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【尊厳ある介護(3)】 過去に苦悩する認知症の人

8/10(木) 12:03配信

ニュースソクラ

人生の未解決問題が噴き出す

 認知症は、その原因によってさまざまな種類に分かれます。代表的な認知症は、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症で4大認知症と呼ばれています。

 佐藤友子(85)さんは、レビー小体型認知症です。レビー小体型認知症の特徴は、初期の段階で、物忘れや幻視が見られること。パーキンソン病のような症状がでること。また、寝ているときに大声を出したり、歩きまわったりするレム睡眠行動障害がでます。

 佐藤さんに関わって半年たった頃、佐藤さんが事務所に来られ、申し訳なさそうに「実は、私には子供がいて、一緒に住んでいるの。今まで隠していてごめんなさい」と言って、バスタオルにくるんだ人形を見せてくれました。

 「名前は、はるちゃん」と愛おしそうに言われる佐藤さん。食事をさせているせいか口元が汚れています。何と答えていいのか言葉がみつかりませんでした。佐藤さんは、仲良くなって信頼した相手には、はるちゃんを紹介することを知ったのは随分時間がたってからです。

 それから数か月後、夕方に自宅を訪問した時、台所の方から叫び声が聞こえてきます。急いで行ってみると、佐藤さんが、壁などにぶつかりながら走りまわっているのでした。驚いて、「どうしたのですか。」と尋ねると、「男が刃物を持って襲って来た」と言われるのです。その日は、一緒にいて安心されたのを確認して帰ることになりました。

 ある日は、「天井に虫がわいているので、取ってほしい」と訴えられます。何度も天井を見上げて調べるのですが、虫は見当たりません。「ごめんなさい。私には、虫を取ることができません。虫がいると不安ですか」と、聞くと悲しそうな顔をされます。

 そして、自分の過去について話されました。1回目の結婚は、女の子2人を授かったこと。強盗に入られて家を焼かれ、自分1人が生き残ったこと。生活のため再婚をしたが、相手には連れ子がいて、その子供が自分になついてくれず、辛かったことなどをたんたんと語ってくれたのです。私は、あの人形に秘めた佐藤さんの思いの一端が分かったような気がしました。

 佐藤さんは、不眠と幻視のため受診され、睡眠薬と抗精神病薬が処方されるようになりました。レビー小体型認知症は、服薬の調整が難しく症状が悪化する場合があります。

 佐藤さんは、もともと小刻み歩行だったこともあり、ますます歩行状態が不安定になり、何度も転倒を繰り返すようになりました。幻視も増えました。ついに転倒による入院がきっかけで、特別養護老人ホームに入所されることとなりました。

 多くの認知症の人と関わって考えることがあります。認知症になって知的能力が低下すると、今まで抑えていた自分の人生で未解決の課題が認知症の周辺症状(不安、焦燥、妄想、抑うつ状態、徘徊、暴言、暴力、不潔行為など)の中に表れる場合があるのではないかと。そうだとすれば、そのことを少しでも分かち合うことが介護する者にとってとても大切なことだと思うのです。

■里村 佳子( 社会福祉法人呉ハレルヤ会呉ベタニアホーム統括施設長 )
法政大学大学院イノベーションマネジメント(MBA)卒業、広島国際大学臨床教授、前法政大学大学院客員教授、広島県認知症介護指導者、広島県精神医療審査会委員、呉市介護認定審査会委員。ケアハウス、デイサービス、サービス付高齢者住宅、小規模多機能ホーム、グループホーム、居宅介護事業所などの複数施設の担当理事。今年10月に東京都杉並区の荻窪で訪問看護ステーション「ユアネーム」を開設予定。

最終更新:8/10(木) 12:03
ニュースソクラ