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現代版シルクロード現地ルポ“恩恵”に沸く地方 実態は実績作り?

8/9(水) 7:55配信

産経新聞

 中国で、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に関する動きが活発になっている。習近平国家主席の肝いり構想とあり、各地では競うように関連プロジェクトを推進している。ただ、看板ばかりが目立って実利に欠けるものもあるなど懸念も少なくない。一帯一路の光と影を現地で探った。(三塚聖平)

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 マルコ・ポーロが「世界第1の貿易港」と紹介した泉州を抱える福建省。それから700年超の時を経て再び「海のシルクロード」の中心地になっている。

 「この4年間、福建省は海外進出と外資導入に力を入れ、経済建設などで大きな進展を遂げてきた」

 7月末、福建省の省都・福州で同省発展改革委員会の張岩銓氏が胸を張った。

 4年前、習氏自ら一帯一路構想を提唱。中央アジアや中東を通る陸路「シルクロード経済ベルト」と、南シナ海やインド洋を通る海路「21世紀の海上シルクロード」が柱で、福建省は海路の起点と位置づけられた。習氏が省長を務めたこともあり、一帯一路と福建省の関係は深い。

 地方都市には一帯一路が“商機”に映る。沿線国で鉄道や道路、港湾などのインフラ建設を支援し、中国の影響力を高める大きな狙いを一帯一路は担うが、地方都市にとっては沿線国への輸出増や外資誘致、地元企業の海外展開など経済効果が期待されるからだ。

 この4年間、福建省は一帯一路を背景に輸出入促進策などを推進。2015年4月には「自由貿易試験区」が認可され、貿易手続きの簡素化が可能になるなど追い風が吹く。

 福建省の域内総生産(GDP)の全国順位は12年の12位から16年は10位に上昇。一帯一路の恩恵を享受している。

 ◆「欧州からの積み荷、多くない」

 実利が期待される一方で、全国の地方都市や政府部局は一帯一路の実績作りに躍起だ。インフラ整備や貿易円滑化といった一帯一路関連施策のニュースがあふれているが、観光振興や映画祭、中国武術普及など本筋から距離のある取り組みもある。既存プロジェクトの看板を掛け替えただけのものも少なくない。

 また、実績をひねり出すため無理をしている様子もうかがわれる。

 「欧州から戻ってくるものはあまり多くない」

 40度超の暑さが続く陝西省西安で、中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車「中欧班列」の内実を同市発展改革委員会幹部が明かす。

 中欧班列は一帯一路の象徴的存在で、中国メディアによると中国28都市から欧州11カ国・29都市に51路線を運行。一帯一路の陸路の起点と位置づけられる西安でも、モスクワやドイツ・ハンブルクなどを結ぶ路線が設けられた。

 メリットは海運の3分の1程度という輸送時間。一方で輸送コストは2倍超ともされる。中国からの往路は日用品などで埋まるが、欧州からの復路は富裕層向けのワインなど積み荷は限られる。そのため復路が定期便化されていない路線も目立つ。貨物会社への補助金支給で利用を促しているのが実情で、実需に基づいているとは言い難い。

 そのような“無理”が、沿線国でも再現されないか心配もある。

 ◆沿線国を支援「新植民地」の懸念

 「一帯一路建設では、政治と経済の両面のリスクを注意しなければならない」

 一帯一路の動向をウオッチする陝西省の新聞社幹部が指摘する。

 中国は沿線国のインフラ建設支援で影響力拡大を狙うが、当然、支援は無償ではない。プロジェクトには収益率が低いものも見込まれる上、一帯一路沿線には支払い能力が疑われるような経済・政情不安定国もある。

 返済が滞ると何が起きるか。亜細亜大学の遊川和郎教授は「返済できない場合に中国側が相手国に交換条件を持ち掛け、それにより『新植民地』のように扱われる問題が起きる可能性もある」と将来を懸念する。

最終更新:8/9(水) 8:30
産経新聞