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ハードが大きいスポーツ選手に どんなソフトを入れていくか 長友佑都×池田純《前編》

8/8(火) 17:00配信

VICTORY

明治大学を卒業後、プロのサッカー選手となり、現在はイタリアの名門インテルで活躍する長友佑都選手。横浜DeNAベイスターズの社長を退き、明治大学スポーツアドミニストレーターなど複数の役職をこなす池田純氏。2人にこれからの大学におけるスポーツ、教育について対談をしていただいた。前編では、池田氏の明治大での取り組みについて、長友選手から鋭い質問が飛んだ。

ビジネスのできるスポーツマンをどう育てるか

池田 長友さんは明治大学在学中、ここで練習をしていたのですか? 

長友 はい、僕はここで3年間、練習していました。

池田 どうでしたか?

長友 楽しかったですね。でも、体育会なんで厳しかったですけどね。上下関係も厳しかったですし、まだグラウンドも芝ではなかったんです。全部、土のグラウンドで、ガリって言ってトンボみたいなのを毎朝5時半くらいから引いていました。懐かしいですね。

――長友さんが池田さんに対して、すごく興味を持たれたとうかがいました。どういったところに興味を持たれたのですか?

長友 教育とか学生スポーツに、僕自身もすごく興味を持っています。僕は、小学生に対してサッカースクールをやっているんですけど、大学スポーツというのが、例えばアメリカでは、すごい注目度があり、知名度もありますよね? その中で今の明治大学の学生、明治大学のスポーツだけではなくて、日本の大学スポーツが、どういうふうに変わっていくんだろうというところにずっと興味を持っていました。
 そこで明治大学が池田さんをスポーツアドミニストレーターに招かれました。池田さんはベイスターズの社長時代に赤字だった球団を、すごく押し上げたというか、変えていったのですが、どういうふうなことをやれば変えていけるのか興味がありました。そして、その経験を持ったうえで、次に大学スポーツを選ばれたというのは、どういう理由とどういう思いがあったのかなと。プロから学生に行くのには、相当な決断と勇気がないと行けないんじゃないのかな、と僕自身は思ったんです。

池田 いま僕は、明治大学のことだけをやっているわけではないんです。明治大学の学長補佐をやりながらスポーツを見ていますが、それはいろいろやっていることのうちの一つなんです。日本の大学スポーツがビジネスとして、制度として、組織として発展していたりすれば、もっともっと時間を使うことはあると思います。でも、いまはアメリカの大学スポーツと日本の大学スポーツでは、すごい差があります。 正直、全然人気がないですし、メーカーやスポンサーも付いていない。ですから、なぜ、こういう実態なんだろうということを把握することからはじめなくてはと思っています。

長友 どうですか? 実際、なんでそんなに差が出ているんですかね?

池田 いろいろとあるんですけど、まずは人の問題ですね。日本の大学スポーツには、ファンづくり、人気を高めていく経験をした人とか、そういうことがわかっている経営者的な人、トップになる人がいないんです。プロスポーツは昔からずっと言われているのは、「経営ができていない」ということ。結局は裾野とトップの問題で、裾野の底辺が広がっていないし、上もいない。上がいないから、裾野が広がらないのかもしれない。どっちが先かという、にわとりと卵の話なんです。あとは、どういう風になっていくべきかというビジョンが必要です。ビジョンを持つためには、現状を的確に把握することが必要です。
 僕はいま、Jリーグの特任理事、ラグビーの特任理事を務めながら、ラグビーのワールドカップにも絡んでいます。また、スポーツ誌のNumberと組んで教育も始めています。こうしたことをやっているのは、僕がスポーツの第一人者になろうと思っているからです。これまでは野球の経営だけしか知りませんでした。でも、リーグビジネスも知っています、サッカーも知っています、ラグビーも知っています、ワールドカップという世界的な大会の仕組みもわかっています、教育もわかっています、アマチュアでは大学スポーツもわかっています、と言えるくらい様々なことを学んで、全部の日本のスポーツの第一人者になろうと思っているんです。
 その目線で見ても、大学スポーツにはもっと仕組みとして強くなってほしいですし、人気が出てほしい。もちろん、お客さんにも見てもらいたい。そして学生にもサッカーや野球をやっているだけではなくて、将来に向けてもっと適切に勉強もしてほしい。もっとメディアに対しての意識も高くなってほしい。では、そうした教育は、どういう風にやっていけばいいの? というところにも興味があるんです。

長友 なるほど。

池田 プロ野球には、ドラフトで高校からも多くの選手が入ってきます。 彼らは社会人の経験も、大学生の経験もないから、メディアとどう対峙していいかわかっていません。また野球選手をクビになったとき、わかりやすく言えば多数がうどん屋か焼肉屋になるんです。サッカー選手も日本のJリーグに行ったとしても、そんなに給料が高いわけではありませんよね? 現役を引退した後は、どうするのか。本来、そのための教育を大学でしてもらわないといけないんです。

長友 プロになれる人は、一握りですからね。結局、ほとんどの選手がプロになれなくて、社会人になって、どこかで働くことになったときに、結局サッカーだけとか、スポーツだけとかしてなくて、何も残っていないという状況は寂しいですよね。せっかく大学に行って、勉強もできて、学べる場があり、しかも色々な人と出会って人脈も形成できる環境がある中で、確かにそういう意識の学生って少ないかなって思います。まぁ、僕も学生時代はそんな意識なかったですけどね。本当にサッカーばっかりやって、あと授業に出て単位を取ってという感覚だったので。僕はプロになることができたから、まだよかったですけど、ほとんどの選手はなれませんでした。

池田 その点は、アメリカやヨーロッパと違いますよね。日本の体育会だと、先輩、監督やコーチからも、「勉強なんかいいからやれ」って、言われることも多くありませんか? それを一気に変えるのは、日本の文化や日本人のしがらみとかがあって難しい。でも、いまは大学にもスポーツ科学といった学部ができたりしています。もちろん、それもいいのですが、例えば明治大の体育会サッカー部出身の学生は、Jリーグのビジネスの仕組みが分かっているとか、世界のサッカーの構図やビジネスがわかっているとなると、実社会に出るときに人材として興味を持ってもらえる可能性が高くなります。でも、そういうことを教える学部とか教育が、いまの日本にはまだないんですよ。

長友 なるほど、なるほど。

池田 せめてそこだけでも勉強して大学を出てくれれば、どこかの球団が雇ってくれるかもしれません。また、どこかのアカデミーが雇ってくれるかもしれません。チャンスがひろがります。

長友 確かに、大学スポーツに取り組んでいる選手たちが、大学で経営学を学んで、世界に出ていくのはいいかもしれませんね。いまはJリーグにも個人のオーナーがいるというよりも、企業がついて出資している形じゃないですか? これは僕の勝手なイメージなんですけど、結局、そのトップになる人が経営は知っていたとしてもサッカーは知らない、逆にサッカーは知っていたとしても経営はわかっていないと。多分、そういう人もたくさんいるんじゃないかなと思うんです。でも、こうやって本当に大学で厳しい世界でチャレンジをして、その中でも勉強して経営学を学ぶ。そういう選手たちがJリーグの経営に携わっていけば、全然、話が違ってくるのかもしれませんね。

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最終更新:8/8(火) 17:00
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