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[記者手帳]サムスン電子イ・ジェヨン副会長の涙に説得力がない理由

8/9(水) 5:09配信

ハンギョレ新聞

「継承は考えていない…グループの意思決定権者ではない」と釈明 2014年、父親の臥病後、上場・合併など継承作業と矛盾 従来の「4人の首脳部会議・トップの役割遂行」の説明とも反し 「馬鹿を自任」のリーダーシップで 「温室育ちの草花」のイメージばかり強まる

 サムスン電子のイ・ジェヨン副会長は7日、サムスン賄賂事件の結審公判で最終陳述を通じて、私益のために大統領に要請したことはないとし、改めて悔しさを訴えた。イ副会長がチェ・スンシル氏などに対する賄賂供与の容疑を否定した核心の論拠は二つある。これまで経営承継を考えたことがなく、サムスンの最高意思決定権者ではなかったということだ。

 第一の論拠は、賄賂提供の見返りに経営承継の懸案であるサムスン物産と第一毛織の合併、新規循環出資の輪の解消などで支援を受けたという特検の主張に反論するためのものだ。サムスン側は「継承は特検が掲げた『架空の枠』に過ぎない」という極言まで吐いた。第二の論拠は、チョン・ユラ氏に対する乗馬支援はチェ・ジソン未来戦略室長(副会長)だけに報告されており、サムスン物産の合併もチェ副会長が自ら決定し、自分は知らなかったという主張につながる。

 経済界では、このような釈明に対して首をかしげる人がより多い。さらにはサムスン出身者ですらも刑事処罰を避けなければならない切迫した状況は理解するとしながらも、舌打ちする人が少なくない。なぜだろうか。

 イ副会長が継承を考えていなかったというのは、2014年5月、李健煕(イ・ゴンヒ)会長の突然の健康悪化以降、急速に進んだ一連の継承作業をすべて否定することだ。サムスンは2014年、イ副会長の株式持ち分が多いサムスンSDSと第一毛織の上場を相次いで成功させた。2015年にはサムスン物産と第一毛織の合併を強行した。市場とマスコミはいずれもイ副会長の継承作業本格化と口をそろえた。実際、イ副会長はグループの核心であるサムスン電子に対する支配力を強化し、継承作業に必要な莫大な資金を確保した。

 イ副会長がサムスンの最高意思決定権者ではないという主張は、事件前のサムスンの説明と正面から相反する。李健煕会長の健康悪化以降、マスコミの関心はイ副会長がいつ会長に昇進し、3世経営を公式化するかに集中した。これに対して未来戦略室の幹部役員は記者たちに「父親(李会長)がまだ生きているのに息子(イ副会長)が会長に昇進するのは道理に合わない。(イ副会長は)会長の肩書きをつけなかっただけで、業務遂行と権限行使には何の制約もない」とし、イ副会長が事実上サムスンのトップであることを明らかにした。

 イ副会長がグループの懸案について報告を受けず、チェ・ジソン副会長が代わりに決定したという主張に相反する証言も多い。キム・サンジョ公取委員長は裁判に証人として出席し、かつて経済改革連帯の所長時代に出会った未来戦略室チーム長から「イ・ジェヨン副会長、チェ・ジソン副会長、チャン・チュンギ社長、キム・ジョンジュン社長など4人がほぼ毎日会い、グループの懸案を議論した」という話を聞いたと明らかにしている。サムスンのある前職役員は「オーナーの財産と関連した事案を、専門経営者が独断で決定することは想像できない」とし、チェ副会長のサムスン物産合併決定の主張を鼻で笑った。4大グループの高位役員も「大統領に関連する事案は金額に関わらずトップへの直接報告事項」だとし、イ副会長が乗馬支援について報告を受けていないという主張を一蹴した。

 サムスン内外では、イ副会長の弁明がサムスンや自分に対して得より害になる方が大きくなり得ると懸念している。イ副会長はこれまで責任を負う地位を担わず「温室育ちの草花」というイメージがつきまとった。彼は今回の裁判で家臣たちに全ての責任を転嫁する姿を見せたことで、リーダーシップの限界を再び露呈させた。共に民主党のパク・ヨンソン議員は「イ・ジェヨン副会長が何も知らなかったというのは、自ら馬鹿だと言うこと」と皮肉った。

 韓国社会はサムスンが今回の事件に対して率直に過ちを認め、国民に謝罪した後、再発防止対策を含めた根本的な刷新に取り組むことを期待した。だが、イ副会長は悔しいという説得力のない主張ばかりを並べて期待を裏切った。イ副会長が最終陳述で流した涙を信じる国民は、果たしてどれだけいるだろうか。

クァク・ジョンス先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )