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【インタビュー】ヴェノム Inc.「これは君たちのためのアルバムだよ」

8/9(水) 18:51配信

BARKS

エクストリーム・メタルの元祖と言えばヴェノム。現在ヴェノムはヴェノムとヴェノム Inc.という2派に分かれて活動をしている。

◆とヴェノム Inc.画像

ギターのマンタスとドラムのアバドンが、ザ・デモリション・マンことトニー・ドーランとともに結成したのがヴェノム Inc.で、彼らは2015年にヴェノムの名曲を演奏するライブ・バンドとしてスタートしたのだが、今回ついに『アヴェ』でアルバム・デビューを果たすこととなった。『アヴェ』を一言で言うならば“非常にヴェノム感の強いアルバム”だ。初期ヴェノムが大好きだった往年のファンも、楽しかった1980年代を思い出すことだろう。

──タイトルを『アヴェ』としたのはなぜですか?

トニー・ドーラン:アヴェという言葉には、俺たちのファン、そしてサタンへのあいさつの意味が込められているんだ。ルシファーは悪とされているけれども、実は光をもたらすもの。そして俺たち人間はときに正気を失うことがあるので、人としてどうふるまうべきなのかをはっきりと知る必要がある。タイトル・トラックの「アヴェ・サタナス」はそういう内容の歌詞なのさ。

──アルバムのオープニングである「アヴェ・サタナス」ですが、いきなり9分という長さに驚きました。

トニー・ドーラン:確かに長いね(笑)。でも「At War with Satan」を覚えているだろう?あの曲は一つの物語になっていた。「アヴェ・サタナス」を最初に持ってきたのは、この曲にもストーリーがありアルバム全体の雰囲気をセットする役割を果たすと思ったからさ。

──なぜ「ダイン・フライシュ」を最初に公開する曲に選んだのですか。正直なところ、この曲はまったくヴェノムらしくないですよね。もっとヴェノムらしい曲というチョイスもあったと思うのですが。

トニー・トラン:そうなんだよ、予想通りリアクションは凄まじいものさ。でも俺はこのリアクションは良かったと思ってるんだ。最初にこの曲を発表したのは、社会実験のつもりだったんだよ。ビデオを作るにあたって、ストーリーがあるものにしたかったんだ。ただ倉庫やステージで演奏するだけのイージーなものでなくて。ファンはきっとそういうのを期待していたかもしれないけど。それから「メタル・ウィ・ブリード」みたいな、速くて激しい曲も使いたくなかった。あまりにあからさまな曲は避けたかったから。ファンがあからさまな曲を望んでいることはわかっていたけど、俺はファンが本当に曲をきちんと聴いてくれるのかを試したかったんだ。音楽というものを聴いてくれるのか、それともただヴェノムのイメージだけを求めているのかね。リアクションは、まったくもって予想通りだった。若いファンや、ヴェノムのファンでない人たちは、非常に好意的な反応をしてくれる一方、オールド・スクールなファンは、信じられないくらいネガティヴなリアクションをしているよ。「ガッカリだ、何なんだよこれは!」って。まあ彼らはアルバムの残りがどんな感じか、まだ知らないわけだからね。ビデオの第一印象で「最悪だ!とても聴いていられない」なんていうリアクションをしている人も、アルバムを聴けば気に入ってくれると思う。クリスマス・プレゼントと同じさ。1年間両親に「自転車が欲しい!自転車が欲しい!」って言い続ける。クリスマス当日、ツリーの下には自転車大の段ボールが置いてある。だが開けてみて、中身はペンとサッカーボールだったら、ショックから立ち直るのは容易ではないだろう。もちろんサッカーボールも素晴らしいプレゼントなのだけど、予想と違ったという最初のショックから立ち直るのは大変で、サッカーボールの本当の価値になかなか気づけない。両親に腹を立てながらキッチンに行くと、そこには自転車置いてある。これが俺がやろうとしたことさ。ご褒美を隠しておくんだ。ツリーの下に置くのではなくね。ファンには違ったものも受け入れる度量が欲しいとも思っている。今は2017年だよ。1981年ではなくてね。俺たちは18歳や20歳ではなく、50歳を超えているし。

──「ブラッド・ステインド」「ウォー」などの歌詞は社会的な問題を取り上げていて、これは以前のヴェノムにはなかったことだと思うのですが。

トニー・ドーラン:確かになかったね。俺はずっとサタニズムに興味があって、ルシファーというのは光をもたらすものだと思っている。彼は堕天使で、そのミッションは人類に知恵を与え守ることだった。サタニズムをどのように見るかというのは、とても興味深いことだよ。人の中にも善と悪が同居している。だからサタニズムのそういう捉え方を、俺はヴェノムに持ちこんだんだ。ヴァージンを生贄にするなんていう内容の代わりにね。俺たち自身が神でありサタンたりえる。善も悪も俺たちの中に存在しているのさ。マンチェスターでは一人の男が爆弾で子供たちを吹っ飛ばそうと考えた。一方でホームレスが、被害にあった子供たちを必死に助けた。男の方は家族もいて仕事も金もあったのに、爆破事件を起こした。一方ホームレスは何も持っておらず、路上で生活していたけれど、爆弾で人を殺そうなんて考えもせず、逆に人々を助けた。このニュースを見て、もっと人間の内側というものに踏み込んだ内容の歌詞を書こうと思ったんだ。レミーはいつもこう言っていた。「俺は神もサタンも信じない。俺の行動は俺が責任をとる。俺が良いことをするのも悪いことをするのも、すべては俺の責任だ」ってね。俺たちはとてつもなく悪いこともできるし、逆にとても素晴らしいこともできる。俺は哲学者でも宣教師でもないけれど、俺たちが持っている性質について深く分析してみたかったんだ。

