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無方向性電磁鋼板、EV普及で需要拡大。2~3年内に能力不足へ

8/8(火) 6:05配信

鉄鋼新聞

 モーターに使われる無方向性電磁鋼板(NO)の世界需要が急速に伸びようとしている。電気自動車(EV)の普及に伴い、EVの動力源となるモーター向けNOの引き合いが増えるのは確実と見られ、新日鉄住金やJFEスチールのNO生産も2019年から20年にかけて能力が不足する可能性が高い。成長分野のEV向けNOにどう対応するか、日本勢として問われることになりそうだ。

 電磁鋼板には、主に重電メーカーの変圧器(トランス)などに使われる方向性電磁鋼板(GO)と、自動車のほかエアコンのコンプレッサ、産業機械のモーターなどで使われるNOがある。GOの世界需要は汎用品のCGOを含め年間350万トン前後とされ、世界でもメーカーは限られる。
 一方、NOは原板に簡易処理をした低級品から、磁束密度が高く低鉄損の高級品まで定義の幅が広い。世界需要は年間1千万トンを超えるとされるが、最大市場で単圧メーカーも多い中国の実態が不透明のため、把握が困難になっている。
 NOは世界全体で見ると一般的に能力過剰とされている。しかし実際には品質の差が大きく、特にEVで使われるNOは汎用品が適用できない高級品にあたる。薄手品で造り込みにも時間がかかるため、高級NOを得意とする鉄鋼メーカーはEV分野で能力を割かれる傾向が続くものと予想される。
広がる可能性、増産には壁
 新日鉄住金やJFEの電磁鋼板事業はGO、NO共に高級品の比重が年々高まっている。NOはすでにハイブリッド車向けで需要増が続いてきたが、EVでさらに需要が伸びればこの傾向が一段と強まるのは確実だ。
 ただ自動車向けの厳しい品質要求に見合った採算を確保できているとは言い難く、各社とも本格的な増産投資に踏み切りにくいのが現状。当面は汎用品との競合分野を減らしEV向けの供給余力を確保していくものと見込まれるが、既存ラインで生産構成を変え対応するにも限界がある。
 海外で伸びるEV需要の捕捉も課題になってくる。米国のテスラモーターズは先月からEV量産車の納入を開始。テスラはNOの買い付け方が粗く、日本メーカーは同社との取引には慎重だが、今後は日系自動車メーカーによるEV生産が増えることも想定される。ただ米国市場では日本製を含めNOにアンチダンピング(反不当廉売=AD)措置が課されている。
 大気汚染対策でEVの普及を掲げる中国でもEV向けNO需要は大きく増えそうだが、低級品含めNOを造るミルは多い市場だけに着実な差別化戦略が欠かせない。
 先週4日に資本提携を発表したトヨタ自動車とマツダは、EVの基本構造を共同開発することでも合意した。EVでNOの可能性は大きく広がっているが、その需要捕捉には幾つかの壁もそびえている。(黒澤 広之)

最終更新:8/8(火) 6:05
鉄鋼新聞