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自分の価値を取引する「VALU」の存在価値は?

8/10(木) 7:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 「VALU(バリュー)」は2017年5月にサービスを開始したばかりで、その運営会社のVALUにはホリエモンこと堀江貴文氏も出資している。同社のサービスを簡潔に説明すると、個人が擬似的な株式を売り出して資金調達を行ったり、投資家が疑似株式を売買できるネット上の取引所だと言える。

【投資家は何を目的に「VALU」を通じてお金を出すのか】

 ここでは「株式」と表現しているが、当然のことながら個人が株式を発行することはできない。VALUで発行されるのは、厳密には株式ではないが取りあえず、株式、あるいは疑似株式としてVALUの説明を進めていく。

 株式の売り出しは意外と簡単だ。売り出しを希望する人は、サイトに登録してFacebookやTwitter、Instagramなどと連携させる。すると、フォロワー数などから自動的にその人の時価総額が算定されるので、その価値に応じた模擬株式を売り出すことができる。

 フォロワー数などが少ないと価値が算定できず、売り出しができない状態となる。後ほど、詳しく説明するが、VALUはネット上での個人の人気度を金銭化するサービスともいえるので、フォロワー数といった指標が決定的な意味を持ってくる。

 株式の売買はビットコイン(BTC)で行われる。自身の価値が0.1BTCと算定された人が10株を発行すると、1株の値段は0.01BTCになる。このうち1株を売り出して、それが当初価格の2倍である0.02BTCで売れた場合には、本人には0.02BTCが入ってくる。残り9株は保有したままだが、株価は0.01BTCから0.02BTCに値上がりしているので、9株×0.02BTCとなり、潜在的な資産は0.18BTCに上昇したことになる。

 この仕組みは、自身が創業した会社を株式市場に上場し、その株価が上昇すると創業者の資産も増大する話とまったく同じである。企業の株式の代わりに、個人の疑似株式が売買されているだけである。

●会社の上場と異なる点

 だが同じ株式の発行や、上場といっても、会社の上場とVALUによる個人の上場には大きな違いがある。会社の株式は会社の所有権や経営権(株主総会での議決権)と引き替えに発行されるものなので、株式を所有している人は、部分的とはいえ会社の支配権を持っている。

 また一般的に企業は、配当など株主に対して利益を還元しており、株式は収益を生み出す金融商品として流通している。株価も、最終的にはその企業が将来、どれだけの利益(もしくはキャッシュフロー)を生み出せるのかという部分で決まってくる。

 ところがVALUの疑似株式はこのどれにも当てはまらない。個人が発行した株式を所有していても、その個人を支配できるわけではなく、配当などが確約されているわけでもない。VALUでは株式を発行した人が、買ってくれた人に対して何らかのお礼をする仕組みは用意しているが、ここで配当などを確約してしまうと出資法など既存の法律に抵触する可能性がある。

 個人を資金的に援助する仕組みとしては既に、ネット上でプロジェクトの資金調達を行うクラウドファンディングがある。だがクラウドファンディングは個人が行う特定のプロジェクトを支援するというニュアンスが強い。VALUの場合には、特定のプロジェクトが明示されているわけではなく、単純に個人そのものに値段が付く。この点が大きく異なっている。

 そうなってくると、VALUの疑似株式を購入する人は、何を目的にお金を出すのだろうか。基本的には疑似株式を発行する人を応援したいからお金を出す、あるいは、その人の人気が今後上昇し、株価が上がって利益が出ることを期待して買うということになる。

●最終的には市場が判断する

 前述したように、「人気投票」の結果が金銭価値として換算されるのがVALUの特徴だ。実際、VALUには、ホリエモンなどの著名人が株式を上場している。ホリエモンはリアルな世界でも圧倒的な知名度を持つ人物だが、彼を除くと、いわゆるネット上の有名人が自身の株式を上場させていると見てよい。

 ちなみに、ホリエモンには約31億円、ブロガーのイケダハヤト氏には約44億円の時価総額が付いている。イケダ氏は自身の持ち株を少しだけ売却し、わずか3日間で1000万円を手に入れたとブログで明かしている。

 確かにVALUでは利益還元が約束されているわけではないが、お金に対する人の価値観はさまざまである。個人を応援したいという理由だけで株価が維持される世界があってもよいだろう。ただ、こうした市場には、モラルに欠ける利用者が出てきやすいのも事実である。

 著名人が自身の知名度を利用して株式を売り出し、自身の株価をつり上げるため、相場操縦のようなことをする人も出てくるかもしれない。

 もし、このサービスに存在価値があるなら、紆余曲折を経たとしても、不正利用は淘汰(とうた)され、最終的には健全な形で生き残るはずだ。逆に、サービスに本質的な価値がなければ、いずれ利用者は離れていくだろう。

 こうした新しいサービスが出てきた時には、慎重に対処しつつも、決して否定せず、一方で過度な期待は抱かないのが正しい作法である。VALUの存在価値はこれから市場が明らかしていく。



(加谷珪一)