──「ブラックン・ロール」はとても楽しい内容ですね。

トニー・ドーラン:あれは俺たちが大好きなものへ敬意を表したのさ。ロックンロール、メタル、ロック。メタリカ、俺の大のお気に入りのモーターヘッド、AC/DC、ジミ・ヘンドリックスにエルヴィス。とにかく楽しい曲だよ。ブルースからロックンロールが生まれ、エルヴィスを経てずっとつながっているんだ。どんなに過激な音楽をやろうともね。レミーはいつでも「モーターヘッドはロックンロールをやっている」と言っていただろう?モーターヘッドがどんなに速く演奏しても、レミーはロックンロール・ガイだったのさ。俺たちも同じ。だから先人たちに敬意を表したんだよ。

──あなたの歌い方も、1980年代からずいぶん変わったように思います。30年経っているのだから当たり前なのかもしれませんが、意図的な歌唱法の変化というのはあったのでしょうか。

トニー・ドーラン:初期からヴェノムに加入するまで、それから2000年代とで、俺の歌い方は確かに変わってきていると思う。もちろん年をとって声が深くなったというのもある。煙草も吸いすぎているし。俺は常に広いレンジの声を出せるタイプではあったのだけど、俳優や声優の仕事をするようになって…。

──俳優や声優を?

トニー・ドーラン:そうだよ、今はやっていないけどね。映画やテレビにも出た。CMに声の出演をしたこともある。声を使う仕事を色々やったんだよ。友人に、俺はいつもただ歌っているだけなので、もっとストーリーを伝える努力をするべきだと言われたことがあるんだ。M-Pireを始めたころだから10数年前かな。それでM-Pireの最初のアルバムをやるときに、ストーリーを伝えるよう心掛けた。今回も「ダイン・フライシュ」や「アヴェ・サタナス」ではそのキャラクターになりきって歌ったよ。これも俳優をやっていた成果だと思う。それぞれの曲で違うキャラクターを演じたのさ。ずっと同じ調子で歌うのとは違って、とてもエキサイティングだったね。

──今回大合唱になりそうな曲が多く入っていますが、ライブではどの曲を披露する予定ですか?

トニー・ドーラン:マンタスは曲を書くときに、必ず観客のことを頭に置いているよ。観客が大合唱できるような、例えば「Countess Bathory」みたいな曲。ライブでは、できればアルバムの曲すべてを演奏したい。先日ダンジグとのツアーで「アヴェ・サタナス」を初お披露目したのだけど、早速大合唱になってね。ちょっと変な気分だった。「フォージド・イン・ヘル」が大合唱になるならわかるけど、まさかあの曲がね。次のツアーでは新曲を4~5曲は混ぜたい。どの曲をやるかは日によって変えるようにして。「メタル・ウィ・ブリード」は自分たちとメタル・ファンに捧げる曲だし、ぜひやりたい。大合唱になるだろうし。「ウォー」もやりたいな。俺はいつでもオーディエンスが曲の一部になるようなものをやりたいんだ。合唱したりスラム・ダンスやステージダイブをしたり、とにかくみんなが参加できるもの。自分たちを解放できるだろ。俺たちは日常生活ではいつも妥協を強いられる。でもショーでは思いっきり好きにやれる。とにかく大声で一緒に歌って欲しいね。

──次の質問は、もしお答えになりたくなければそれでも構いません。クロノスとの対立についてなのですが、彼はヴェノム Inc.に対して法的措置をとるのでは、という話もありましたよね。

