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羽田空港、スマホかざして多言語案内 国際線で実証実験

8/9(水) 11:17配信

Aviation Wire

 羽田空港の国際線ターミナルを運営する東京国際空港ターミナル(TIAT)と、国内線ターミナル運営を手掛ける日本空港ビルデング(9706)、日本電信電話(NTT、9432)、パナソニック(6752)の4社は8月8日、ターミナル内の案内表示について、ユニバーサルデザインに関する公開実証実験を始めた。2018年3月31日まで実施する。

【隊列を組み自律走行する電動車いす】

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催などによる訪日外国人増加や、少子高齢化への対応策の一つとして、手伝いや案内の省力化につながるか検証を進める。

 国際線ターミナルでは、2015年12月からユニバーサルデザインの高度化をスタート。4社によると、これまでの検証で一定の効果が得られたことから、今後は最新のICT(情報技術)との融合が必須になると判断し、利用者が実際に使える実証実験を開始したという。

 今回の実証実験では、羽田から目的地への交通手段(2次交通)の案内や、スマートフォンを活用した館内情報や飲食店メニューの母国語案内、視覚障がい者を対象とした音声案内の明瞭化、ロボット電動車いすの自律走行を実施。2018年度に導入の可否を判断し、2020年までに運用開始を目指す。

◆空港から都市部への多言語案内

 観光庁の調査では、訪日外国人の3人に2人が、空港から目的地へ向かう公共交通機関の情報を調べる際に困っていたことから、外国人が宿泊先に選ぶ傾向が高い銀座や新宿、横浜などへ空港から向かう経路を、案内表示やスマートフォンと連携して情報を提供する。

 パナソニックは、LEDによる「光ID」技術「LinkRay(リンクレイ)」を活用し、スマートフォンとの連携を提案。ターミナル2階のモノレール乗り場付近に交通案内サイネージ(案内表示板)を設置し、渋谷と新宿、池袋、東京、六本木、赤坂、銀座、上野、浅草、横浜の10都市へ向かう交通情報を案内する。

 京浜急行電鉄(京急、9006)と東京モノレール、リムジンバス、タクシーの4つの交通手段について、所要時間や運賃を案内。LinkRayのアプリをスマートフォンにインストールし、目的地の表示にかざすと、スマートフォンで行き先を確認できる。

 切符の買い方がわからない外国人が多く、案内係が始終応対していることから、京急の券売機上の路線図にスマートフォンをかざすだけで、目的地までの経路を多言語で検索・案内するサービスを提供する。

 案内は日本語と英語、中国語(繁体字、簡体字)、韓国語の5言語となる。

◆アプリ不要「かざして案内」

 スマートフォンを館内の案内表示や飲食店のメニューに載った写真にかざすだけで、母国語の案内をスマートフォン上に表示するサービスや、保安検査場の混雑具合をカメラで分析し、プロジェクターで映し出す情報提供、トイレの場所など視覚障がい者向け音声案内の明瞭化を、NTTが手掛ける。

 案内にスマートフォンをかざすだけで、母国語による案内や情報をスマートフォン上に表示するのは、NTTのサービス「かざして案内」を活用したもの。スマートフォンのカメラによる画像認識技術で、同社によると、通常は1枚の画像を正確に認識するためには、さまざまな角度で撮った画像が100枚程度必要になるが、正面や斜めなど3枚程度撮れば認識できるという。

 TIATのウェブサイトのトップページに、かざして案内の実証実験ページへのリンクを設けた。スマートフォンにアプリをインストール必要がなく、手軽さを重視した。かざして案内のページをブラウザーで開いて、「バス乗り場」など知りたい案内表示を撮影すれば利用できる。

 案内表示を撮影する際は正対している必要がなく、さまざまな角度で認識できる「アングルフリー」が特徴となっている。

 また、飲食店のメニューについても、かざして案内を活用。メニューに載っている写真をスマートフォンのカメラで撮影すると、利用者の母国語による案内が表示される。現在は焼き肉店「焼肉チャンピオン」で実証実験中で、今年度内に国際線ターミナル4階「江戸小路」に出店する飲食店全店への展開を目指す。

 国際線ターミナルに2カ所ある保安検査場の混雑具合は、3台のカメラで列の長さを分析。検査場付近の場所をメッシュ状に分け、カメラで混雑具合を分析し、プロジェクターで検査場付近に映し出す。

 NTTによると、顔認識など個人の識別は行わないのが特徴で、エコノミークラスのチェックインカウンター付近から見やすい位置に、プロジェクターで投影しているという。現在は「やや混雑しています」といったおおまなか表現だが、待ち時間の目安を表示することもできる。

 音声案内の明瞭化は、案内機を設置した場所ごとに騒音を録音して分析し、人間の聞き取りやすさに影響する周波数帯(1khzから3khz付近)を持ち上げ、聞き取りに影響しにくい500Hz付近を下げることで、音量は変えずに案内が騒音に埋もれにくいようにした。

 レストランの食器の音や、トイレで手を乾かすハンドドライヤーの作動音など、設置場所ごとの騒音を分析し、明瞭化処理をした音声データに差替えることで、案内機自体は交換せずに音声の明瞭化を実現した。

◆自律走行で係員の負荷軽減

 車いすについては、ロボット電動車いす「WHILL NEXT(ウィルネクスト)」による自律走行実験を実施。パラリンピック開催や高齢化により、多くの車いす利用者の来館が予想されることから、電動車いすの導入について、検証を進める。

 パナソニックによると、空港の係員へのヒアリングで、体重の重い人を長時間案内する際の負担や利用者の増加など、電動車いすの導入で軽減できる課題があったという。

 WHILL NEXTは、WHILL社とパナソニックが共同開発しているもので、今年度は空港内での自動停止機能と自律移動機能、隊列走行機能の技術検証を実施する。

 障害物検知センサーにより、操作ミスや急な飛び出しで衝突のおそれがあると判断すると自動で停止。自律移動機能は、スマートフォンの専用アプリで目的地を指示すると、搭乗口や店舗までWHILL NEXTが自ら経路を選んで移動していく。

 隊列走行は、家族やグループが移動する際、複数台が縦列移動する。係員が使用後のWHILL NEXTを回収する際も、自動で隊列を組んで車いす置き場に向かうことで、業務負荷を軽減する。

 今回実証実験が行われるサービスは、音声明瞭化のように現時点でも実運用につながりそうなものもあれば、都市部への交通機関案内のように、すでに多くの人がスマートフォンで経路検索に利用している「Googleマップ」を使えば済むのではと疑問を感じたものまで、さまざまだった。

 2018年度に下される導入可否の判断までに、さまざまな検証が行われる。

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:8/9(水) 11:17
Aviation Wire