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【F1:ハロにまつわる疑問1】コックピット保護デバイス”ハロ”は本当に安全性向上に貢献するのか?

8/10(木) 7:28配信

motorsport.com 日本版

 来季からF1に投入されることが決まったハロ。それにまつわる6つの疑問を、順番に検証していく。その1回目は「安全性向上への貢献度」だ。

【写真】テストはされたものの、衝突試験をクリアできていない”シールド”

 FIAは、2018年からF1マシンにハロの搭載を義務付けることを発表した。これについて多くのファンが反対の意見を発し、現役ドライバーおよびすでに引退したドライバーたちからも、疑念の声が上がっている。

 反対理由の多くは、ハロのようなデバイスをマシンに装着することにより、オープンホイール・レーシングカーの原則に反するのではないかというものだ。そもそもオープンホイール・マシンのDNAには、常にリスクと隣り合わせであるという点が含まれる。そしてハロを取り付けることによって、マシンの外観を損ねるという意見もある。

 またその他の人々は、ハロの有効性に疑問を持っており、それを取り付けることで新たな問題が発生することを危惧している。

 ハロの導入が目指された最大の要因。それは、飛散したホイールから、ドライバーの頭部を守るということにある。これについてはハロもそれ以外のソリューションも、テストが実施されてきた。

「我々はコクピットがホイールの衝突によって受ける衝撃から、少なくともドライバーの頭部だけは守ろうとした」

 FIAのセーフティ・ディレクターであるローレン・メキーズはそう語った。

「我々は、最も大きな可能性のある速度を選んだ。それは、225km/hだ。そのため、すべてのデバイスでクリアさせようとしているのは、225km/hの衝撃からドライバーを保護することができるかどうかだ」

 しかし、そのメリットははるかに広範囲に及ぶ可能性がある。FIAは、マシン同士の接触、マシンと周辺環境との接触、ホイールやデブリといったその他の外的要因という3つの異なるシナリオを分析した。

 ハロがどのような働きをするのかを検証するために、主にF1ではあるものの、他のカテゴリーで起きた事故も含め、いくつかの例が検証されたという。

 マシン同士の接触については、1台のマシンが他のマシンのコクピットに乗り上げてしまうような事例が検証された。その中には、2012年のベルギーGPスタート直後に起きた、ロマン・グロージャンとフェルナンド・アロンソの事故も含まれている。

 マシンと周辺環境の接触については、タイヤバリヤの下にマシンが潜り込んでしまった事例が含まれる。これは、2001年スパでのルチアーノ・ブルティ、2008年バルセロナでのヘイキ・コバライネンなどだ。また、2007年にマニ・クールで行われたGP2で起きたE.J.ビソのような、マシンが舞い上がり、上下逆さまになって落下するような事故も、このケースに含まれる。

 今年のモナコでの、パスカル・ウェーレインの事故も検証された。コクピットカメラによって撮影された映像によれば、ウェーレインのヘルメットが、ウォールにどれだけ近かったかが分かる。

「我々は”もしハロがあったなら?”というシナリオで検証した」

 そうメキーズは言う。

「我々はハロをマシンに取り付けた。そして、これらの事故をシミュレートしたのだ。ただ事故のシミュレートをするだけではなく、その周囲も検証した。5cm上、10cm上、そして5cm右、10cm右……などを検証しようとしたんだ」

「それぞれの検証の最後に、ハロがあることがポジティブなのか、中立的なのか、それともネガティブなのかを調べた。ハロがあったことで助かるケースの数は、中立的もしくはネガティブな数に比べて、圧倒的だった」

 FIAがドライバーやメディアに対して示した事例は、ポジティブなモノか中立的なモノだった。鈴鹿でのジュール・ビアンキの事故は、中立的なモノという評価だった。メキーズ曰く、このようなことは排除できないと認めているものの、それ以上にネガティブな要素は、今のところ発表されていない。

 前述のように、ハロの主な目的は、飛散する”物体”に対処することにある。その意味では、2009年のF2でのヘンリー・サーティースの事故や、インディカーで2015年に起きたジャスティン・ウィルソンの事故は、ハロを使うことによって避けることができたと判断している。

 一方で、2009年のハンガリーGPで、フェリペ・マッサを襲ったような事故については、完全な保護を提供することはできないと認める。ハロでは、マッサに当たったような小さなパーツを完全に阻止することはできないのだ。ただ、ハロが存在することによって、デブリがヘルメットに当たる確率は大幅に下がるという。

「我々は数学的な視点に基づいて、様々な角度から、数百万にも及ぶ小さな物体を浴びせた」

「ドライバーの前に構造物を置くと、統計的にはドライバーを襲う小さな破片に対する保護が強化される。ハロが無い場合と比較すれば、それは明らかだ」

Adam Cooper