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KDDIがソラコムを求め、ソラコムもKDDIを求めた

8/10(木) 12:10配信

MONOist

 KDDIとIoT(モノのインターネット)向け通信プラットフォーム「SORACOM」を展開するソラコムは2017年8月9日、東京都内で記者会見を開き、同年8月2日に発表したKDDIによるソラコムの連結子会社化の目的や、今後のIoT関連事業の方向性について説明した。

【KDDIとソラコムの生み出す4つのシナジーなどその他の画像】

 既報の通り(関連記事:ソラコムはKDDI傘下でも起業家精神失わず、日本発のIoTプラットフォーム構築へ)、両社はKDDIがソラコムの発行済株式を取得する株式譲渡契約を締結した。2017年8月下旬をめどにKDDIがソラコムの株式を取得し、連結子会社とする予定。出資額、出資比率などは非公開となっている。

 会見には、KDDIからバリュー事業本部 バリュー事業企画本部長の新居眞吾氏とソリューション事業本部 ソリューション事業企画部本部 副本部長の藤井彰人氏、ソラコムから社長の玉川憲氏が出席。新居氏は「ソラコムと新しいことをいろいろとやって行けるのがうれしい」、藤井氏は「前職のグーグル在籍時代にいろいろと連携した玉川氏とまた一緒に仕事ができることがうれしい」、玉川氏は「ソラコム単独ではできないことをやっていく上で、KDDIがベストパートナーだと判断した」と語るなど、相思相愛での買収だったことを訴えた。

●「ベンチャーとともに歩んできたKDDIはソラコムとともに成長できる」

 KDDIとソラコムの接点は、2016年10月に発表したIoT向け回線サービス「KDDI IoTコネクト Air」の共同開発から始まっている。「一緒にやる中で、ソラコムの力、可能性を感じた」(新居氏)KDDIだが、そこから1年も満たないうちにソラコムの買収という大きな一歩を踏み出すことになった。

 新居氏は両社の生み出すシナジーとして「新たなIoTビジネスの創出」「グローバル展開」「IoTプラットフォーム」「次世代ネットワーク開発検討」を挙げた。そして、IoT領域のさまざまな企業ニーズに対して、スモールスタートや立ち上げのスピード感を特徴とするソラコムと、1社ごとのアカウント営業体制で大口顧客へのサポート体制に強みを持つKDDIで、両社の強みを生かしたハイブリッドな事業展開が可能になるとした。

 ただし今回の買収に際しては、サービス開始から2年弱で7000以上もの顧客を獲得したソラコムの優れた技術やビジネスモデル、ベンチャー企業らしいスピード感が、KDDIによって毀損(きそん)されるのではないかという意見も多くあった。会見では、その疑念を拭い去るべく「KDDIはオープンイノベーションファンドをいち早く立ち上げるなど、ベンチャーとともに歩んできた企業だ。ソラコムとともに成長できる」(新居氏)と主張した。

 藤井氏は、国内IoTの導入率や意識レベルが北米とはじめ海外と比べて低いことを指摘した上で「通信キャリアの果たす役割は大きい」と述べる。そして、国内企業を支えるKDDIのIoTビジネス基盤がソラコムの技術によってさらに強化され、グローバル展開でも相乗効果が得られることを訴えた。

●急成長のソラコム、セルラーLPWAと5Gが課題だった

 玉川氏は、KDDIグループへの参画を決めた理由を説明した。先述した通り、2年弱で7000以上の顧客を持つようになったソラコムだが、今後の課題として捉えていたのが「セルラーLPWAと5Gを用いたサービスをどれだけ早いタイミングで開始できるか」(玉川氏)だった。

 ソラコムは、国内向け海外向けともにMVNO(仮想移動体通信事業者)として回線サービスを提供している。しかしセルラーLPWAや5Gといった、新しい通信技術については、その導入を自ら進める通信キャリアでなければ早期に利用することはできない。例えばKDDIは、2017年度内にセルラーLPWAを商用化する予定だが、これをMVNOに開放するタイミングがいつになるかは独立企業のソラコムには分からない。

 しかし、ソラコムがKDDIグループに入れば、セルラーLPWAをより早期に利用できるようになる。2020年ごろの商用化が見込まれている5Gについても同様だ。玉川氏は「今までのやり方とは違う次元に入ったからこそ、KDDIグループに参画することにした」と語る。

 なお、ソラコムは、KDDIによる連結子会社化の後も、会社組織や経営陣、ブランド、企業ビジョン、オフィスなどはそのままに、従来通りに事業を展開する。KDDIは、ソラコムの強みを最大限に引き出すべく、一定の独立性を維持していく方針のようだ。

●ソラコムのレポートラインはKDDIの経営戦略本部へ

 今回のソラコムの買収をKDDI側で主導したのはバリュー事業本部だ。バリュー事業本部は通信以外の領域を担っており、主にサービスやアプリケーションの企画や開発を行っている。つまり、IoTを活用した新たなサービスを創出する上で、ソラコムとより緊密に連携していく必要があると判断したことになる。

 実際には、バリュー事業本部だけでなく、法人向けビジネスを統括するソリューション事業本部を含めて、KDDI全社としてソラコムの買収にコミットすることとなったようだ。このためソラコムのトップである玉川氏のレポートラインは、全社の事業戦略を横串にして統括する経営戦略本部となっている。

 両社が求めた今回の買収だが、果たしてKDDI、ソラコムともに成長することができるのか。今後の具体的な事業展開に注目したい。

最終更新:8/10(木) 12:10
MONOist