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マツダ、独自燃焼方式「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」採用の次世代エンジン「SKYACTIV-X」など長期ビジョン説明会

8/9(水) 8:34配信

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 マツダは8月8日、同日に発表した2030年を見据えた技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の説明会を都内で開催した。

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 今回の長期ビジョンの概要については関連記事を参照いただきたいが、同社はこれまで2007年に発表した技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」にもとづき「走る歓び」「優れた環境・安全性能」の両立に取り組んできた。今回策定された「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」は世界の自動車産業を取り巻く環境の急激な変化を踏まえ、より長期的な視野に立ち、クルマの持つ魅力である「走る歓び」によって「地球」「社会」「人」のそれぞれの課題解決を目指す新しいチャレンジになる。

 このなかでは、ガソリンと空気の混合気をピストンの圧縮によって自己着火させる燃焼技術(圧縮着火、Compression Ignition[CI])を世界で初めて実用化した次世代エンジン「SKYACTIV-X」をはじめ、EV(電気自動車)などの電気駆動技術を2019年から展開することや、自動運転技術の実証実験を2020年に開始し、2025年までに標準装備化を目指すことなどが発表されている。

 説明会ではマツダ 代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の小飼雅道氏が「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の概要を紹介するとともに、取締役専務執行役員 研究開発・MDI・コスト革新統括の藤原清志氏が「SKYACTIV-X」についてのプレゼンテーションを行なった。

■“マツダプレミアム”の実現を目指す

 小飼社長はまずマツダブランドについて触れ、「私たちが目指してきたマツダブランドのありたい姿とは、お客様と強い絆で結ばれた会社です。マツダは今までの歴史のなかで、コスモ・サバンナなどのロータリーエンジン車やロードスターといったスポーティ性能に優れたクルマのブランドとしてグローバルに認知いただいており、熱烈なファンの皆様に支えていただいております。2002年に導入したブランドメッセージ『Zoom-Zoom』によって、お客様に“走る歓び”を提供するというブランドの方向性を明確にし、世界的にファンからの共感を得てまいりました。さらに、2012年のCX-5導入以降も、多くのマツダやCX-5ファンの皆様から“走る歓び”を提供する価値を認めていただき、強い絆が生まれつつあると感じています」。

「最初にマツダにお乗りいただいたとき、お客様の期待を超える優れた商品、技術、デザイン、サービスを提供し続けることで、“走る歓び”“人生の輝き”を感じていただきたい。マツダ車を運転して豊かなカーライフを過ごしていただきたい。そしてお客様のご愛用いただいた体験が次もマツダを選んでいただけることにつながり、さらにはほかのお客様に推奨され、ファンが少しずつ広がっていく。私はマツダをそんなブランドにしたいと思っています」とコメント。

 また、これまでのマツダブランドの成長の大きな推進力となったのは、自動車業界での生きのこりをかけて2007年に発表した技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」だったとし、「(サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言では)お客様視点を頂点に置いた“走る歓び”、環境・安全性能のすべてをブレークスルーした商品の提供をお約束しました。その実現に向けて、グローバルで商品体系を先鋭化するとともに、エンジン、トランスミッション、ボディ、シャシーなどすべての車両システムを刷新しました。それがSKYACTIV技術です」と述べるとともに、デザイン面でも日本の美を映した「魂動デザインコンセプト」を導入したことを報告。こうしたものづくりはユーザーからも受け入れられ、販売台数は2013年3月期の123.5万台から今期目標として160万台まで引き上げられることができたことから「構造改革の第1ステージは成功したと言ってよいでしょう」と小飼社長は言う。

 そして第2ステージ(2017年3月期~2019年3月期)に入るにあたって発表された今回の「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」については、「私たちマツダは、美しい地球と心豊かな人・社会の実現を使命ととらえ、クルマの持つ価値により人の心を元気にすることを追求し続けてまいります。全社員が“地球”“社会”“人”に対する課題認識を常に持ち、その解決に向けた独自のアプローチによる取り組みを進めてまいります」と述べるとともに、「地球」「社会」「人」というそれぞれの領域の課題解決に向けた取り組みを紹介。

 まず「地球」領域については、地球温暖化の要因となる温室効果ガスの削減に対して実質的なCO2の削減に取り組んでいかなければならないとし、「真に温室効果ガスの削減を図るため、クルマのライフサイクル全体でのCO2削減に取り組む必要があります。今までの走行段階のCO2評価の『Tank-to-Wheel』だけでなく、エネルギーの採掘、製造、輸送段階のCO2評価も組み入れた『Well-to-Wheel』視点でのCO2削減を進めます」とコメント。具体的な目標として、Well-to-Wheelでの企業平均CO2を2010年比2050年で90%削減を将来的ににらみ、2030年で50%削減する目標が掲げられた。

