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パラリンピアンへの「力み」を無くしたい。為末大・スペシャルインタビュー後編

8/10(木) 7:50配信

VICTORY

一緒に練習をして、肌でわかり合えるように

――パラリンピックのスポーツに注力され、このランニングスタジアムも障害者と一緒に使えるということを意識されていると思いますが、そう思うきっかけは何だったのでしょうか?

為末 パラリンピック競技を応援しようと思ったのは、アメリカでパラリンピックの選手を見たことが大きかったからです。彼らは、オリンピック選手が使う施設で普通に練習していたんですよね。でも、やっていくうちに「それは当たり前だよね」って思うようになりました。
 
日本に戻ってきて思ったのは、パラリンピックの選手を応援しようってなった瞬間に「力む」ことですね。「パラリンピックの選手は素晴らしい」ってみんな言いますけど、全然練習していないような選手に対してもメディアが賞賛することもあったり。オリンピック選手の10分の1の練習量でメダルを取って、それで素晴らしいっていうのは変だよねと思います。もっとも、すごい選手はいますし、今まで賞賛されなさすぎていた感は有りますけど。

そういう「力み」が気になっていました。じゃあ何が一番いいだろうと思ったら、一緒に練習をしてお互いに肌でわかり合うことじゃないかと。そうすれば、(力まずに)応援したくなる選手も出てくるのでは。パラリンピックの選手もオリンピックの選手を応援したり、子どもたちを応援したり、そういうことなんじゃないかと。

――一緒にやっていると、競技者としてのすごさにフィーチャーできますよね。

為末 そうですね。現状、予算はパラリンピックとオリンピックで分かれています。分けないと、オリンピックのほうに多く分配されるかもしれないということで。でも、分けた結果その予算はパラリンピアンだけしか使えない、パラリンピアンだけの集団ができてしまうんです。

お金が落ちるほど、オリンピアンとパラリンピアンが分かれてしまう。この現状はいびつだなと思っていたので、皆が混ざれる場所を意識しました。競技レベルでいうと、今の段階だとオリンピアンのほうがレベルが高いので、パラリンピアンに伝わるノウハウのほうが大きいと思います。でも、ゆくゆくはパラリンピアンの研究でわかったことがオリンピアンに還元されることもあるはずです。

――パラリンピックスポーツも、産業として利益を上げる人が出てくることが考えられますね?

為末 そうなるといいですけどね。やっぱり、パラリンピック競技は普通にやるにはちょっと難しいので、よっぽどの世界的なスターになって、肖像を売るみたいなことですかね。

あと、ひとつ相性がいいなと思うのは、高齢化社会における実証実験の領域です。オリンピアンが不便と思わないものを、世間一般の人は不便と思うこともあります。そういう領域で、オリンピアンは全然役に立たないと思うんです。でも、パラリンピックの選手が駅からここに来るまでに問題と挙げたところを直していくことで、バリアフリーにつながることはあり得ます。
 
パラリンピック選手の場合はちょっと文脈を変えて、高齢化を迎える産業の中で、何らかのバリューを出していくということは起こり得るんじゃないかと。各社に1人ずつパラリンピックの選手が入るとか、そういう視点からのアドバイスができるというのはいいですよね。

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最終更新:8/10(木) 10:43
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