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自分の心のあり方が言葉をもやさしく、美しく磨いていく

8/10(木) 11:04配信

朝日新聞デジタル

連載【銀座・由美ママ 男の粋は心意気】

 「言葉は心の鏡」という言葉があります。「言葉遣いにはその人の心や人柄が自然と表れる」ということですね。日々の会話の何げない話し方で、その人の印象が大きく変わります。日頃から身勝手な言葉を口にしていれば「あの人は他人の気持ちを思いやることができない人」という印象を持たれます。また、人を軽視するような言葉を使っていると「人を傷つけても平気な人」「プライドが高くて傲慢(ごうまん)な人」という印象を与えます。たとえ本人にそのようなつもりはなくても、そう受け取られてしまうのですね。

【写真】銀座「クラブ由美」オーナーママ・伊藤由美

 お店の常連のお客さまから「僕は人とお付き合いをするとき、どんなにくだけたカジュアルな場でも、使わないように気をつけている言葉が三つある」というお話をお聞きしたことがあります。その三つとは「女性のことを『オンナ』と呼ばない」、「お金のことを『カネ』と言わない」、「相手のことを『オマエ』と呼ばない」でした。

 オンナという呼び方は、女性を下に見ているイメージがあり、配慮に欠ける。カネという言い方は、お金を軽んじているイメージがあり、不誠実で信用のない印象を与えてしまう。オマエという呼び方は、乱暴で高圧的なイメージがあり、自分勝手で横柄という印象を与えてしまう。相手を傷つけ、誤解を与えかねない言葉なので、使わないように心掛けているとのことです。

 言葉は最もベーシックなコミュニケーション・ツールであり、言葉遣いはそれを使うためのスキルですよね。私のような接客の仕事も、会話を通じたお客さまとのコミュニケーションが何より重要であることは言うまでもありません。

 ですから言葉遣いひとつが、その人の印象や人間関係、そして人生をいかようにも左右する。大げさではなくまさにそうだと、私は考えています。先ほどのお客さまのお話は「気持ちのよい会話、感じのよいコミュニケーションをするには、相手の気持ちを慮(おもんぱか)って言葉を選ぶことが大切」という教えなのだと思います。

 言葉が心の鏡ならば、言葉を美しくするために、まず心のありようが大切になってくるのは道理ですよね。相手を下に見ない。愚弄(ぐろう)しない。偏見を持たない。相手の気持ちを考え、お互いが気持ちよくやり取りできるように心を砕く。こうした自分の心のあり方が、言葉をもやさしく、美しく磨いていくのではないでしょうか。

 言葉遣いは、相手への心配りです。「あの人ともっと話をしたい」。そう思ってもらえるような“言葉の粋人”になりたいものですね。

朝日新聞社