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日本は、いつまで“メッシの卵”を見落とし続けるのか? 小俣よしのぶ(前編)

8/10(木) 11:40配信

VICTORY

今、日本は空前の“タレント発掘ブーム“だ。芸能タレントではない。スポーツのタレント(才能)のことだ。2020東京オリンピック・パラリンピックなどの国際競技大会でメダルを獲れる選手の育成を目指し、才能ある成長期の選手を発掘・育成する事業が、国家予算で行われている。タレント発掘が活発になるほど、日本のスポーツが強くなる。そのような社会の風潮に異を唱えるのが、選抜育成システム研究家の小俣よしのぶ氏だ。その根拠を語ってもらった。(取材・文:出川啓太)

日本では3月生まれの子供は不利

――小俣さんは「各自治体が行なうタレント発掘・育成事業が、日本のスポーツ強化に直結するとは限らない」と仰っています。その根拠を教えてもらえますか?

小俣 一番大きな問題は、ある特定の特徴を持った子供たちだけが拾い上げられていることです。選抜時点で、成長が進行していたり,特定の誕生月の子や、身体の大きい,体力の高い子が選ばれる。ほとんどの競技における選抜がそうです。

成人してしまえば、歳が違えど身体の大きさや体力,身体能力の差はほとんどなくなります。しかし、小学生ぐらいまでは、歳の差は大きなハンデとなります。小学校中学年生が高学年生の大会に出て勝つことが難しいことは明白。身体の大きさがスポーツのパフォーマンス(結果)に直結しがちな時期に、一つ年上の子供たちと同じ土俵でプレーすることは簡単なことではありません。また細かく見れば、学年は同じでも4月生まれの子と3月生まれの子にも11カ月の成長のハンデは存在します。これが生まれ月の格差で“相対年齢効果”とも呼ばれています。

――そう考えると、早生まれは不利ですね。

小俣 4月生まれの子と3月生まれの子を、「同じ学年だから」同じ物差しで測るのが日本の教育や競技スポーツシステムです。同学年の3月生まれと4月生まれが徒競走をすれば、成長が進行している4月生まれの子が勝つ可能性が高くなります。また、成長速度にも個体差があります。各自治体が行なうタレント発掘事業のテストは、50メートル走やメディスンボールを遠くに投げるような力の強さを測る種目がほとんど。4月生まれや早熟傾向,身体が大きかったり体力のある子どもが選抜されやすい選抜方式といってもよいでしょう。

――身体を動かす能力に優れているけど、現時点で身体が小さくて体力が低い子はテストに落ちてしまうわけですね。

小俣 そうです。そこで選抜された身体が大きくて体力の高い子の多くは早熟傾向ですから、伸びしろは小さいでしょう。将来的に伸びしろが小さい選手を選抜して強化し、伸びしろが大きく可能性ある子が足切りされてしまう。それが、今のタレント発掘ブームで起こっている実態と言えるでしょう。

サッカーで例えるなら、たとえばメッシのようなスーパースターになれる才能がいたとしても、日本のタレント発掘事業では省かれてしまう可能性があると言えるのではないでしょうか。メッシが10歳のころに成長ホルモンの分泌障害、いわゆる低身長病を抱えていたことは、多くのサッカーファンが周知のことですよね。10年後にすごい選手になっているかもしれない子たちが、その時点での成長度合いだけで測られて落とされてしまうのです。

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最終更新:8/10(木) 11:40
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