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ドローンが自宅上空を旋回 保険会社の査定では?

8/8(火) 10:27配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 米アラバマ州バーミンガムを嵐が襲った後、メリンダ・ロバーツさんは自宅の庭に外壁の一部が落ちているのを見つけた。保険会社に連絡をしたところ、査定のために会社が送り込んだのは調査員ではなく、1機のドローンだった。

 無人操作のドローンはロバーツさんの家屋の上空を旋回し、屋根の写真を撮影。修復費用として米保険会社リバティ・ミューチュアルから小切手が送られてきたのは、その約1週間後だ。ロバーツさんは「予想していたよりもかなり早く届いた」とその時のことを振り返る。

 ドローン、写真アプリと人工知能(AI)が進化したことで、処理に時間がかかるとされてきた自動車保険や損害保険の査定プロセスが迅速化しつつある。

 家屋に生じた小さな損傷や自動車の軽い接触事故にまつわる保険金請求の場合、顧客から連絡を受けてから小切手が郵便で届くまで数日から数週間かかることが一般的だった。その間には通例、保険会社が調査員を現場に送り込み、事故や損害の状況を確認していた。

 だがレクシス・ネクシス・リスク・ソリューションズが保険会社の企業幹部を調査した結果、いくつかの種類の自動車事故に限定した場合、今は自動車保険会社10社のうち4社の割合で調査員を現場に送り込まないという。調査員に依存する場合は10日から15日かかる処理プロセスも、自動化された対応で処理すれば2日から3日程度で完了することも同社の調査で判明した。

3秒で請求調査完了も

 住宅保険の新興企業レモネード(Lemonade)は1月、盗まれたジャケットの査定をし、保険の支払いを決定するまでのプロセスを人工知能で処理。わずか3秒ですべての作業を完了させたことで注目を集めた。

 保険会社は通常、請求を受けてから支払いが完了するまでにかかる時間をビジネス上の秘密情報として公にしない。しかし支払額の見積もりから支払いが行われるまでのプロセスは迅速化しているとする声もあり、この変化が保険の契約更新にもつながる可能性もあるという。

 支払い請求を素早く処理すれば、保険会社も経費を削減できる。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスの推計では、損害保険に掛けられる1ドル(約111円)のうち11セントは、調査や支払い請求の処理に費やされているからだ。

 工程が自動化されることで、支払額を抑えられるメリットもある。保険関連のコンサルティング企業、ノバリカのマシュー・ジョゼフォウィッツ最高経営責任者(CEO)は、「支払い請求を早く処理すればするほど低い支払額で交渉がまとまる傾向があるため、直接的な経済的インセンティブもある」と指摘。特に水害などは素早く対処しなければ、支払額が急速に膨れあがることもあるという。

 処理を迅速化することで障害が発生することもある。自動車修理業界の一部団体は、写真を元にした査定では重大な損傷を見落とすケースがあり、結果的に請求処理のプロセスに遅れが生じると指摘する。

 再保険ブローカーのウイリス・リー(Willis Re)のアンドリュー・ニューマン代表は、「プロセスの一部分をスピードアップするのは素晴らしいが、1枚の写真、ひとつのコード、そしてひとつのアルゴリズムがすべてを解決すると考えるのは間違っていると感じる」と話す。

 米国内ではデラウェア州、ペンシルベニア州、そしてバージニア州が昨年に規定を改正し、写真や動画を元に車の修理費用の見積もりを行うことを許可した。一方でマサチューセッツ州やロードアイランド州では、写真を使った査定には一部制限をかけたままだ。

将来的にはすべての作業を自動化?

 シカゴを拠点とする新興企業のスナップシート(Snapsheet)では、人工知能を使った写真の鑑定技術を開発し、自動車保険会社に提供している。同社のCJ・プリズバル代表によれば、損傷した車体の写真を顧客が送ってから保険会社の見積もりが終わるまでは、約3時間だ。

 軽度の損傷の場合は、自動処理が導入され続けることで処理時間も大幅に短縮できると予測されている。レクシス・ネクシス・リスク・ソリューションズの請求部門のバイスプレジデントを務めるビル・ブラウワー氏によれば、自動車保険の支払い請求は平均して3人の従業員によって処理されているが、この人数は1980年代に同氏が業界で働き始めたころから変わっていない。

 損害が発生した際の保険会社への通達から写真を元に修理代の見積もりをするまで、保険金請求の全プロセスに人間の関与がなくて済むようになるかもしれないとブラウワー氏は述べる。請求の処理プロセスについて「われわれはとてつもなく大きな変化を遂げようとしている。消費者が期待することも変わってきた」と同氏は話した。

 レモネードでは顧客がアプリを立ち上げてチャットボットと会話しながら保険金の請求ができる。必要な画像や損傷の内容を説明する動画も、アップロードして処理する仕組みだ。同社は18種類のアルゴリズムを使って保険金詐欺を阻止していると、ダニエル・シュライバーCEOは話す。

 ニューヨークに拠点を置くレモネードによれば、同社に届く保険金請求の4分の1は自動的に支払われ、その他の案件は従業員が判断をする。9月に設立されたレモネードは、現在4つの州で保険を販売している。

 ドローンを使えば、台風や竜巻や洪水による被害への対応も素早くできることが可能になると保険会社は話す。保険の対象となっている場所を上空から撮影すれば、調査員が入れないような場所の様子も確認できるからだ。屋根の調査などけがのリスクが高い作業も、ドローンを使えば安心だ。

 ドローンを使って屋根の損傷を査定したもらったアラバマ州のロバーツさんも、「このようにやってもらう方が、うちの屋根から落ちたと調査員から電話を受けるような事態になるよりよっぽどいい」と話す。

By Nicole Friedman