 その削減の中心になるのは、今後将来においても世界的に大多数を占めると予測する内燃機関の活用としており、「私たちマツダは、地球を守るため実用環境下での温室効果ガス削減の効果を最大化することを目指していきます。内燃機関の徹底的な理想追求を行ない、世界一を目指し、内燃機関の可能性を追求します。これを基にして、効率的な電動化技術と組み合わせて進めてまいります。さらにクリーン発電地域、大気汚染抑制などの政策のある地域へのEVなどの電気駆動技術の展開を進めていきます」と述べた。

 そこで登場するのが「SKYACTIV-X」で、小飼社長は同エンジンについて「内燃機関の徹底的な理想追求として、このたび次世代エンジンの量産にめどを付けました。次世代エンジンはガソリンエンジンとディーゼルエンジンのそれぞれの利点を持ち、まったく新しい燃焼方式と提供価値を実現した“新種”のエンジンです。ガソリンとディーゼルのクロスオーバーと言う意味でSKYACTIV-Xと名付けました」と述べたほか、現行の「SKYACTIV-G」「SKYACTIV-D」についても継続的に進化させるとともに、内燃機関の効率化に最適な電動化技術であるマイルドハイブリッドや新材料採用を含む軽量化、車両系の「SKYACTIV-BODY」「SKYACTIV-CHASIS」も継続的に改善していくとした。

 次に「社会」領域では、「先進国を中心に新たな事故の要因が顕在化しています。例えば、運転経験の浅い若者による交通事故。スマートフォンなどによる、情報量増加による注意散漫な運転や、増加するご高齢ドライバーによる運転操作ミス、過労/疾病などの影響による危険運転などの課題が挙げられます。また、社会構造の変化に伴う課題の顕在化。例えば、過疎地域における公共交通の弱体化・空白化や、ご高齢者やお身体の不自由な方など、交通面で不便をされている方々の増加などが挙げられます。これらは日本のみならず、今後人口が先細りする先進国においては共通の課題と認識しています。これらの課題に対し、私たちは安心・安全なクルマと社会の実現により、すべての人が、すべての地域で自由に移動し、心豊かに生活できる仕組みを創造し築いてまいります」と課題について紹介。

 具体的には“事故のない安全なクルマ社会”を目指してドライビングポジション、ペダルレイアウト、視界視認性、アクティブ・ドライビング・ディスプレイなどの安全技術の進化と全車標準化。加えて先進安全技術の継続的な性能向上と標準装備化、自動運転技術を活用したドライバーがいつまでも安心して運転を楽しめる人間中心の自動運転コンセプト「Mazda Co-Pilot Concept(マツダ・コ・パイロット・コンセプト)」の2025年での標準化を目指すという。

 そして最後の「人」領域については、「社会で生活する人々は、機械化や自動化により経済的な豊かさの恩恵を受けていますが、一方で日々身体を動かさないことや、人や社会との直接的なかかわりが希薄になることで、ストレスが増加していると考えています。これらの課題に対して、私たちはより多くのお客様にクルマを運転する“走る歓び”を感じていただき、さらにクルマの運転を通じて地球や社会への貢献を感じることにより、人としての高揚感、達成感を得ることでこのストレスのある世の中で心豊かな人生を味わっていただくことを目指してまいります。このために、私たちの強みである人の能力を引き出し、心と身体を活性化させる『人馬一体』感と、見る人すべての心を豊かにするデザインを、さらに研ぎ澄ませてまいります」と説明した。

 なお、今回の説明会で小飼社長は今後展開するさまざまな技術の発表タイミングについても紹介。次世代エンジン「SKYACTIV-X」と次世代のプラットフォーム、新デザインコンセプトについての報道陣向け説明会を2017年に開催し、これらは「東京モーターショー 2017」(プレスデー:10月25日~26日、プレビューデー:10月27日、一般公開日:10月28日~11月5日)でも披露するとのこと。また、2018年に電動化とコネクティビティ技術について、2019年に次世代ディーゼルエンジンとPHEV(プラグインハイブリッド)について、2020年に自動運転技術「Mazda Co-Pilot Concept」についての説明会を行なうとの報告がされた。

 小飼社長は最後に「私たちは世界中に熱烈なファンを持ち、新世代商品によりさらに多くのお客様にご愛用いただけるようになりました。そんなお客様に常にマツダ車をご購入いただけるように、次世代の商品・技術においても最高の商品・技術・デザイン・サービス、そしてお客様のご利用体験を提供してまいります。お客様にマツダ車にずっと乗り続けたいと言っていただける、お客様と強い絆で結ばれた存在、すなわち“マツダプレミアム”の実現を目指します。それは豪華で高価格ということを示すものではなく、私たちが心から目指している“走る歓び”の力によってお客様の人生を輝かせる、お客様との強い絆をもった世界一のクルマづくりを目指します。今後のマツダにどうぞご期待ください」とコメントして締めくくった。

■SKYACTIV-Xの概要

 次に取締役専務執行役員 研究開発・MDI・コスト革新統括の藤原清志氏から、2019年の市場導入が予定される次世代エンジン「SKYACTIV-X」の概要について紹介が行なわれた。

「SKYACTIV-X」は、ガソリン燃料をディーゼルエンジンのように圧縮着火させるエンジンで、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの特徴を融合したマツダ独自の内燃機関になる。藤原氏は「私たちが目指してきたものは、実用での優れた燃費性能、排ガス性能、さらに人間の感覚に合った意のままの走り、これらすべてを高い次元で実現させること。そのために目指してきた理想の燃焼は『CCI(Controlled Compression Ignition)』です。聞きなれない言葉かもしれませんが、CCIは完全に制御された“圧縮着火(CI)”燃焼ということです」と述べるとともに、「SKYACTIV-X」を語るにあたって“圧縮着火(CI)”と圧縮着火を“完全に制御できること”がキーワードになっているという。

 まず圧縮着火(CI)について、「圧縮着火(CI)はディーゼルエンジンで採用される燃焼方式ですが、これをガソリンでやろうとしたものがいわゆる『HCCI(予混合[燃料]圧縮着火)』と呼ばれる燃焼方式です。この燃焼は、ガソリンと空気を完全に混ぜて圧縮で着火させるという方式で、火花点火では燃えないような薄い混合気、つまりリーンな状態でもきれいに素早く燃焼することで燃費のよさとNOx発生量が少なくなるという利点を持ちます」。

「ではなぜ圧縮着火(CI)にこだわるのか。その理由は2つあり、1つは薄い混合気で燃やすリーン燃焼を大きくブレークスルーするためです。燃費をよくするためには燃料を減らせればよいわけですが、火花点火(SI)燃焼方式でもリーン燃焼をしてきましたが、すでに限界にきています。しかしながら、圧縮着火(CI)が実現できれば火花点火(SI)では実現できない理論空燃比をはるかに超え、2倍の薄さで燃える“スーパーリーン”の世界を実現できるのです。単純に言ってしまえば、今までの燃料の半分でも圧縮着火(CI)であれば燃焼可能です」。

「2つめは、圧縮着火(CI)ではピストンが上死点から動き始めた直後に燃焼室全体のいたるところで短時間に燃焼するため、ピストンを押す力が大きく、またより長い時間ピストンを押すことができるため効率がよくなるからです。これを、火が付きにくいガソリン燃料で実現することは、エンジニアの夢のエンジンと言われたものです。商品化されれば、今のところ世界初の燃焼技術と言えると思います」と説明。

 一方、HCCI燃焼の実現に向けて大きな課題が2つあったという。1つは成立範囲(回転・負荷)が狭いこと、2つめはそのために火花点火(SI)との併用が必要になるものの、過渡時やさまざまな環境下において、安定して火花点火(SI)と圧縮着火(CI)燃焼の切り替えが難しいこと。そのため「我々に与えられた課題は、圧縮着火燃焼範囲を拡大しつつ、燃焼の切り替えるを完全に制御する技術をガソリン燃料で有することです。この制御技術がブレークスルーのポイントであり、マツダが保有する独自技術のポイントになります」と述べる。

 この火花点火(SI)と圧縮着火(CI)燃焼の切り替えについては、「スパークプラグを有する構造となることを逆手に取り、『スパークプラグを圧縮着火(CI)の制御因子、コントロール手段として活用する』という考えにより、一部の冷間時をのぞくほぼ全域で圧縮着火(CI)燃焼の実現を可能にしています」と藤原氏は言う。

