいということだった。

「今回、報道番組で動画が使用されています。著作権法41条が『時事の事件の報道のための利用』を認めていますので、今回の動画の利用が、同条によって認められる可能性はあります。

報道番組と動画の使用に関する裁判例に、TBSが報道番組内で『山口組五代目継承式』のビデオを無断で使用した事件についての判断があります。全体の長さが約1時間27分のビデオのうちの約4分間が使用され、原告が「著作物を放送する権利を侵害した不法行為に該当する」と損害賠償を求めた裁判でした。

大阪地裁は、結論として『時事の事件を報道する場合における、当該事件を構成する著作物を、当該事件の報道に伴って利用することに該当する』とし、利用についても、『報道の目的上正当な範囲内において利用したものと評価するのが相当である』と判断しています」

では今回のケースでも、「報道の目的上正当な範囲内」に当たるということか。

「現に発生している台風による被害の状況の報道する場合ということからすると、『時事の事件の報道のための利用』には該当しうると思います。

利用の範囲についても、番組出演者が画面の状況を見た上で、意見や感想を述べているという状況等も併せて考えると、被害状況を伝えるという報道の目的上、一応正当な範囲といえるのではないかと思います。

その意味では、今回もし許諾を取らないままに利用していたとしても、その利用を捉えて、直ちに著作権法違反とまでは言い難いと思います」

●とくダネ!のリプライは「一般的な常識とは相容れない対応」

ただ、今回に限らず、報道機関が災害時にツイッターで動画や画像の使用許諾を取る場面で、批判が集まることは度々ある。

「今回、番組の対応がインターネット上で、批判されているのは、番組スタッフの対応でしょう。お願いする立場の側が、短い期限を一方的に指定して、連絡がなければ使用しますというのは、一般的な常識とは相容れない対応だと言われてもやむを得ないと思います。

番組製作サイドからすれば、締め切りがあるので、どうにか間に合わせたいというのが本音なのだと思いますが、相手方の都合を考えずに、自らの都合を最優先していると受け取られてしまう可能性があることは認識すべきであったと思います。

仮に、著作権法上の例外に該当する場合であったとしても、まずは、著作権者の承諾を得るのが原則だと思います。

『危険な状態でやっとの思いで撮影されたであろう動画を、冷房の効いたテレビ局内にいるエリートが、インターネット上から簡単に探してきて、お願いする立場でありながら、自らの都合だけで一方的に短い非常識な期限を指定して、連絡がなければ勝手に使用すると宣言し、自らの営利活動に無断で利用した』

ツイッターを見ている人たちから、このように受け取られた可能性は非常に高いと思います。受け手にどのように捉えられるのか、その点について、配慮が足りなかった、そういった批判がなされることは、ある意味、やむを得ないと思います」

最所弁護士はそう指摘していた。

【取材協力弁護士】
最所 義一(さいしょ・よしかず)弁護士
東京大学農学部農業工学科(現生物・環境工学専修)を卒業後、IT技術者や病院事務職(事務長)を経て、弁護士に。一般企業法務や知的財産問題のほか、インターネット関連のトラブルの解決に精力的に取り組んでいる。
事務所名:弁護士法人港国際法律事務所湘南平塚事務所
事務所URL:http://minatokokusai.jp/office/hiratsuka/

弁護士ドットコムニュース編集部