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彦根東4番岩本道徳、難病乗り越えサヨナラ打

8/9(水) 7:53配信

日刊スポーツ

<全国高校野球選手権:彦根東6-5波佐見>◇8日◇1回戦

 1日遅れで球児の夏が始まった。台風5号の影響で順延された第99回全国高校野球選手権が8日、甲子園で開幕した。彦根東(滋賀)は、難病「ギラン・バレー症候群」を乗り越えた4番岩本道徳内野手(3年)がサヨナラ打を放ち、6-5で波佐見(長崎)に逆転サヨナラ勝ちした。夏の開幕戦での逆転サヨナラは59年ぶり2度目の快挙となった。

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 難病を乗り越えた男に、勝利の女神がほほ笑んだ。彦根東が1点ビハインドで迎えた9回。5-5に追いつき、なおも2死一、二塁で、4番岩本に打席が回ってきた。甘く入った初球を見逃さず、打球は右前へ。劇的サヨナラにナインが歓喜の輪をつくった。「自分が主役になるって気持ちでした」。その中心に、岩本がいた。

 聖地に立つ感動を誰よりも感じている。昨春、体に力が入りづらくなった。過呼吸の症状が出たことも。病院の診断は手足のまひを伴う難病「ギラン・バレー症候群」。幸い軽度だったが、約1カ月、自宅療養を強いられた。55キロだった握力は一時期、20キロほどに。「握手の仕方が分からへん」と、もらすほどだった。

 「野球が出来なくても、マネジャーでもいいから携わりたい」。苦境に立たされても情熱は変わらなかった。マネジャーの手伝いから始め、昨年6月半ばから練習に参加できるようになった。「主力で出たい気持ちがあった」と冬場の厳しい強化練習も乗り越えた。そんな男が、勝負どころでひるむはずもない。この日、前打席まで4打数無安打だったが、サヨナラ機でも「同点だったので、凡退しても次の回があると思って、思い切って振れた」と弱気はなかった。

 春夏通じて初勝利を、59年ぶりとなる開幕戦での逆転サヨナラでものにした。村中隆之監督(49)も「サヨナラ勝ちなんて信じられない。しっかりつないで自分たちのやることをやりきった結果」と声を震わせた。

 県内屈指の進学校らしく、岩本は卒業後の進路について「高校の先生になって野球部の監督になりたい」と、広島大の教育学部を目指す。宿舎にiPad(アイパッド)を持ち込み、塾の通信授業を受けている。99回目の夏。努力を欠かさない男の一打で劇的に幕を開けた。【磯綾乃】

 ◆ギラン・バレー症候群 末梢(まっしょう)神経のうち、手足を動かす運動神経におこる病気。国の難病に指定されている。J2名古屋のFW佐藤寿人もこの病気から復活した。

 ▼開幕戦は彦根東が逆転サヨナラ勝ち。夏の甲子園の開幕戦サヨナラは04年天理4-3青森山田以来8度目。逆転サヨナラは58年鳥取西2-1新潟商以来、59年ぶり2度目。鳥取西は8回まで1安打だったが、9回裏に4安打を集中して逆転した。

 今大会の公立校は滝川西、高岡商、坂井、彦根東、三本松、鳴門渦潮、東筑、波佐見の8校だけ。公立10校未満は1920年(参加15校中8校)以来97年ぶりで、全出場校数に占める割合では史上最少だ。公立受難の年に公立校同士が白熱の好ゲーム。過去には94年佐賀商6-2浜松工、07年佐賀北2-0福井商と開幕戦公立対決を制した学校が優勝した吉兆データもあるだけに、彦根東も旋風なるか。【織田健途】

最終更新:8/9(水) 8:25
日刊スポーツ

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