 具体的には、「スパークプラグの点火による膨張火炎球が、まさに第2のピストン(エアピストン)のように燃焼室内の混合気を追加圧縮し、圧縮着火(CI)に必要な環境を実現しています。このスパークプラグの点火時期を制御することで、圧縮着火(CI)を拡大し、またSI火花点火燃焼との切り替えをスムーズにでき、完全に制御された圧縮着火(CI)、火花点火(SI)を実現することができました。この完全に制御された圧縮着火(CI)、火花点火(SI)を実現したのが、マツダ独自の燃焼方式『SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition/火花点火制御圧縮着火)』です」。

「また、圧縮着火燃焼の割合を高めることをサポートする技術として、高く圧縮されたシリンダー内に空気を送り込むための高応答エア供給機を装備しています。高中負荷領域まで圧縮着火を広げるためには、多くの空気を入れる必要があり、その空気を押し込むためにエア供給機を採用することで圧縮着火領域の拡大が可能になり、走りと燃費の両立を実現することができました」と、その特徴について語る。

 実際の走行シーンにおける「SKYACTIV-X」のポイントについては、圧縮着火(CI)をするために空気を押し込んでいる状態であることから、従来のガソリンエンジンのように「吸気がシリンダーまで入る遅れ」がなく、非常にレスポンスに優れることで、「例えばアクセルペダルを10%程度踏んでいる状態から、加速をして追い抜きたいとアクセルペダルを50%程度まで踏み込む状況において、高評価をいただいている同じ圧縮着火のディーゼルエンジンと同じような初期レスポンスの強さを感じられます」という。

 また、もう1つのポイントとして「ガソリンエンジンのよさである高回転時の伸びやかさはディーゼルエンジンに対して優位性を持っており、この点においても“走る歓び”を提供することができると考えています。SPCCIとエアアシストの組み合わせにより、『SKYACTIV-G』に対して全域で10%以上、最大30%におよぶ大幅なトルク向上を実現しています」と説明を行なった。

 そして燃費性能については「現行の『SKYACTIV-G』比で20%改善し、ガソリンエンジンとしては世界一の燃費率を誇ります。さらに低車速での使用頻度の高い地域では、スーパーリーン燃焼の活用により最大30%程度改善。2008年時の私たちのエンジンから考えると、35%~45%の飛躍的な改善を果たし、私たちのディーゼルエンジンの最新版『SKYACTIV-D Upgrade』と同等以上の燃費率を実現しています。軽負荷域の燃費改善率が大きいので、“大排気量=燃費がわるい”という既成概念を完全にブレークスルーしています」と述べるとともに、「我々の試作車での実用領域の評価では、『デミオ SKYACTIV-D 1.5』と同等のCO2排出量でありながら、『MX-5(ロードスター)SKYACTIV-G 2.0』並みの加速感をすでに実現できており、手ごたえを感じています」と胸を張る。

 最後に、「未だ高い商品競争力を有する『SKYACTIV-Gアップグレード』『SKYACTIV-Dアップグレード』を継続採用したうえで、新たに『SKYACTIV-X』の展開により、コスト競争力を含め、走りと燃費を高い次元で両立した幅広いラインアップが構成でき、この競争力ある3つのエンジンを電動化技術と組み合わせることにより『すぐれた戦いが行なえるフォーメーション』が組めることになり、地域特性、顧客特性などに合わせて最適な組み合わせの商品を提供することで、ビジネス成長へも貢献できると考えています」。

「この理想を追求した内燃機関にトランスミッション、ボディ、シャシーの進化およびi-stop・i-eloop、その進化であるマイルドハイブリッドの組み合わせをベース技術とし、さらにもっとも重要な制御技術と電動化技術を重ね合わせてEV、レンジエクステンダー、PHEVを商品化してまいります。このビルディングブロック戦略とモデルベース開発、ものづくり革新などのプロセス革新の進化によって2020年、さらに2025年に迎える大きな壁を超えていくためのマルチソリューションを、マツダの規模で着実に準備してまいります。これは地球を守るという意味においても、世界中のお客様に対し、その地域のお客様に最適な動力源を“走る歓び”とともに提供できる準備が整うことを意味します。2020年のマツダ創立100周年に向けて、毎年毎年その技術を試作車とともにご紹介することをお約束し、また2021年という次なる100年のスタートの年に、すべての商品ラインアップをお客様のところにお届けすることをお約束します」と述べ、プレゼンテーションを終えた。

Car Watch,編集部:小林 隆

最終更新:8/9(水) 8:34
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