トニー・ドーラン:最初に彼が問題にしたのはロゴなんだ。だけどロゴはクロノスの所有物じゃない。あれはアバドンがデザインしたものだから、所有者がいるとしたら彼さ。俺はクロノスに対しても敬意を表してきたつもりだし、そうすべきだと思っている。音楽というのはファンのものだし、ファンは言い争いなんて見たくないだろう。いずれにせよ法的観点からすると、俺たちがやっていることは何ひとつ問題がない。ライブで演奏している曲も、基本的にマンタスがほとんどひとりで書いたものばかりだしね。便宜上3人の名前がクレジットされているけれど。クロノスが新しい曲を書いて、新しいメンバーとプレイしている…それは素晴らしいことだよ。同時にファンはヴェノムの古い曲も聴きたがっている。だから俺たちは古い曲をプレイしている。そして今回俺たちもニュー・アルバムを作った。ファンの視点からすると、どちらかのバンドを選ばなくてはいけないなどということはないと思うんだ。もしSighが2つあって、1つは古い曲ばかり演奏して、もう1つは新しい曲を中心に演奏しているとしたら、それはSighのファンにとっては喜ばしいことだと思わないか?2倍楽しめるのだからね。こっちのバンドを聴くべきだ、なんて誰かが決めるべきじゃない。しかしクロノスはそれをやろうとしている。彼は「あのバンドはニセモノだ、こっちを聴け」なんてやっている。彼はファンを失うことを恐れているんだ。だけど彼がファンを失うなんていうことは、あるはずもない。彼はこれまでもクロノスであったし、今もクロノスで、これからも永久にクロノスだ。俺はクロノスになろうとしているわけではないし、なりたいと思ってもいない。俺は俺のやりたいことをやっているだけさ。クロノスがステージやインタビューで言っていること、マンタスやアバドンではなく彼がすべてを作ったとか、俺の時代が存在しなかったようにバイオを書き換えていることとか、すべてまったく不必要なことさ。彼は、自分の歴史上の位置づけについて心配する必要なんてないんだ。彼は間違いなく『Welcome to Hell』や『Black Metal』でベースを弾き、歌も歌った。ファンたちも、彼がやっていることをきちんと理解している。だけど法的に彼が独占的に所有しているものは何もないんだよ。とにかくクロノスか、俺たちか、なんて選ぶ必要はない。すべてはファンのためにあるわけだからね。クロノスもそう考えているだろうし、そう考えるべきだよ。金のためにやっているわけじゃない。ただ音楽をプレイしてファンたちに会い、楽しみたいだけさ。俺たちはやりたい曲を、聴きたいと思う人に自由に演奏するだけだよ。シンプルなことさ。こういう音が好きなんら楽しめばいい。アイスクリームが好きならば、バケツ一杯食べればいいのさ。気持ち悪くなるかもしれないけど、多ければ多い方がいい。もうたくさんだと思ったら、食べなければいい。だけど最初から少ししかなければ、永久に腹をすかせたままだ。マンタス、アバドン、クロノスの3人が話し合う可能性はとても低いだろう。マンタスは本当にウンザリしているようだし、アバドンに関しては、アバドンは重要な人物ではないと思わせようという工作をクロノスはしていた。マンタスとアバドンが作ったバンドに、クロノスはあとから参加したんだ。だから彼がすべてを所有しているなんて思うべきではない。だけど彼はクロノスであり、それは絶対に変わらないのだから、余計な心配をするべきじゃないんだよ。彼は俺のことも嫌いなようだけど、もし何か大切なものがあって、誰か別のやつがその大切なものをとって使っていたら、その事実が気に入らないということは理解できる。彼の一番の問題は、彼がヴェノムをやめてアメリカに行ったときに、ヴェノムは解散するに違いないと思っていたことだ。だけどそうはならなかった。バンドは存続した。それを俺のせいにしているのだろうけど、俺はヴェノムのある世界とヴェノムのない世界を選ばなくてはいけなかったら、当然ヴェノムのある世界を選ぶからね。

──では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

トニー・ドーラン:俺たちは世界中色々なところに行ったけれど、日本というのは文化的にも場所としても特別なところだ。日本みたいな国は、ほかにまったくない。たいてい似たような場所というのはあるものだけど、日本に関してはまったく見当たらない。人々は温かいし、文化も食べ物も、とにかく素晴らしい。日本に行くと、いつも温かく、親切で寛容で、敬意に満ちた反応が返ってくる。特に俺とマンタスは日本が大好きだよ。おそらくアバドンも、この間日本に行って以来、同じ気持ちだと思う。俺からだけでなく、マンタス、アバドン、それにクロノス、ジミー・Cやマイク・Hなど、ヴェノムに関わったすべての人間からありがとうと言いたい。どの時代、どのアルバムを問わず、サポートをしてくれた人々にお礼を言いたい。俺のAtomkraftのファンもいてくれるようだし、本当に感謝しているよ。『アヴェ』を気に入ってもらえたらうれしい。『アヴェ』というのは表敬のことで、これは君たちファンへのメッセージさ。君たちのためのアルバムだよ。またすぐ会えることを楽しみにしている。

取材・文:川嶋未来/SIGH
Photo by Stephanie Cabral

ヴェノム Inc.『アヴェ』
2017年8月11日 世界同時発売
【50セット通販限定CD+Tシャツ+直筆サイン入りカード】
【CD】¥2,500+税
※日本語解説書封入/日本盤のみ英語歌詞・対訳付き】
1.アヴェ・サタナス
2.フォージド・イン・ヘル
3.メタル・ウィ・ブリード
4.ダイン・フライシュ
5.ブラッド・ステインド
6.タイム・トゥ・ダイ
7.ジ・イーヴル・デッド
8.プリーチャー・マン
9.ウォー
10.アイ・ニール・トゥ・ノー・ゴッド
11.ブラックン・ロール

【メンバー】
マンタス(ギター)
ザ・デモリション・マン(ベース/ヴォーカル)
アバドン(ドラムス)

最終更新:8/9(水) 18:51
BARKS