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<老後破産>家計簿アプリで月2万円節約の「魔法」

8/9(水) 10:17配信

毎日新聞

 「月に約2万円の収支改善(節約)に寄与しています」--。アプリなどによる家計簿サービスを展開するIT企業広報担当者の説明に目を見張った。老後破産を避けるため、貯金は少しでも多い方が良い。月2万円を節約・貯金し、仮に年3%複利で運用できれば、45歳の私が退職する15年後には約446万円に膨らむ。月2万円の節約なんて「魔法」、本当にあるのだろうか? 【高山純二/統合デジタル取材センター】

 ファイナンシャルプランナー(FP)の家計診断を受け、「老後破産の可能性もある」と指摘された。破産を免れるため、まずは家計簿をつけ、支出を把握することが重要だ、との助言を受けた。我が家は今年1月、妻が家計簿をつけ始めたが、わずか1カ月で挫折していた。そんな窮状を見かねた上司が、あるITベンチャーを紹介してくれたのだ。

 訪れたのが、家計簿アプリなどを開発・運営する「マネーフォワード」(東京都港区)。アプリ利用者数が500万人を突破した、国内最大級のフィンテック(ITを駆使した新たな金融サービス)企業だ。

 近年、家計簿アプリは急速な進化を続けており、スマホのカメラでコンビニなどのレシートを撮影すれば、自動的に支出データをジャンル別に取り込んでくれるほか、銀行口座やクレジットカード、電子マネーなどとも自動で連携し、出入金の状況を一体的に示してくれる。同様のサービスはマネーフォワードのほか、Zaim(ザイム)やマネーツリー、ドクターウォレットなどもあり、各社が使い勝手やサービスの向上にしのぎを削る。



 ◇しわが付いたレシートも読み取るが、一覧性に欠ける難点も



 実際に使うアプリには、大日本印刷(東京都新宿区)の「レシーピ!」を選んだ。「簡単」「楽しい」がキャッチコピーで、ネコのキャラクターが可愛らしく、家計簿つけに挫折した妻との共用も想定した。クシャクシャにしわがよったコンビニのレシートの読み取りに成功する一方、比較的字の小さいスーパーのレシートの読み取りに失敗するケースもあった。約2週間かけて集めたレシート約20枚を読み取り、「食材費」「外食」などと分類し、一部の店名を手入力したが、作業はわずか15分ほどで完了した。

 「レシーピ!」は銀行口座との連携がないものの、レシートの読み取りだけでも十分便利だ。アプリをタップするだけで分類ごとに支出額を積算し、支出割合を円グラフで提示してくれる。データを蓄積していけば各月を比較するなどして、「やはり外食が多いな」などと節約に役立てられそうだ。ただし、スマホ画面の小ささゆえ、支出項目など全体状況の一覧性にやや欠ける。何よりも、アプリの高機能さを前に、使いこなすには時間がかかりそうと思う。



 ◇家計を「見える化」、「理想」と比較できる機能も



 先のマネーフォワードは、金融機関をはじめ航空会社や通販サイトなど2600社以上と連携、マイルやポイント失効をも事前に通知してくれる。さらには「教育費と老後資金の貯め方」など、独自の金融記事もPCサイトやアプリ内に掲載、家計管理に役立ててもらう狙いだ。

 マネーフォワードによると、今年2月に利用者2460人に行ったアンケートで、ほぼ半数に当たる1175人が「アプリの使用後、収支改善を実感した」と回答した。その節約額は使用前と比べ、平均で月1万9090円に及んだという。このうち無料会員では月1万5433円、プレミアム(有料)会員は月2万4728円の節約だった。

 広報の稲増祐希さんは「家計が『見える化』し、(節約)意識の改善につながるのでは」と理由を説明した上で、「プレミアム会員向けには、実際に資産管理がうまくいっている『理想の家計』事例を1万件以上用意しており、利用者が同じ年収や家族構成の家計簿と比較し、目標にすることができるようになっている。また、自分自身の1年前の家計簿と比較できるなど、データの内容を細かく分析できる」とアプリ利用の効果を挙げる。



 ◇データ暗号化で安全性確保、対策強化も着々と



 プレミアム会員の会費は月額500円。月2万円超の節約につながるならば安いものだが、一つ心配なこともある。アプリの安全性だ。

 マネーフォワードで金融機関の口座と連携する場合、大半は金融機関のIDとパスワードを入力し、同社にID、パスワードを預かってもらうことになる。広報の柏木彩部長は「当社のシステムではデータはすべて暗号化している。第三者の監査・認定も受けたシステムの安全性は金融機関と同等で、安心して使ってほしい」と説明する。

 さらに一部の金融機関では、「API」と呼ばれる技術を使った連携に着手、マネーフォワードがID、パスワードを預かることなく、金融機関のサイトに直接接続することで安全性を高めている。APIによる連携は今後も拡大する見通しで、柏木部長は「さらに安全性と利便性が高まる」として利用者増を期待する。

 マネーフォワードの利用者は、年収1000万円以上が11%を占める。高所得者が多いため、節約額も大きくなる側面もあるかもしれないが、家計改善の可能性を広げていることは間違いない。老後破産回避のため、とりあえず「月2万円節約」を目標に、家計簿アプリを使い続けてみようと思う。

最終更新:8/9(水) 10:21
毎日新聞