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田中麗奈、ふがいなさに向き合い、エネルギーをもらった舞台

8/8(火) 11:10配信

朝日新聞デジタル

【私の一枚】

 3年前、明治座で初座長を務めた「きりきり舞い」という芝居の一シーンです。一緒に写っている熊谷真実さんは私の母親役で、このお芝居の間、まるで本当の母親のようにこまやかに気にかけてくださいました。芝居の型を見せてくれたり、食事を心配してくれたり、本当にお世話になりました。

【関連写真】2014年明治座での座長公演「きりきり舞い」に出演した田中麗奈さんと共演の熊谷真実さん

 このお仕事の話をいただいた時は正直とても驚きました。明治座という固定ファンの方が多い由緒ある劇場での大役です。経験豊富な先輩方もたくさん出演される中、私は最年少でしかも座長。それまでの人生の中でも本当に大きな出来事でした。

 プレッシャーがなかったと言えばうそになります。稽古では自分のふがいなさと向き合う日々でした。でも課題を一つひとつこなし、稽古から本番までの緊張感を経験することは役者として成長するためには避けられないことです。もし役者という道に進んでいなかったら、こういう刺激を受ける機会はそうそうなかったかもしれない。刺激や勇気をもらえて、自分が「生きてる!」という実感を得られる貴重な経験だと思っています。

 この時、私は30代でしたが、10代の役を演じるにあたり、とにかく元気に演じようと心掛けました。本番中はもちろん、舞台が終わってからみんなで食事に行った時にも、よく飲んでよく食べて、さらに元気になっていたんですね。そのおかげか、先輩たちから「うちの座長、とにかく元気だから」とおっしゃっていただきました(笑)。

 いま思えば、私は本番で元気をもらっていたような気がします。舞台に立って大きなライトがパッと顔にあたると、それがまるで太陽の光であるかのように、すごくエネルギーを感じるんです。さらに1000人を超えるお客様の熱気を受け、「今日はこのお客様を絶対幸せにしよう」という気持ちになった。そんな忘れられない日々でした。

 私はいつも心の中に自分のことを否定する自分がいて、私自身のことをとても厳しく見ているのですが、そんな自分がこの明治座公演の時は、技術的なことはまだまだとはいえ、自分に合格点をあげられた、すばらしい公演になったと思っています。

 明治座でお芝居をしていたころ、意識していたことがあります。お亡くなりになった中村勘三郎さんの芝居がとても好きだったんです。本当に一生懸命で、走っても汗をかいても、ライブ感があって目が離せず、ずっと見ていたい。私も、芝居はもちろん、その汗や涙、たとえ呼吸があがってしまっても、それを丸ごとお客様に楽しんでいただけるような役者になりたいと思います。

    ◇

たなか・れな 女優。1980年福岡県生まれ。98年高校在学中にサントリーのジュース「なっちゃん」の初代CMキャラクターに。その後、映画「がんばっていきまっしょい」「暗いところで待ち合わせ」「夕凪の街 桜の国」、舞台「思い出トランプ」、ドラマ「真昼の悪魔」など多くの話題作に出演。

◆田中麗奈さんが出演する舞台、ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』 Season風 Produced by TBSの公演が9月15日から11月3日まで開催される。“花・鳥・風・月”4シーズン連続公演の一つ。戦国の世を舞台に信長の家臣たちの復讐(ふくしゅう)が描かれる作品。“Season風”は、主役の松山ケンイチが一人二役に挑む。作:中島かずき、演出:いのうえひでのり、出演:松山ケンイチ、向井理、田中麗奈、橋本じゅん、山内圭哉、岸井ゆきの、生瀬勝久、他。

「劇団☆新感線は、私の憧れの劇団。いのうえ歌舞伎のかっこよさにまいってしまい、観客の一人として楽しんでいました。“Season花”と“Season鳥”を拝見しましたが、“花”は非常にエンタメ性の高い舞台に、“鳥”は歌あり踊りありの華やかな舞台になっていました。今回の“Season風”は、過去の髑髏城を踏襲する正統派の内容で、私は極楽太夫という役を演じます。“花・鳥・風・月”、それぞれに太夫の役がいますが、田中麗奈なりの太夫が演じられたら幸いです。“Season花”と“Season鳥”をすでに観ていただいた方にも、新鮮に観ていただけると思いますので、ぜひ楽しみにしてください」

(聞き手 田中亜紀子 / 朝日新聞デジタル「&M」)

朝日新聞社